初めてのお客さんとのガイド山行は、仙台市近郊の大行沢(おおなめさわ)だった。たったひとりのプライベートガイドだが、お客さまはかなりのビップ。でも、お客さまが誰であろうと、もちろん気は抜けないのである。

 二口渓谷の駐車場に着いたときはすでに雨。翌朝、彼が到着したときにはますます強く雨が降るあいにくの天気。そうそう、日程は5月31日と6月1日。お互いに自分は晴れ男だと主張するのには笑ってしまったが、さりとて初めてのガイド山行を秋保温泉で沈没してしまうわけにもいかなかった。

 とりあえず樋の沢の避難小屋まで進み、様子をみることにする。もちろん、登山道からである。なんどか通っていたから、知った道のつもりだったが、かなりの時間を要したのには驚いた。

 午後の早い時間に小屋に着く。日帰りの釣りはしていたが、泊まっての釣りがしたいためのガイド釣行を希望したのだから、こちらとしては、なんとしても沢でのタープ泊、焚き火付き、という歓迎をしてあげたかったのだが、あまりの吹き降りと寒さのために、あえなく避難小屋で沈没。そそくさと身支度を整えて渓にはいる。なれど、こう寒くてはイワナの活性も鈍いのか、まったくあたりもなく釣れず。ものの30分もサオをだしていただろうか。寒さで手が震えるのでそろそろ戻りましょうか、という彼の声にほっとして、以後は小屋で宴会モード。

 翌日は念願の晴れ。あわよくば大行沢から南面白山周遊を目論んだのだが、釣りに時間を取られて思うように進めず、標高900メートルを最後にサオを畳んだ。それでも渓には春の日が降り、とても綺麗で楽しめた。途中で昼飯を作り、焚き火を囲んで刺身などを食べる。私はサオを出さなかったが、彼のサオ先でかなりのイワナが舞った。どうやら満足してもらえたらしい。

 小屋を昼に出て、近くで懸垂下降の練習などをし、午後四時近く駐車場に帰着。風呂にも入らず埼玉まで飛ばすが、途中で事故渋滞に巻き込まれ、襲い帰宅になってしまった。