一本目。

 

 

監督:李相実

キャスト:吉沢亮、横浜流星、高畑充希、寺島しのぶ、渡辺謙、田中泯、中村贋次郎、島田久作、宮沢エマ、永瀬正敏、三浦貴大、森七菜

 

任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。~映画.com~

 

2025年日本映画。話題の作品を見てきました。最近はテレビのドラマを観ていても読書していても集中力が切れがちなのでちゃんと3時間もみてられるかしらと思いながら映画館に向かったのですが、全くの杞憂になってしまいました。3時間の長尺を忘れるほど映画の世界に入り込んでしまいまいした。

 

吉沢亮さんと横浜流星さんは役作りに一年半をかけたと何かで読みましたが圧倒的な演技でした。二人の女形はめっちゃハマっていました。そして舞台の熱気、迫力は映画館のスクリーンだからこそ再現できたのかと思いました。なので絶対これは映画館で観るべき作品。「悪魔と取引をした」という喜久雄の言葉はゲーテのファウストを下敷きにしたストーリー展開を思わせ、少し暗めの照明、含みのあるセリフ、あとにじわっと余韻が残る感覚、いろんな要素がフランス映画を観ているような感じでした。実際、カンヌにも出品されているそうです。

 

印象的だったのは最初の場面。滅多に雪が降らない長崎での雪の日のあのインパクトのある始まり。子役の演技もすごくよかったです。中盤、代役に抜擢された喜久雄が客席から大喝采を浴びる同じ時刻にその場から逃げるように去っていく御曹司・俊介の場面。客席の大きな拍手と劇場の外の雨の音が重なるところ。頂点に上り詰める瞬間の喜久雄と敗れて去っていく俊介。人生の明暗を同時に見せられているかのようでした。

 

でも人生はそんな簡単には進まなくて喜久雄もあることをきっかけに凋落してしまいます。そしてまたそこから這い上がる。助けてくれるのは彼の場合は血筋ではなく「芸」だけ。その後にたどり着く一段と磨きをかけた芸。そしてライバルである喜久雄と俊介の間に育まれる関係は決して相手を引きずりおろしてやろうなんていう醜いものではなくて、ライバルだからこそ互いの苦しみや葛藤がわかりあえるのだと表現されているところが素敵だと思いました。二人の人生を3時間の凝縮で見てきた感じですが喜久雄が晩年、人間国宝になったときのインタビューで「順風満帆の人生でしたね」と尋ねられていたところも「え!」って思いました。あれだけ波乱の人生であっても傍目からはそう観られるものなんだなあ、って。

 

キャストもとても豪華でした。私は田中泯さんの存在感がすごいと思いました。主役の二人を凌駕するような佇まい。あと最初にちょっと出てきただけですが永瀬正敏の凄みも。ほとんどセリフないのに宮澤エマさんも任侠の妻役がえらいハマっている感じでした。脇役陣も圧倒的で世界的俳優の渡辺謙さんさえ「そのうちの一人」くらいにしか思えないくらいみんなすごかった。

 

映画を観終わってから福井県にいる友達に長文のラインを送ってしまい、夜までまた盛り上がって。笑 その友人は今夜、ご主人と映画を観に行ってくれるそうです。爆  笑  今年初めての映画鑑賞でした。