隣人 | 俺町物語

隣人

隣の部屋にはなにか得体の知れない人間が住んでいる。


いや、人間と呼ぶのも憚られる。


もはや、獣である。




見てしまったのだ。




そいつが夜、猫を捕まえ、殺しているところを。





そして不幸にも、目があってしまった。




やつは猫を持ったまま帰ってくる。




足音が俺の部屋の前まで来てピタリと止まる。





男が俺の部屋の前にいるのはほんの三秒ほどだったに違いないが、俺には無限の時間に感じられた。




そして男は動き出す。



何事もなかったかのように自分の部屋に戻る。




ふぅ、と息をつき、俺は眠りにつく。




趣味が悪いやつだが、俺に害は与えないようだ、とそのときは思った。


しかし、問題は起きた。




次の日、会社から帰って部屋を開けると、信じられない光景が俺を待ち受けていた。




昨日見た猫の死骸がベッドの上にある。




それどころかその猫には包丁が刺さっており、その齒は布団にまで貫通し、垂直に立っている。




布団は猫の血で紅に染まっている。






その一瞬、頭がおかしくなりそうなほど寒気がした。




冬なのに汗が止まらない。



汗が吹き出すのに震えが止まらない。




「どう・・・して―――?」




戸締まりはしたはずである。



猫云々より怖いのはむしろ隣に住む男の方である。




これは男からの警告ともとれた。




『部屋に侵入することなど、屁でもない』とも



『猫のようにおまえも殺してやろう』とも


とれる。





ゾクッと背筋に悪寒が走る。



そうだ、警察だ。



と思い出したかのように携帯を取り出す。





が、電話している場合ではないかもしれない。





相手はこの部屋に侵入できるのである。




もはやこの部屋は安全ではあるまい。




交番に行き、かくまってもらうことが先決だ。




そう考え勢いよく部屋から出ると、そこには隣の男が立っていた。




両手にはスーパーの袋。





その中には大量の猫の死骸が入っている。




男は唇の端をこれでもかというぐらいに上げて、ニヤリと笑う。




「作りすぎたので、おすそ分けします」





男はそう言って、袋を差し出すのであった。