昨日は夜8時頃に帰宅。その時に小澤征爾さんの訃報を知りました。ご高齢であられたとはいえ、とうとうこの日が。えーん 追悼と共に私自身の思い出を振り返ってみたいと思います。

 

小澤征爾さんが指揮されるコンサートを初めて聴いたのは20数年前でした。会場となった東京のコンサートホールで開演前にアナウンスがありました。小澤さんは会場に来る途中の電車駅構内で転倒され腰を打ったので椅子に座っての指揮となります、ということでした。「世界のオザワっていわれている人が電車で会場にくるの?」って驚いたことと、怪我をされても指揮をされようとしていたことがとても印象に残っています。アナウンスで「転倒され・・」まできいた時にもしかしたら出演中止に?って一瞬思いました。演奏が始まってから最初のうちは小澤さんは椅子に座って指揮されていましたが佳境に入ってきた頃から、ご自身の怪我を忘れているかのように椅子から立ち上がって前かがみではありながら立って指揮をされていました。非常にエネルギッシュな感じで。その場の空気に圧倒されるような感じがしました。

 

この時だったか別のコンサート?(記憶があやふや・・)では世界的なチェロ奏者・ロストロポーヴィッチ氏と共演されていました。お二人並んでの挨拶で小澤さんの大変気さくなお人柄を感じさせる話しぶりが印象的でした。普段はクラシックを聴く機会のない人にも音楽を、と東北のお寺の本堂でコンサートを開催されており、東京でのコンサート代収入をその分にあてるとのことでした。あのコンサートの日は休憩時間のロビーで有名人をたくさんお見掛けしましたが、ホール内で私たちの座席の少し前に前首相の橋本龍太郎さんが座っておられました。橋本さんと挨拶をされている方がいてよくみたらソニーの大賀前社長でした。(この方、オペラ歌手でした)。ロストロポーヴィッチ氏も含め、いまはみなこの世におられないことに年月の移ろいを思わずにいられません。

 

名古屋にいた頃には小澤征爾さんが指揮されるオペラ、「ラ・ボエーム」を鑑賞しました。舞台美術の美しさも今も記憶に残っていますが、小澤さんが現れた瞬間のあの空気の一変の仕方がいまでも脳裏に焼き付いています。そしてタクトを振り始めるとまるで何か降りてきた?って思うような鬼気迫るものがありました。「ラ・ボエーム」は若く貧しい恋人たちの物語です。女性のほうが結核で亡くなってしまいます。愛する人を亡くした男性の心が崩れ落ちる様子が見事に音で表現されていました。彼の慟哭が私の心に稲妻のように伝わってきました。反射的に涙がぼろぼろ出てきて止まりませんでした。

 

三重にいた頃は津市の文化会館が新日本フィルの地域拠点であったことから2年に一度くらいのペースで小澤さんが指揮に来られていました。新日本フィルの公演は津市では毎年あり、普段は5千円のチケット代が小澤さん指揮の年は1万5千円になっててプレミアムすご、って思ってました。いま思うと破格だったかも。病気をされた後は少し雰囲気が変わられたように思いましたがあの独特のオーラは素人目にもわかるくらいでした。本当にすごい方だったのだと思います。人生で何度か小澤さんが指揮をされた演奏に足を運ぶことができた幸運は大切な思い出です。ご冥福をお祈りしたいです。