16本目。

 

原題:Lunana: A Yak in the Classroom

監督:パオ・チョニン・ドルジ

 

ヒマラヤ山脈の標高4800メートルにある実在の村ルナナを舞台に、都会から来た若い教師と村の子どもたちの交流を描いたブータン映画。ミュージシャンを夢見る若い教師ウゲンは、ブータンで最も僻地にあるルナナ村の学校へ赴任するよう言い渡される。1週間以上かけてたどり着いた村には、「勉強したい」と先生の到着を心待ちにする子どもたちがいた。ウゲンは電気もトイレットペーパーもない土地での生活に戸惑いながらも、村の人々と過ごすうちに自分の居場所を見いだしていく。(映画.com)

 

 

2019年ブータン映画。これもとってもいい映画でした。いまどきの言い方で表すなら「尊い」。人間の尊い美しい部分をみたような気持ちになりました。首都ティンプーから8時間ではなく8日間かけてようやく到達できる僻地が舞台です。生徒役の女の子が素晴らしかったです。目がキラキラしていてとてもけなげな学級委員を演じていて。村の未来、子供たちのことを真剣に考える村長や大人たちの姿も。教師としてやってきた無気力な主人公がどんどん変わっていく様子が印象的でした。

 

都会では自身が傷つかないよう、知らず知らずのうちに攻撃的で守りの態勢になってしまいがち。それが人の善意がみちた場所に行くと、その人の美しい部分が引き出されてくる・・そんな感じがしました。

 

冬がくるまでにみんなに惜しまれながら村を去る主人公。彼はやはり狭い国を抜け出して海外に行くという夢を捨てられませんでした。彼のこの気持ちもよくわかりました。彼にとっての海外は生まれ育った自分の国の良さを改めて確認するために必要なことだったのだと思います。

 

世界一の幸せの国といわれるブータン。でも実際にはアルコール中毒になる人がいたり、離婚して苦労する人がいたり、と、決してイメージするような「幸せ」だけがちりばめられているわけではない。そんな現実も垣間見えました。映し出される風景の映像は日本の田園地帯ととても似ています。目上の人に敬意をもち、挨拶するときに頭を下げる習慣も日本と似ていました。閉ざされているからこその幸せもあるのでは、と。そうなると果たしてグローバル化の波は本当に「善」なのか?そんな疑問も感じました。