古井
時は2014年。
新しきものは称され、古きものは淘汰される時代だ。
そんな時代に、立ち向かう一人の男がいた。
その名はーーーーーーーー
俺町物語 第三話 古井
我々取材班は、古きものを愛し、守り続きてきたという古井の家を訪ねていた。
「ごめんくださーい!古井さん!俺町新聞の黒井と申します。少しお話伺えませんか?」
その呼びかけに出てきた古井は何故か憤り、
「出て行け」
と怒鳴った。
どうしたのかと様子を伺っていると、
「"新"聞だとぉ!?俺は新しいものが嫌いなんだよ!そうやって新しいものがどんどん生まれていくから、世の中から古いものがなくなっていくんだ!」
なんという暴論だと思ったが、それ以上に新聞は果たして新しいものなのかどうかも気になる。
「いや、新聞は100年以上前から存在していますし、決して新しいとは言えないんじゃ・・・・」
「ほう・・・では、新聞は古いものだというのだな?」
「いや、古いとは言い切れないですけど」
「じゃあ新しいんだろうが!」
「いや、新しいとか古いとかじゃなくて・・・・」
黒井は悩んだ。
確かに新聞とは一見世の中で起きた新しいことばかり取り上げているようでもある。
しかし、伝統や古きを重んじる姿勢を決して忘れないのが新聞の良さでもある。
この解答次第で今後の新聞業界の行く末も決まるのではないか、とまで思えてくる。
過去、未来・・・・そこで、黒井は思い出す。
「今だ!」
「へ?」
「今ですよ!古井さん!新聞は言わば今の世の中を映し出す鏡です!新しくも古くもない等身大の今の俺町の様子を書くのが僕の仕事です!私は新しいものばかりに飛びついたり、古いものを蔑ろにしたりはしません!ですから、古井さんの今のお考えを率直にお聞かせください!」
古井さんはしばらく黙っていた。
しかし、やがて口を開き、
「私も過去ばかり見つめていてはいけないのだな」
と何かを悟ったようにつぶやいた。
そして、取材に応じてくれた。
ちなみに、このときの取材で得られた内容は全てボツになった。
古井さんの取材は振るいにかけられ、お蔵入りになったわけだ。
しかし、それ以上に大切な友情というーーーー
「やはり蔑ろにしたではないか!!!」
「だって古井さんが四十年履いてる靴下の話なんか乗せられませんもん!!」
かけがえのないものを手に入れたような気がする。