週末に行なわれた、選挙前最後となるのであろう世論調査によると、菅政権が支持率を大きく下げたとのことである。朝日新聞の記事の見出しを掲げておく。
内閣支持率下落39%、不支持40% 朝日新聞世論調査

 政権発足からこれまでの菅政権の動き、特に菅首相自身の言動等について、私自身はもとより大いに不満を持っている。その証拠として、末尾に、私が菅氏の事務所宛て(だと思うが)に送ったメールのコピーを載せておくことにするが、一言で言えば、やり方が極めて拙劣である。同じことをやるのに、もっと遥かに上手にやるやり方はあったはずなのに、と思われてならない。

 が、そのことを述べた上で言えば、私はなお、今回の選挙では民主党が勝利すべきであり、願わくは単独過半数を獲得するのが極めて望ましいと考えている。今の日本の政治に何よりも必要なのは改革であり、それを実行する力を持っている、或いは持ちうるのは、現在の状況では民主党だけだからである。

 世論調査が大きく振れるのは今に始まったことではなく、政治に対する国民の動向が風に揺れる葦のようにあちこちに簡単になびくことも今に始まったことではない。が、今、仕事をさせる前に菅政権を潰しても日本の政治に希望はない。このことは断言できる。なぜなら、それに代わるべき勢力として今の日本にあるのは、自民党であれ、小泉改革推進派であるみんなの党であれ、どうしようもない右翼である「たちあがれ日本」「日本創新党」であれ、自民党とのへその緒が切れていない「新党改革」であれ、民主党よりもさらに悪い連中ばかりだからである。


 以下はメールのコピー。

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件名 Re: 菅政権への不安の解消を図ってもらいたい
宛先 kan-naoto@nifty.com
日時 2010年06月18日 23:24:35

前略

 このアドレスに何度かメールをお送りし、もとより返事を期待しているわけではありませんが(もちろん一切返事はいただいておりません)、現実に菅首相の率いる政権が出してくる方針が、私自身が期待していたのと全く異なるものであるのを見続けるにつれ、不安の念を強くしております。まだ政権としては何もしておられないわけですので、失望という言葉は使いたくありませんが、今のままで政治が進めば、遠からずして必ず失望の念を覚え、しかも強く覚えることになりはしないかと思っております。


 例えば、菅首相は「強い財政」の実現を主張し、その関連で消費税の増税を語っておられます。もちろん、直ちに消費税の増税があるわけではなく、これから議論をして成案を得てという話だということは、私自身は理解していますが、気の早い世論は必ずしもそう理解してくれません。少なく見積もってもプレゼンテーションには大いに問題があると言わざるをえません。また、消費税の増税の際には、食料品の非課税化は不可欠であり、消費税(付加価値税)の税率が20%台になっているヨーロッパ諸国では食料品の非課税は広く実施されています。なぜ菅首相は、食料品の非課税化を、消費税の税率アップの検討ということと同時に語らないのでしょうか。「逆進性対策」などという抽象的な言葉では全く不充分であり、しかもそれを「検討する」などという言い方では、国民の間に疑念を生じさせます。この点でもまた、少なく見積もってもプレゼンテーションには大いに問題があると言わざるをえません。


 さらに言えば、今の日本経済は、企業の業績こそ回復基調にあるかもしれませんが、それは減収状況のもとで経費をさらに節減したことによる減収増益というパターンでの業績回復がメインであり、景気自体が好転しているとは決して思えません。6月16日のぶら下がりの会見で菅首相は 「経済の方もですね、いろんな政策を打ってくる中で、だんだんと景気が回復するきざしが出てきたと。ま、あの、株価もいろいろ上下していますが、今日はまた1万円を回復していますけれども、そういう意味では全体に経済も景気もいい方向にきているかなと、こう思っています。」 とおっしゃったとのことですが、
http://www.asahi.com/special/hibi/TKY201006160390.html
判断の仕方が皮相的にすぎるのではないでしょうか。

 現在の状況で増税を行なえば、景気回復は簡単に中折れし、再び不況へと向かう可能性が大いにあるように私には思われます。実際、財政再建の方針を打ち出した橋本政権のもとでの経済失政の結果、年間の自殺者数がそれまでの2万人台から一気に3万人台にまで跳ね上がったことは、菅首相もよくご存じのはずです。経済失政で自殺者数を増大させるなどということは、決してしないでいただきたいと願います。

