ロシア専門家の佐藤さんとロシア通の政治家、鈴木宗男氏の対談本です。ロシア側からの視点というのが日本にいるとあまり報道されないこともあり、大変興味深く読みました。

 

なるほどと思ったのはアメリカがウクライナを支援しているのはウクライナを勝たせたいわけではなく、ウクライナを使って「ロシアを弱体化」させるということが目的という指摘。武器を供給して「人の手で戦う」というのがアメリカの論理であると。

 

対米追従があからさまだけれどウクライナに広島のお土産、必勝しゃもじを持っていったりする日本の外交は「偶然の産物」としてうまくいっているという佐藤さんの分析が興味深かったです。日本とロシアは地理的にお隣同士。これは絶対に動かせない条件であり、そのような国とあからさまに仲違いするのはとってもリスクが大きい。安倍さんが健在であれば日露関係は現在のように距離を感じさせることはなかっただろうとも。

 

最近はガザの報道が主流になってしまってウクライナでの戦争はあまり伝えられていないが、現地では日々人命が失われている現実を忘れてはいけない。太平洋戦争のときに敗戦濃厚になった日本が「一億総玉砕」という大本営発表の扇動的な言葉に突き動かされていきついた悲劇。これをウクライナに対して繰り返すことは避けなければならない。日本こそ最悪の事態を回避させるため両国を話し合いの場に着かせるべく尽力するべきであり、即時停戦こそ何よりであるということ。

 

鈴木宗男氏といえば悪の権化のように記憶している人がいまもいるかもしれないけれど、杉原千畝氏の名誉回復に尽力されたのもこの方でした。本当に日本の平和を願い活動されている立派な政治家だと思います。