大人の階段
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高校初めての夏休み。
僕はバイトに明け暮れた・・・毎日、朝八時から17時までヨーカドーで働き続けた。
惣菜売り場では、惣菜のパックにつめる係り、値付けシールをつけて陳列する係り、サラダを作る係り、揚げ物を揚げる係り、
天婦羅を揚げる係り、焼き物を焼く係り、いろんな仕事があった・・・
周りは大学生とパートのおばちゃんだらけの中で僕は着々と仕事を覚えさせてもらった。
最初は詰め物しかさせてもらえなかったが、夏休みに入るとコロッケやから揚げを揚げる様になっていた。
いつも仕事が終わると、自分が油臭くなっているのがわかる。
仕事が終わると、同時刻に終わるマコトと一緒に、家まで自転車で帰った。
もしくは、大学生や社員の方と一緒に飲みにいったりしていた。
僕は中学生の頃、カクテルバーを半分飲んで、酔っ払って気持ち悪くなったので、当然飲めないもんだと
思っていたが、意外と飲めた。
でも生ビールはあまり美味しくなかった記憶がしている。
年上の人と付き合う機会が増えたのは、自分にとって大変よい経験になった。
飲んだ後、初めて屋台のラーメンを食べに連れて行ったもらったり、周りの人間より一足早く大人になった気分だった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある日父が入院した。
元々僕が中学生の頃に、肺がんで肺を摘出していた父は、僕が夏休みに入ったある日
突然の高熱と耳が聞こえないという症状を訴えた。
祖父と一緒に父を担いで病院に連れて行くと、そのまま入院する事になった。
いろいろな検査を受け、祖母と叔父とともに、担当医に呼ばれ病院にいくとドラマのような一言が待っていた・・・
「最悪の場合も覚悟しておいてください」
祖母はその言葉を聞いて、声を震わせていた。
僕は意外と冷静だったと記憶していた・・・・
ベットで寝ている父とどんな話をしようか、いつもいつも考えこんでいた気がする。
「バイトでこんな仕事を覚えたよ」とか、耳が聞こえなくなっていた父に、当時流行っていた『愛してるといってくれ』という豊川悦司
がでていたドラマで覚えた、手話で話をしようとしてみたり・・・
バイトでは人間関係も非常うまくいっていたが、その一方で大事な人との別れを感じさせる、夏休みであった・・・・
僕と、サリンと、ときどきツンデレ
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晴れて美術部に入部した僕は、バイトと部活の両立でとても有意義な日々を過ごしていた・・・
元々小学生の頃から、油絵を習っていた僕は、また油絵に挑戦できるステージを得て、アーティスト街道まっしぐらだった。
また、初めて自分でお金を稼ぐという事を肌で体感するのは、とても刺激的だった・・・・
そんな夏休みも近づいてきたある日のこと、世間ではオウム真理教のサリン事件で持ち切りだった・・・
永田町の中心とした地下鉄内で劇薬が撒かれ、現在では首謀者が裁判でも話題になっている事件。
なんでも面白がっていたあの頃、僕ら教室でもその話題があがった・・・
「サリンつくろうぜ!」
僕は、スズキとふる さと に向けてそう言った。
(不謹慎であることは、承知の上で子供の発言とお許しください)
僕は、当時大好きだった、キリン『力水』のビンに、お弁当の食べ残しをいれた・・・
「こうやって培養しよう!」
高校の時はお弁当だった・・・ごはんを入れたり、誰かが食べ残した牛乳をいれたり・・・
我ながら、幼稚な悪ふざけとは思うが、そこでいくつになっても少年ということで、お許しを・・・
・・・・・何日かして、そのビンはいつまでも僕の机の左のフックに白いレジ袋にはいって放っておかれていた・・・
その存在を思い出した僕は、スズキにむかって
「これ、開けてみてよ。」
そういって、彼に差し出した・・・・
「ぴぎゃー!!!くせぇってばよ~これサリンだよ、間違いねぇ~」
そういって彼は蓋が解放されたビンをこちらに向けた・・・
身の危険を感じた僕は、思わず窓から中庭に向かってビンをぶん投げた。
ポイっ
「おめぇ~最悪だよ~」
一部始終のやりとりを見ていた、ふる さと はそう言った。
夏休み直前の、教室のやりとりでした・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
