浮気調査! | 俺町物語

浮気調査!

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「浮気・・・調査?」
「はい、主人が浮気をしてるんじゃないかと気掛かりで夜も眠れず・・」
「いや、ちょっと待ってください!うちは地方新聞社ですよ?そういうのは探偵に・・・」
「探偵を雇うお金がないんです。それにあなた方の記事のネタになるかと。」
週刊誌じゃないんだから。


第4話 浮気調査!


「主人の帰りが最近遅くて・・・」
これまた典型的なご相談だこと。
心配する割に案外仕事とかだったりするんだよな。
「それだけじゃなくて!最近、主人が女性と歩いているのを見た!って友達が言ってるんですよ」
「それはもう尻尾を掴んだようなものでは?」
「ですが、まだ確証が得られないんです。仕事の付き合いなのかも知れないし・・・。とにかく、浮気と断定できるまで、こちらも動けません。ですから!俺町新聞のみなさんに協力していただきたいんです!」
急に強制力が出てきたな。


そこから張り込みが始まり、我々案外ノリノリで探偵ごっこをしていた。
と言っても仕事終わりにご主人の会社の近くで待っているだけなのだが。
「もう3日目ですが、奴さん尻尾出さないっすね」
完全に刑事になりきっている山口。
動きがあったのはそんなときだった。
「あれ?家とは逆方向に歩いてますよ!」
「よし、後を付けるぞ!」



着いたのはお洒落なバー。
我々はご主人に顔が割れていないため、堂々と店内に潜入。
堂々と潜入というのもおかしな話か。
「ご主人、あの女性店員とずっと喋ってますね、まさかこれなんじゃ?」
「いや、女性店員目当てでここに通っているとしても、それは浮気ではないだろう。」
「でも・・・」
「もう少し様子を伺おう。それ以上の何かがあるのかもしれない。」
楽しそうに話すご主人と店員ははとても今日初めて出会ったわけではなさそうだった。
「ちょっと、何を話してるか聞いてみましょう」
「え、ちょっ、おい!山口!!」
山口は二人の側へと歩いて行った。


「いつが空いてる?」
「今度の金曜日なら行けます!」
「じゃあ、その日にお願いしようかな」
「私でいいんですか?」
「君に頼みたいんだよ。だから、こうして何回もここに通っているんだよ。」
山口が二人の会話を盗み聞きした内容をまとめたものだ。
これは決定的証拠だろうか。
しかし、まだ、だ。
二人が金曜日に落ち合っているところをカメラに抑えなければ、ならない。
「俺町公園で18時に落ち合うそうですよ」
「お前の地獄耳は並じゃないな」
「他のお客さんに訝しがられてましたけど、これぐらいお安い御用です!ああいう男がいるから!僕たち清純な男子までもが疑われるんだ!」
情熱が変な方向へ向いてないか心配だが、とりあえずやる気になっているのはいいことだ。


そして、金曜18時。
我々は俺町公園に来ていた。
そこにはすでにご主人の姿があり、バーの店員を待っている風だった。
「山口、とりあえず二人が落ち合うところを抑えておけ」
「わかってます!カメラマンの実力、ご覧に見せましょう」
「来たぞ!」
山口は事前に動物などを撮影することに特化した無音カメラをかまえていた。
二人が落ち合うと怒涛の連射が始まる。
しかし、二人はそれに気づかず歩き出す。
「追いかけるぞ!」
「・・・・・・。」
「いつまで連射してるんだよ」
山口は撮影になると我を失う。
というか、フィルムの無駄遣いだろ。
また野中君に怒られるぞ。



まず、二人が向かったのは高級デパート。
女が目を輝かせながら選ぶブランドもののバッグをご主人は購入した。
二人ともとても嬉しそうにしている。
「妻以外の人にプレゼントだなんて・・・」
と言いながら連射をする山口は途中警備員に連れて行かれた。



