この企画展も7月上旬まで、ということで先週行ってきました。パリ・ポンピドゥーセンターの作品が数多く出品されていました。ポンピドゥーセンターには昔、パリに旅行した時、目の前まで行ったのですが、何かの都合で閉館していて入れなかったのです。その建物は配管などがむき出しで、情緒めいたものも感じなくて、20世紀以降の工業化社会を象徴しているような無機質な建築という印象が強く残ってました。

 

 

同美術館に収蔵されている作品も1900年代以降の近代美術品がメインです。キュビズムとは20世紀になってから広がった新たな美術表現です。複数の視点から見た対象物のイメージを一枚の絵の中に表現するという、説明だけ読んでもよくわからない感じなんですが、ピカソの抽象画がそのイメージでしょうか。

 

キュビズムというと私はピカソとブラックくらいしか知らなかったのですが、この人たちはキュビズムの先駆者であり、それに続く芸術家たちの名を見ていると、モディリアーニやシャガール、藤田嗣治、デュシャン、ル・コルビジュエなどの名があり、20世紀のアーティストら殆ど全てがその影響を受けているといった感じでした。

 

 

 

会場では時系列的に作品が並んでいました。古典的な絵画と対照的なアフリカやオーストラリアのプリミティブアートが当時の芸術家たちにインスピレーションを与えました。そもそものきっかけは、少し前に写真が発明されたことでした。対象物を見えたままに描くという手法では絵画は新登場したカメラの技術に太刀打ちできなくなってしまったのですね。それに危機感を覚えていた芸術家たちが生き残る道を模索していた時に出会ったのがプリミティブアートで、これが触媒になり、「時代の空気」という要素も混じって、芸術家たちの頭と心の中でいろんな化学反応が起こり、そこから生まれ発展していったのがキュビズムという流れだったのかな・・というふうに理解しました。

 

 

 

 

展示室から展示室に移動。美術館のクラシックな造りが展示作品と対照的。

 

 

 

 

少し前に同じ美術館で開催されている村上隆さんの企画展にも行きましたが、今回も館内の写真撮影が可能でした。自分自身の記憶の整理にもなるので写真撮影ができるのはとてもありがたいです。比較的観覧者の数が少なくて、一枚の絵の前の真ん中に立ってしばらく絵を見ていられる贅沢を楽しみました。大阪のモネ展では、平日でもすごい人で立ち止まってゆっくり作品を見る余裕が全くありませんでした。まるでベルトコンベヤーに乗って順番に見ている、みたいなのだったので。

 

 

 

マルセル・デュシャンとその兄弟。

 

 

下の像をみてすぐにモディリアーニの作品ってわかったけど、こうやって見るとモディリアーニの絵もまたアフリカとかその辺の影響を受けていたのかと思いました。

 

 

 

イヤホンガイドで「なぜキュビズム?」という解説がありました。今の時代のたとえばル・コルビジュエがつくったような近代的建築の居間に作品を飾るとしたらやっぱりしっくりくるのはこうしたモダンアートなのではないか、という解説に「なるほど!」と思いました。キュビズムは芸術のみの流れではなくて、世の中の時代そのものであるということです。普通のお宅にナポレオンの肖像画とかモナ・リザとかルーブル美術館にあるような絵が飾ってあると、もはや違和感を抱きそうです。それよりもむしろ自分だったら北欧アート的なやや抽象度の高い作品を素敵と感じる、それが今の時代なのでしょう。芸術はやはりその時代の反映であるということを今回も強く感じました。