七月一日、二日、と雄国沼の取材に出かけた。雄国沼は裏磐梯にある。当初は猫魔岳に登ってから雄国沼に向かう計画だったのだが、天気と先方の都合が悪かった。なにせ、天気が悪いと写真にならない。「花の達人と行く山」という計画なのだから、ひとりではどうにもならず、それでも花の写真だけは押さえておこうと、一日は単独で雄国沼へ。

 雄子沢の駐車場で仮眠。といっても酒を呑んで寝るだけなのだが・・・。行く前の心配は、誰も登山者がいないのでは、背景にもつかえないよなあ・・・・という不安。ところがとんでもないことに、次から次へと車がやってきて、やがて駐車場は満杯になった。あとで知ったことだが、この時期はニッコウキスゲの最盛期で、登山者が殺到するのだとか。そんなことも知らずに取材に行くのだから、おめでたいにもほどがある。

 せせらぎの小道、だったか、ブナの森に囲まれたステキな登山道だった。歩いて1時間足らずの道だから、果たしてこれを登山と呼んでいいものやら、悪いものやら。それでも雄国沼の向こうの金沢峠までは、もっと近いシャトルバスが通っている。バスを降りて10分で雄国沼に着けるのだから、いささか考えてしまう。

 雄国沼をめぐって休憩所にもどり、さらに雄国山に登った。郭公やホトトギスが鳴き、山の雰囲気が味わえた。遠くには飯豊連峰や磐梯山の雄姿がある。このまま北方の下山路に向かおうかとも思ったが、雄国沼から猫魔岳への道を歩いてみたい誘惑を抑えきれず、ふたたび休憩所へ。雄国沼の東に沿う山道をたどり、ひと気のない湖岸で弁当を使う。

 下山してビジターセンターに立ち寄って話を聞く。説明をしてくれた新井さんの奥さんの実家が、私の秋田の実家のすぐ近くだという話になり、互いにびっくり。

 そこからペンション「とも」まで、道に迷いながらもたどり着く。オーナーの友坂さんは花の達人で、写真家でもある。かなり硬派で、反体制派という印象の御仁。いっぺんで気に入り、あーだこうだと夜遅くまで話が弾んだ。

 翌朝、彼の案内でふたたび雄国沼へ。前日に負けないほどの人混みだった。これではさすがにオーバーユースを心配するが、この十日間を除けば、信じられないほどの静寂が訪れるという。なんとも理不尽で不可解な心境になった。

 花のガイドもしている友坂さん。この日はお客さんもおらず、ならばと勝手に通りすがりの登山者をモデルにお願いして撮影を切り抜ける。それでも、一方通行の木道では立ち止まることさえゆるされない。

 そこで放った友坂さんの名言。「なに、なんと゛もまわればいいんですよ」の言葉に、目からウロコが落ちた。

 ニッコウキスゲのような大花よりも、小さな花が好きだという友坂さん。望遠と広角のレンズを駆使して対象に迫る撮影態度に刺激を受けた一日だった。ああ、せっかく三脚を背負っているのだから、俺ももっと貪欲にならなくちやあ。