先週観たNHKの「映像の世紀」。過去の歴史映像にAIの最新技術と読唇術を使うことで、知られていなかった過去の事実を炙り出すという大変興味深い内容のものでした。

 

ヒトラーは自身を神格化させるため、プライベートなことは一切外に見せませんでした。しかしエヴァ・ブラウンが撮影した4時間超のプライベートフィルムが残っており、その映像をAIが再解析したことで、知られていなかった彼の私生活、個人的な交友関係などが明らかになりました。

 

そこには美しい山に囲まれた山荘に集う人々の映像がありました。この山荘でのみヒトラーは心を許す人たちだけに囲まれくつろぐことができたと。ユダヤ人の大虐殺を実行するその同じ時に山の中の桃源郷のような別荘で過ごす彼らはどんな人たちだったのか。「当時のドイツ人の上位1万人に入る人たち」と言われてました。有名な女優や画家なども彼を訪れ、楽しそうに過ごしています。その社会で上位にいるためには権力者に阿るのです。

 

そして1940年代のあんな古ぼけたぼんやりした映像でもAIの力で口の動きからどんな会話を交わしていたかが読み取れることも印象的でした。美しい景色を背景にユダヤ人の殺害が順調に進んでいることを報告する部下とその報告を受け取るヒトラーの姿がありました。ここが衝撃的でした。人の命を奪う行為があたかも、たとえば「工場の操業はうまく進んでいるか?」くらいの軽い感じで話されていたので。

 

エヴァ・ブラウンはヒトラーと20歳以上も年が離れていてあまり頭が良い女性でもなかったそうです。しかしそれだけにヒトラーは彼女にだけは気を許すことができたと。彼が薬物を摂取していたということも驚きでした。陰惨な現実を忘れたいかのようにここで過ごす彼の姿。

 

そんな事実を知る中で思ったのはヒトラーの中でユダヤ人殺戮は何だったのかということ。ユダヤ人殲滅は彼自身が望んでいたことなのか。これまでわからなかったことが新しい技術により解明されることで歴史が塗り替わる場面が今後、次々と起こりそうだと思いました。