夕方の買い物に出かけようとした時、マンションの下りエレベーターで小学生の男の子と一緒になりました。一階に着いた時にその子はさっと「開」のボタンを押し、「どうぞ」と私が先に出るよう促してくれました。なんて気が利くのでしょう。集合玄関まで歩いた際に「さっきはありがとうね」って言ったら、その子は恥ずかしかったのか返事をせずに下を向いて一気に走り去って行ってしまいました。(笑)
90年代、オーストラリアで暮らしていた頃、ある商業施設の手動ドアから中に入ろうとした時、すぐ前に7歳くらいの男の子とその子のお父さんらしき親子連れがいました。お父さんは私に気づくと、入り口で立ち止まってさっとドアを開けてくれました。その時、一緒にいた息子さんに小さい声で「レディーを先に通さないといけないよ。さ、こうやってドアを押さえて。」ってその子にドアを持つように言うのです。
その男の子は言われた通り、小さい両腕で一生懸命、重いドアを押さえてくれました。小さい子では持ちきれないドアだったので、上からお父さんが手を添えて、「どうぞお先に」みたいなことを言ってくれました。男の子はドアを押さえながら、不思議そうに私の顔を見上げています。思わず彼に「Thank you, you are gentleman!」って言いました。
現地ではオフィスの中でも男性はドアは開けてくれるし、重いファイルは当然のように持ってくれるし、レディーファーストが徹底していました。会社の役員クラスの方とエレベーターで乗り合わせても、ボタンを押してくれるのは相手のほうで女性の私を先に通してくれます。みんなとても自然なふるまいだったので、「男性が先、エライ人が先」って刷り込まれていた昭和生まれの日本人女性の自分にはそれも当初はカルチャーショックでした。あのお父さんが小さい子に教えている場面に遭遇して、「こうやって小さい頃から躾けられてるのね」って思ったものです。
日本では特にレディーファーストで、ということはないだろうけれど、エレベーターで乗り合わせたあの男の子も親御さんからは「お相手を先に」っていうふうにちゃんと教えてもらっているのだろうな、と思いました。