モテ男を羨ましいと思わない男は居ない。

特別何かをしたわけでもないのに女性が寄ってくる。そんなワンダフルな世界なんて、「会話できない、触れられない、前提として同じ世界に生きていない」レベルのモテない男達からしたら想像付かない。もちろん僕もモテない側の人間だ。


だがモテる男は時として望んでいない種類の女性が寄ってきてしまうリスクもある。モテる女も然り。

 

恋愛は基本的に化かし合いが信条なので、誰も彼もがなるべく自分を良く見せようと振る舞うものだ。

初めはそれでいい。

ただ共有する時間が長くなればなるほどにボロが出る。付き合った異性が自分の理想と程遠いことなど頻繁に起こり得ることなのだ。それが起きた時、すんなり別れられるかは男女問わず運と言える。



5月31日、片桐朱璃容疑者(35)は警察に死体遺棄の容疑で調査を受けた。


片桐容疑者は帯広農業高校の教員で、被害者の宮田麻子さん(47)は元同僚だ。

この2人はW不倫関係にあったそうだが、歳は一回りと結構離れている。

片桐容疑者の人生は「モテ男」で通っていたらしいのだが、一回り年上の宮田さんと密会の果てに不倫の道を選んだ。教員という職業柄、年下女生徒に囲まれているため無意識に年上女性に対して憧憬の念を抱いていた…そんなところだろうか。それに今時一回り程度の年の差は珍しくはない。

 


殺害理由は「別れ話でもめた。関係に疲れた」から。その後「心中するつもりだった」と供述を変えているが、自分も被害者面しておけば罪が軽くなると考えての言葉でしかない気がする。

車内でシートベルトで宮田さんを絞殺。

証拠となる宮田さんの所持品を燃やし、自身のスマートフォンの通話履歴、Lineのやり取りを全て消去した。殺害後には学校で仕事を終えてからスコップで穴を掘り遺体を埋めている。

宮田さんの夫の通報により、片桐容疑者に捜査の手が及んだ。警察の調査にて心当たりを上げる段階で片桐容疑者の名前を出す以上、夫は浮かれた妻の様子に少なからず違和感を抱いていたのではないだろうか。


事件発生の萌芽は同月に開催された全道での農業教員会議にて既に見え隠れしていた。

農業教員会議の場には片桐容疑者も訪れた。片桐容疑者を見た人物曰く「片桐先生が別人のように見た目が変わっていた」とのこと。爽やかスポーツマン風からどのような変容を遂げたのかは定かではないが、恐らく身も心もくたびれたおじさん風になっていたと予想する。

何が片桐容疑者を疲弊させていたのか予測しかできないが、ここで一番妥当な理由になりそうなのが宮田さんとの関係。

この調子では割と高い頻度で別れ話をしていたと踏んでいる。

付き合う前は知らなかった宮田さんの本当の性格。自分の思い描いていたような女性では無かったのではないだろうか。


痴情のもつれからの凶行。

殺害内容はシンプルだが、そこに至るまでに片桐容疑者にはモテ男の充実した表の顔とは異なる厳しい状況下に置かれていた可能性がある。

片桐容疑者は野球に論文にと精力的に学生生活を謳歌していたそうだが、出身大学が酪農学園大学というFラン大学だったそうだ。仲間の教員連中に学歴マウントを取られたりもしたとか。学歴コンプレックスは僕自身もよく理解できる。

専門学校卒の僕の友人がインテリ系が多かった職場に入社した時、自己紹介で開口一番に「え、〇〇さん専卒なんですか?よく入れましたね」とマウントを取られることが頻繁にあったらしい。

逆に言うと友人は学歴ではなく実力で入社した証明であり、片桐容疑者が教員になれたのも努力の賜物であると言える。高学歴でも教員試験に受からない人間は少なからず存在するのだ。

とは言え、日常にはどんなストレスが潜んでいるか分からない。同僚から何気ない一言、当たり前のコミュニケーションだと思っていても本人にとっての精神的負担はやはり本人にしか量れないのだ。

鬱積した感情が普段の片桐容疑者を支配し、年上の包容力溢れる癒しを求めた宮田さんからも結果的に精神的負担を掛けられ、本人からしたら負荷軽減のために現実的に排除可能なものを消した感覚なのだと予想する。

 
宮田さんが別れを拒んだが故の殺害だと思うが、いくらなんでも殺されると分かっていたら流石に別れるに到ったろうに…。

いや、遺体に外傷が無く睡眠薬等の疑いも無いため宮田さんは殺される覚悟があった節もある。不倫関係に疲れていたのは片桐容疑者だけでは無かったのか。そうなると事件の見方も大分変わってくる。「心中」の言葉を真に受け、家族を捨てて片桐容疑者と旅立つつもりだったのか。これまで誰にも見せていなかった一面が顕在化したのかは定かではない。宮田さん側の情報はあまり多くないため詳細は不明。続報を待つ。

ちなみに宮田さんを知る人間からすると人柄は申し分なく、口を揃えて「不倫なんかじゃない!!」と主張したそうだ。

人間は何が起こるか分からないし人柄だけで生き方を判断するのは困難だ。宮田さんが存命でない以上は何が真実か分からないし、日常的に接している方々が宮田さんのことを庇うのも理解できるが、宮田さんも生きて感情のある1人の女性だ。争った形跡が無い以上、魔が差したと考えると矛盾も起きない。聖人ぶる気はない僕も、明日には何かしらの欲求の破裂で牢獄で鎖に繋がれているかもしれない。


もちろん、これだけアレコレ語っても結論として一番悪いのは殺人を犯した片桐容疑者だ。宮田さんの夫や子供、片桐容疑者の妻や子供のこれからの未来を考えると気の毒である。

例え片桐容疑者がこれから地獄を見たところで何も解決しない。


やはりW不倫による殺人は非常に後味の悪い。

被害者が多すぎる。片桐容疑者以外の関係者全てが被害者だ。