早めにバイトに入らなくていけなかった僕は、マコトと一緒に電車にのって、
バイト先へと向かった・・・
「おっ、マサト♪」
マコトはそういった電車のドア付近に立っていた男をみてそういった・・・
そこには、黒いタートルネックを学ランの下に着込んだ、つんつん頭でつっぱった男がたっていた。
彼はマコトの声に気付くと、軽く微笑んでこちらに向かって片手を挙げた。
僕もその片手の挨拶に呼応して、軽く会釈をした。
彼こそが、後に僕らに大きな混乱と爆発力をもたらしてくれるマサト♪だった。
きっと今でいうところのツンデレとはああいうことなんだろうなぁ~
新しい場所~3人目の主人公との遭遇
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ジメジメとした一年でもっとも不快指数が高まるこの時期
僕はひとつの転機を迎えていた・・・・(そんなだいそれたものでもないけど・・)
新しいステージとして始めたバトミントン部だったけど、部長という名の煩わしさと、その押し付けられた責任感から逃げ出したくなっていた。
「先生、バトミントン部をやめようと思います・・・」
顧問の先生に向かって、深刻そうな顔をしてそう発した。
「なんでだよ、なんか嫌な事でもあったのか?」あまり熱血な先生ではなかったけど、とりあえず聞いてみた風な言い方
だった。
「いや、他にやりたい部活ができたので・・・掛け持ちもかんがえましたが・・・・」
とりあえず、そう言っておいた。
「なんの部活だ?」
「美術部に入る予定です。」
「そうか・・・わかった。がんばってな。」
『ふ~、やっと終わった・・・』ようやく煩わしさから解放された僕は、部員たちに今日で辞める旨を伝えた。
自分に煩わしさが移ることへの面倒くささが「え~なんでだよ!!」といった発言を発しさせた。
が、もうすっきりだった。
前々から自分の意思を伝えていた、両性具有的な圭くんも一緒に辞めた。
はっきり言って人間関係の煩わしさから二人とも逃げたかったのだ・・・
「なんかバイトでもしようよ。」
僕は本気で美術部に入るつもりであった。
美術の先生をしていた顧問の先生は良き相談相手でもあったし、なにより僕自身を理解してくれている気がした。
でも、バイトミン部を辞めたあとは部活一筋とはしたくなかった・・・その時は僕は、肺がんでの父を症状もよくなかった
為、アルバイトで自分のお小遣いを稼ぐ必要性があった。
なのですぐに二人でバイトの面接に行った。
初めて履歴書を書いて、一緒に面接を受けた。
「じゃあ、君は来週から惣菜部で働いてもらいます」
そういうわけで、僕は地元のスーパーの惣菜部で、圭くんは加工食品部でバイトをすることになった。
ここで、僕は就職するまでの間、勤労に励むことになる。
初めてバイトに出社した日、とても緊張して入り口で挨拶をしたのを今でも覚えている。
「今日からお世話になるMです。よろしくお願いします。」
初めて接する大学生や、パートのおばさんなど、とても素敵な方ばかりで、ホントに安心できた。
バイトの風景はまた別の機会に紹介したいと思う。
美術部にもきちんと入部した。
部員は、同じ学年の女の子が2人、3年生で部長の男の子が1人。
他にも何人か部員がいたようだが、ほとんど幽霊部員だった。
同じ学年の女の子、一人は麗子といって、真面目でへそ曲がりなまるで少女漫画にでてきそうな女の子だった。
彼女とは3年間ずっと同じ部室で、活動を行うことになった。でも甘酸っぱい思い出は無い。
なにかしら文句ばっかり言われていた気がする。
そんなこんなで、部活にバイトに明け暮れていた僕は、ある日バイトで奇妙な出会いを経験することになる。
惣菜部のとなりは、精肉部という部署があった。
そこで、ワゴンを出し入れしている、バイトらしく細身の男がいた。
たまたま彼が顔をあげた時にお互い目があった・・・・
「!!あれっ?」
お互い何かに気付いたように、目を丸くした。
「マコちゃん?」
彼は同じ小学校の卒業生で、隣のクラスだった「マコト」だった。
高校の入学試験の時、遠くで見かけたが声はかけなかった。きっとお互い覚えていないだろうと思っていた。(たぶん)
同じバイト先で出会った僕らは、それからというもの、バイト帰りには一緒に帰り
それからバイトを止めるまでの間、とても長い時間を共有することになる。
そんな彼との、出会う前までのエピソードはまた別の機会に書きたいと思う・・・・