 しかも、菅首相の所信表明演説の経済関連の部分の中には、デフレ解消を語り、「当面はデフレ脱却を喫緊の課題と位置づけ、日本銀行と一体となって、強力かつ総合的な政策努力を行います」と述べている部分がありますが、ここで言う「政策努力」が具体的にどういうことなのかという点が、これまでの発信の中からは全く見えてきていません。

 もし本気でデフレ解消を考えるのであれば、長らく財政政策の禁じ手とされてきた新規国債の日銀直接引き受けを真剣に検討する必要があります。インフレを確実に起こす方法はこれ以外にはないと思われるからです(いわゆるインフレ目標論は、それが財政出動を伴わない金融政策を主張する限りでは、全く実効性がないと思われます)。新規国債の日銀直接引き受けを行ない、その一部で政府の債務を圧縮し、残りの部分で公共事業を行ない政府の支出を増やせば、インフレ傾向は確実に増大します。もちろん、このような政策を行なうことは、相当の円安を惹起する可能性がありますが、それを織り込み、円の暴落に至らない程度を見極めて実施規模を決めれば良いのではないかと考えます。

 公共事業のあり方としては、都市部の自転車道整備が特に東京圏などでまだまだ進んでいないと思われるので、これを実施すれば、いろいろな波及効果が期待できます。

 経済政策に関しては、(郵政民営化の問題は措くとして)連立のパートナーである国民新党の主張のほうが基本的に的を射ていると私は思います。財政再建を前面に打ち出すことは、既にそれ自体が景気の腰を折る危険性を持っている、ということをよく認識していただきたいと切に願います。


 今1つ、沖縄の普天間基地の問題については、菅首相は繰り返し「日米合意を踏まえて」「日米合意を踏襲して」などと発言し、そのつど沖縄の人々の反感を強めています。今度6月23日に沖縄戦終結の記念日に沖縄を訪問されるとのことですが、沖縄の人々の意向を徹底的に尊重して、必要があれば合意の見直しにも踏み込む覚悟で、この問題に取り組んでいただきたい、そして、首相のそのような立場が、沖縄の問題に関する首相のどの発言からもにじみ出るようにしていただきたい、と切に願います。

 外務省あたりからどのようなレクチャー等が行なわれているのか存じませんが、仮に、海兵隊の国外移転が結果として尖閣諸島への中国の進出をもたらすという危惧の念があるのであれば、むしろ、だからこそ海兵隊を国外に移転して、中国が尖閣諸島に手を伸ばすなら伸ばさせて、そのことを国際世論に見せつけるべきだと考えます。平和的台頭を主張しておきながら、その一方で空母建設を進めるなど、中国の軍事大国化の懸念は強まりつつあるので、何か問題が起こってそのことを国内外にはっきりさせることができれば、むしろ日本の国防論議はより具体的に行ないやすくなります。菅氏は安全保障問題に関しては、国民自身の覚悟が重要だとの考えをお持ちだと拝察しますが、それを促す意味でも、むしろ日本防衛への米軍の関与度を低めることこそが、今後の日本の安全保障・外交政策を進める上では好都合なのではないでしょうか。日米同盟の堅持を考えるのであれば、米軍の撤退に合わせて、緊急時における空港の使用許可といったことを取り決めることが効果的な代替策となりうるのではないかと考えます。


 菅政権の発足に伴って民主党が世論の支持の回復を成功させたことの一因は、言うまでもなく、金にクリーンな政治をやってくれそうだという期待感が出てきたからだと思われます。この機を逃さずに、菅政権は、企業団体献金の全面禁止に踏み込むべきではないでしょうか。確か、民主党の中の菅氏のグループの中には、企業団体献金の全面禁止を主張する方々が多いのではないかと思います。菅氏自身は、個人献金が集まらない風土ということを何かの折に語っておられましたが、しかしそれでも、個人献金と政党助成金とで政治が行なわれるようにする方向にしか、日本の政治には進むべき道がないのではないかと考えます。この機を逃さずに菅首相が決断を下すことを心から願います。


 以上縷々書きましたが、率直に言って、上で書いたことが菅首相を動かす可能性は極めて低く、むしろ菅政権は、私が期待するのとは全く異なる方向へと進む可能性が高いように感じています。今回の政権運営で、もちろん私の考えと異なるやり方によって私が期待した以上のことをしていただければ話は別ですが、財政再建路線に走って景気の腰を折り、かつ「日米同盟」の重要性ばかり語って民意から遊離し、かつ政治とカネの問題でも何ら進展が見られない等々といったことになれば、その際には、菅首相を支持することを再検討せざるをえなくなります。そしてもちろん、このように思っているのは私だけではないはずです。

草々
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(メールのコピー 終わり)