これはとある国のお話

まだ森と人間が密接して暮らしていた時代

ある街では奇病が蔓延していた

人々が樹木化してしまうという奇病で

対処法は火で焼いたり切ったりではまた生えて来る為、強い酸で樹木化した部分を焼き切るという激痛を伴う治療法しかなかった


事の発端は10年ほど前、木こり3人組が森に入り妖精たちの住まう大樹を切り倒そうとした事だ

それに激怒した妖精王は、木こり達の命を奪い、それでも怒りが収まらない妖精王は

木こり達の街に呪いを掛けたのだ

そして街は10年間、原因の分からない奇病樹木化に苦しめられていた


ある時1人の少年が町長に呼び出された

少年の名前はミラティウス、早くに両親を亡くし町長の家で使用人をしていた


町長はミラティウスに古い手記を読み聞かせた

森には大層大きな大樹があり、そこには数百年と生きる妖精達が住んでいると、しかし町長や街の人間誰1人妖精の存在を信じていない


それでももしかしたらとミラティウスに森に入り妖精を見つけ奇病の原因を聞き出して来いと命令したのだった

使用人をしながらも育ててもらった恩のあるミラティウスは亡き父のナイフを持って1人森へ入っていった


大樹までは大人の足で1週間、まだ8才のミラティウスには相当な距離だ

途中獣に襲われたり道に迷い疲弊する中

20日目にしてようやく目的の大樹に到着した


そこは空気が澄み、虹色の木漏れ日が指し透き通った水が流るまるで夢のような空間だった

少しの間時間を忘れその景色に酔いしれていると

大樹から数体の妖精達と妖精王がミラティウスの前に姿を現した


妖精王はミラティウスに、穢らわしい人間がこの地に何をしに来たと問うてきた

ミラティウスは素直に街の奇病の事を話し妖精王に助言を求めた


すると妖精王は薄ら笑いを浮かべ

その奇病は私の呪いによるものだ、今でも人間は苦しんでいるのか、これは滑稽だと笑っていた


ミラティウスは何とかその呪いを解いてほしいとお願いをしたが、妖精王は首を横に振り帰れと促し大樹の中に戻ろうとした


しかし何か思いついたのか妖精王はミラティウスの目の前まで降りてきて

お前が血も繋がらぬ人間達を救いたいと本気で思っているのなら命を差し出してみろ

そうしたら考えてやる


妖精王は人間にそんな事は出来ないと高を括り笑っている


するとミラティウスは微笑み

そんな事でみんなの苦しみが消えるのですね、ならばボクの命捧げます

その瞬間持ってきたナイフでミラティウスは胸を突き刺し倒れた


呆然としている妖精王

嘘だろ、人間は穢らわしい存在

他人の為に命を賭ける奴なんていやしないと試したのに

妖精王は崩れ落ちた

私は偏った認識で心の優しい者の命を奪ってしまった

そういうと妖精王は空まで登り

呪文を唱えた


いっぽう街では大騒ぎ

奇病に侵されていた人々がみるみる回復していったのです

それは町長の耳にも入りましたが

町長はミラティウスがやり遂げたとは思わず、奇病が収束期に入ったのだろうと発表した

ミラティウスは野垂れ死んだか逃げ出したのだろうと


それから数十年街も栄え森も開拓され大樹も街から見えるようになった

妖精達は姿を表さなくなり、大樹の根元には石碑が1つ人間には読めない文字で何かが刻まれていた


名も知らぬ英雄ここに眠る