現在の世界が直面する問題、コロナ後の世界について様々な分野の第一人者に行ったインタビューをまとめた一冊。作家や哲学者らが語る今の時代の様相が興味深いと思いました。彼らの鋭い感性で読み取った時代の微細な空気感、人の思考の変化など、それらが言葉にされていて。各インタビューは数ページずつで端的にまとめてあるので、内容的にもわかりやすかったです。

 

印象深かったのはコロナ禍が引き起こした現状は「戦争」に近いと指摘している世銀のエコノミストと寂聴さんの意見でした。多くの都市がロックダウンとなり、経済活動が激しく破壊された状況は戦争状態と似ていると。異常事態下で銀行の不良債権問題リスクが見過ごされてしまい金融リスクがじわじわ広がっている。今後どうなるのでしょう。また感染拡大防止のためにあらゆる行事や商業活動が中止・閉鎖となっています。法話や写経なども全てお休みとなり、寂聴さんはこれを「戦争時に負けないような不気味な歳月」と仰ってて。阿川佐和子さんも病室にいるお母様と感染対策のために面会できない日々が続いたそう。こうした事柄はもう日常になってしまったけれど、戦争時と比較されるほど異常な事態。いつ感染して自分や身内や友達が死んでしまうかもわからないというのは程度の差はあるけれど、戦時中、銃後にいた人たちが覚えた不安感、閉塞感と共通するところがあるのかもしれません。

 

また今回のウイルスは感染者の大多数が元気に動き回ることができ、死亡率が低いため、軽視する人たちもいるようですが、「危険はそこにある」と指摘する岩田健太郎医師の言葉も印象に残りました。大多数が元気だからこそ感染が短期間で世界中に拡大したということだと。

 

先がみえない現状。いろんな人たちの意見を知るのも大事かと思いました。