刑務所に行きたい人間は世の中に一定数存在する。

衣食住が供給され、警察によって安全が確保された空間だ。明日をも知れぬ立場で苦しんでいる人間からすればもしかしたら非常に理想的な空間と言える。


しかし普通の人間は自分の未来を危惧して踏み出すことの無い一歩だ。

前科が付けば社会的に不利になる。刑務所に入りたくなくて逃亡する人間もいる。出所後も人生は続く。

基本的に何一つプラスにはならないのだ。




警視庁へ268回のいたずら電話を繰り返し偽計業務妨害の疑いで板橋区アルバイター坂屋哲伸容疑者(47)。

47歳でアルバイトしかできていない自分に嫌気が差したのであろうか?原因は分からないが、刑務所で受刑者として生きていくことが希望だった。


その手段として警察へのいたずら電話を選択したのは、ある意味誰も傷つけない方法だった。

例えば民間人にいたずら電話を何度も掛ければ被害者は苦しむ。それ以外の傷害罪を行使すれば被害者が生まれる。警察へのいたずら電話なら慣れている警察官が適当に対処してくれる。

坂屋容疑者は自分が如何に他者に迷惑を掛けずに刑務所に入るか模索した結果でこの手段を選択したのかもしれない。


だとしたらその目論見は見事に成功した。

褒める気などさらさらないが、立て篭もりで他人の人生を狂わせてまで刑務所を所望した長久保浩二に比べれば遥かにピースフルだ。


ただこの事件を知って刑務所希望の平和主義者達から警察へいたずら電話の嵐が起こらないか心配している。本当に緊急性が必要な人の電話を取れない可能性が出てきてしまう。

模倣犯が現れないことを心底祈る。

 

どうしても我慢できないのなら、いたずらメールの方がまだマシ。タイトルに【逮捕希望】と明記し、本文には「逮捕されたいので今後いたずらメールを大量に送ります。逮捕してもいいと思ったら返信下さい」的なことを書いておけば警察も流し見程度の時間しか取られないのでベター。

 

とにかく坂屋容疑者も含めて警察が本当に必要な人の邪魔だけはしないでほしい。