マルクス・ガブリエル氏へのインタビューをまとめた本、前回に続いて2冊目。今回知ったのは彼の驚異の生い立ち。6歳で「時間と空間は幻だ」と気づいて、12歳で哲学に出会ったという。現代の哲学を語る彼の言葉は知的刺激に富んでいて、もっと知りたい、という興味を満たしてくれるような内容でした。インタビュアーの方の質問の仕方も本質をついた感じでとても素晴らしいと思いました。若かった頃は、哲学とは閉ざされた世界、あるいは雲の上の世界で超頭のいい人だけが難しいことを考えている世界みたいに思っていましたが、実は私たちの日々の生活、思考と結びついていることを感じました。この本で印象的だったのは「哲学とは数字や経済よりもひとつ上の高次のレベルにあるべきもの」だということ。何が正しいかを判断する基準が数字だけや利益であってはならず、そこには哲学(倫理)があるべきだと。またマルクスは「宗教は精神のアヘンだ」といったけれど、今の時代、「科学が民衆のアヘン」であると。つまり私たちは科学を何より信じ、科学万能主義の時代に生きているということ。科学と科学万能主義は本来はっきりと区別されるべきものだということ、というところでした。今回も読みながらたくさん付箋を貼ったので、内容をしっかり吸収するためにもまた読み直していきたいと思います。

 

 

著者は東大卒のライター。最高峰の大学の闇をみるみたいな感じでした。「天才タイプ」以外の学生にとっては入ってから結構大変そう。要領のいいタイプはいろいろ得してそうだけれど、やはり地道な努力を積み重ねることができる人こそが大成するのかなと思いました。

 

 

前回のお二人の対談本が面白かったので再び。中野先生の発言からは科学者の視点からの常に冷静な事象の分析、ヤマザキマリさんの発言からは豊富な海外経験や歴史に対する深い造詣が感じられ、大変知的刺激に富む一冊でした。

 

印象的だったのはなぜ東京のような密な場所で感染が広がらなかった人がのかということについて。東京はものすごく人口がいる都市で密な生活をしているようではあるけれど、それぞれが異なるレイヤーで生きているからだ、という考察でした。確かに知らない人とは会話なんてしないし、家族の中でもそれぞれが個室を持っていてイタリアのように常に集まってハグし合ったりとかないなあと。

 

14世紀にペストで何千万という人が亡くなった後にルネッサンスが盛り上がりました。今回のパンデミックの後にも人々に蓄積している何かが爆発して新しい精神改革結びつく可能性があるかも、というところは大変興味深かったです。

 

また相手にとって嫌なことをはっきり言えるのが本来の民主主義であるとの指摘。日本では空気を読むことばかりではっきりものを言うと嫌がられてしまう、自らの欠点や汚点と向き合うことを避ける社会。このような社会には本来のコミュニケーションがないように思います。マルクス・ガブリエル氏の本でも「民主社会では法に従わない人がいることも認めなければならない」とありました。多様な人がいて多様な考え方がある。それを受け入れていくことが本来の民主社会の姿なのではないかと感じました。

 

以上読書メモ。