5本目。

 

 

監督:フォルカー・シュレンドルフ

キャスト:アンドレ・デュソリエ、ニエル・アレストリュプ

1944年8月25日未明。パリの中心部に位置するホテル ル・ムーリスにコルティッツ将軍率いるドイツ軍が駐留していた。ヒトラーからの命を受け、コルティッツはパリ壊滅作戦を進めている。それは、セーヌ川に架かる橋の数々、ノートルダム大聖堂、ルーヴル美術館、オペラ座、エッフェル塔…パリの象徴でもあり、世界に誇る美しき建造物すべてを爆破するというものだった。そこへ、パリ生まれパリ育ちのスウェーデン総領事ノルドリンクが、パリの破壊を食い止めようと説得にやってくる。将軍の考えを変え、何としてでもパリの街を守りたい総領事。一方、妻子を人質に取られ作戦を実行せざるを得ない将軍。長い一夜の駆け引きが始まる―。~映画.com~

2015年フランス・ドイツ合作。こんな史実があったとは。パリはもう一歩のところでナチに破壊され、瓦礫の山になるところだったということ、それを未然に防いだのはアメリカをはじめとする連合国でも、フランスで頑張っていたレジスタンスのひとたちでもなく、この映画で描かれる二人だったということを初めて知りました。そしてその一人はこの街の破壊をヒトラーから命令されていたドイツ人司令官だったということも。

 

もともとは舞台で上演されるために書かれた作品を脚色し映画化されたとのこと。パリの破壊を食い止めたいスウェーデン総領事とヒトラーから破壊を命じられているドイツ人司令官の緊迫した駆け引きが続く内容です。パリを流れるセーヌ川には33の橋があり、その橋すべてに爆弾が仕掛けられました。橋が壊れることで流れが堰き止められ、パリの街を浸水させてしまうという。大きな建造物にも爆弾が仕掛けられそれらが街を木端微塵にするはずでした。ヒトラーが愛したオペラ座も粉々になるはずでした。大戦末期、ノルマンディー上陸作戦でドイツの負けが確定していたのでヒトラーは「それならパリの街も道連れに」のつもりだったようです。ドイツ人司令官は盲目的なヒトラー信者というわけではなかったようで、ユダヤ人虐殺についても心理的葛藤を抱えていました。パリの爆破についても逡巡する部分がありました。その人物を見抜いて、良心に訴え、メリットデメリットについて説き、説得するやり方、すごいなと思いました。交渉する相手を選ぶことも大事。さすが外交官かと。でも司令官は妻子をナチに人質として取られていて、指示に従わなければ妻子の命はないのです。よく知らない街を救うか、大切な妻子の命を守るか、「君ならどうする?」と司令官が総領事に聞く場面があります。胸が痛むシーンでした。

 

最終的に説得に応じた司令官は爆破中止の指示を出します。その日。朝焼けに輝くパリの街の美しさといったら・・!!! パリは本当に美しい街。それがもう一歩のところで瓦礫の山になる寸前だったなんて。最終的にこのドイツ人司令官は戦後釈放され、妻子の命も救われました。もし指示通りに街を爆破していたら・・彼は戦後は戦犯となり、世界中の人々から恨みを買っていたでしょう。

 

この作品はミニシアターなどで上映されるタイプのもので万人受けしないかもしれないですが、知らなかった歴史の一場面を知ることができたし、私は観てよかったと思いました。

 

クローバークローバークローバークローバークローバー

 

本筋からは逸れますが映画の中で印象的なエピソードがありました。司令官が使っていたオテル・ド・クリヨンのスイートルーム。ここは隠し扉があり、その向こうに隠し階段があるんです。ナポレオン3世がクリヨンに囲っていた愛人に会いにくるために作らせたものだと総領事が司令官に話す場面があります。

 

私自身はこの高級ホテルには泊まったことはありませんが、思い出したことがありました。芦屋発祥のアンリ・シャルパンティエ。ここの銀座本店に行ったことがありました。店内には本当にそれを言われないと気づかない「隠し扉」があるんです。隠し扉の向こうにお手洗いがあるのですが、とても凝った造りで、案内されて目にした時に驚いたのでいまでも覚えています。

 

映画を観ながら、銀座のお店のことを思い出していました。あとで気になって調べてみたらアンリシャルパンティエのフランス人パティシエの方、かつてオテルドクリヨンでシェフ・パティシエをされていたとの情報をみつけました。何か関係あるのかしら。映画とは関係ないけれど、アンリシャルパンティエのクレープシュゼット、演出も素敵だし、とても美味しくて感動しました。笑