6本目。
原題:One Child Nation
中国で1979年から2015年まで行われていた「一人っ子政策」についてのドキュメンタリー。中国出身の2人の女性監督ナンフー・ワンとジアリン・チャンが手がけ、一人っ子政策がもたらす深刻な影響を暴き出した。~映画.com~
2019年アメリカ映画。中国の一人っ子政策はよく知られたものでしたが、実情を知って衝撃を受けました。ひとりっ子政策が実施された頃の中国はまだ貧しくて、このまま人口が増えたら人民は飢えてしまう、という事情がありました。しかし、人権のない国ってここまでされるのかと驚愕!不妊手術や堕胎手術を無理やり受けさせられる女性たち、生まれてみたら女の子だったので捨てられる赤ちゃんたち。また複数子供がいる家庭で子供が親から引き離されたり、誘拐されて海外に大金で養子に出されたり。当時、二人以上の子供を持った親は罰金を科せられるということは聞いていたけれど、それが現地の人の給与水準を考えるとすごい大金だったりするんですね。堕胎手術だって胎児がまだ人間の形もない初期ではなくて、8か月目、9か月目の赤ちゃんなんです。ちょっと早産だけれど適切に処置したら普通に成長していくはずの赤ちゃん。そうした子たちの命を消していく。ゴミ捨て場にはビニール袋にくるまれた赤ちゃんが医療ゴミとして捨てられているんです。
恐ろしいと思ったのはそれを促進する当時のプロパガンダによる洗脳でした。「ひとりっ子の家は素晴らしい!」というフレーズがあちこちにあって、複数の子を持つ家庭は悪でしかない、みたいな価値観が広がっていくんです。もちろん心の中で賛成してない人達もいただろうけれど、NOといえない空気が醸成されていく。政策に従わざるを得なくなっていく。この映画を撮った監督は在米の中国人女性ですが、弟がいて、小さい頃はそれがとても恥ずかしかったと話していました。当の弟さんへのインタビューもありました。二人目ももし女の子だったら捨てられていただろうという身の上で、それについてとても複雑な表情を浮かべていました。彼の心中を想うとみている私自身も胸が痛みました。
「ひとりっ子が・・」のフレーズは一部修正されて「ふたりっ子が素晴らしい」となっている現在。「大日本帝国バンザイ」と叫んでいた日本が戦後、突然節操もなく「民主主義バンザイ」に切り替えた歴史を連想してしまいました。