3・11の東日本大震災の後、暫くはずっと怪奇現象が続いていたらしい。大抵のタクシー運転手が、乗せたお客が消えた、とか経験しているらしいし、深夜、急に車の前に人影が飛び出し、轢いた、と思ってクルマを飛び出すと誰もいない、という事例が続発した。実際、その為に深夜通行止めになった道路がいくつかあるらしい。

 いわゆる心霊現象であるらしいのだが、そんな現象を、震災以来一貫して研究し続けている人が、東北学院大学の金菱清教授と、彼のゼミ「震災の記録プロジェクト」である。彼の著作は何冊か読んできているが、決してイロモノ的な扱いでなく、学術的に死者と生者、死と記憶、霊的な存在と我々の関わり合いなどを、被災者やその周辺者への徹底した聞き取りによるフィールドワークによって分析することを続けている。

 今回は「呼び覚まされる霊性の震災学」と「震災と行方不明 曖昧な喪失と受容の物語」を読んでいく。彼らが遭遇する「霊魂」は若い人が多く、それだけ無念の思いがあるらしい。それらはタクシードライバーを媒介して、無念の思いを晴らしているのかもしれない。インタビューで「幽霊」という言い方をすると、「そんな言い方をするんじゃない」と怒られたことも多く、ドライバーにとって、それは実体であり、3万人が亡くなった被災者の無念の念なだろう。

 

 あれからもう13年か。その後も大震災続きであったが、それでも3・11は終わっていないのだな。