「今度は食事ですか・・・」
高層ビル最上階の高級レストランだ。
二人はまたもや楽しそうに食事をしている。
「これは浮気確定なんじゃないですか?」
「そういえば、お前、捕まったんじゃなかったのか?」
「俺町新聞の名刺を見せたらなんとかわかってもらいました。」
「おいおい。会社の名を貶めるようなことはしてくれるなよな。第一これは正式な仕事じゃないんだから」
「仕方ないじゃないですか。それに先輩はなんのために仕事をしているんですか?」
「それは・・・読者のためだろ?」
「そうです。その読者が困っているんですから、助けることだって、立派な仕事です!」
そう言いながら連射する山口には説得力がなかった。
お前のそれは完全に趣味だろ。


意外だったのは、食事の後、二人は普通に解散したことだった。
我々の尾行に気づいたのか。
わからないまま、我々も撤収することにした。



奥さんを呼んだのは土曜日の夕方。
「やっぱり主人は!!!」
こんなことを伝えるのは我々もあまり気持ちよくはない。
だが、ときには真実を知ることもたいせつだ。
今、教えなくてもいずれ、必ず知ることになるだろう。
決心した私は山口に目配せし、写真を出すよう促す。
山口が写真を取り出そうとした瞬間、奥さんの元に電話が入る。
「え?ええ・・・ええ。わ、わかったわ。すぐ行く。」
「なにか、急用でも?」
「夫がすぐに来てくれですって。あ、そうだ。あなた方もいらしてください!夫の前で真実を教えてください!」
そんなことをしたら殴られそうだが、我々は奥さんに引っ張られるようにして、ご主人が待つ場所まで行った。


「ここは・・・」
そこは、昨日バーの店員と来ていた店だった。
他の女と来た店に妻とも来るとは、一体何を考えているんだ。
「こっちだよ」
手招きするご主人の元に何故か我々も連れて行かれた。
「その人たちは?」
「俺町新聞の方々よ!今日は立ち会ってもらおうと思って」
「立ち会う? なんだ、気付いてたのか」
「当たり前でしょ!」
「そうだよな、なんせ今日は二人の10年目の結婚記念日だもんな。新聞記者の方々も一緒に祝いに来てくれたんですね。ありがとうございます!」
「「へ?」」
俺と山口はキョトンとしてお互いの顔を見合わせた。
結婚記念日だと!?
奥さんの方を見ると、奥さんが一番驚いていた。
「なんだよ!驚くことないだろ!」
「ちょ、ちょっと!待ってください!じゃ
、じゃあこの女性は?」
「おい、山口!」
山口は持っていた写真をご主人に見せつける。
「あーー、撮られていましたか。実はこのレストランの下見に着いて来てもらったのです。私は女性の好みというものがイマイチわからないので、彼女に手伝っていただきました。」
「でも、あのブランドの・・・」
「あなたは全てネタバレする気ですか?まあいいでしょう。これですね?」
ご主人は昨日買ったバッグを取り出し、奥さんに渡した。
奥さんの表情は怒りとも悲しみとも驚きとも取れないものになっていた。
「君は10年前に僕があげたバッグを未だに使ってくれてるね。でもそろそろあのバッグも古くなってしまった。穴が空いても使ってくれてるのは嬉しい。だけど、これからはこのバッグにたくさんの幸せを入れて行ってくれないか。」
奥さんの目からは涙が流れていた。
「また10年、楽しくやって行こうね、明美。」
手渡されたバッグに涙の滴がこぼれた。
「はい・・・誠治さん・・・・疑ってごめんなさい」
「いいんだよ。僕の方こそ心配かけてすまなかった」
我々はとうとう場違いとなってしまった。
というか、最初から場違いだったのだろう。
浮気調査を始めたときから。
我々は静かにその場を後にした。



「結局浮気してないなんて、僕らなんのためにやってたんですかね?」
「まだ言ってんのか?あれから3日も経つだろ?」
「けど、なんか腑に落ちなくて」
「これも一応読者のためなんだろ、まあこういうこともあるだろ。」
そんな俺たちの元に一枚のハガキが届いた。
「俺町新聞さん 妻がお世話になりました。10年後、また調査しにきてください。誠治 」
10年後、彼らがどんな家庭を築いているのか、見てみたくなった。
と、同時に自分の10年後を悲観したりする40代の私だった。
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