監督:是枝裕和
キャスト:福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之助
「そして父になる」の是枝裕和監督と福山雅治が再タッグを組み、是枝監督のオリジナル脚本で描いた法廷心理ドラマ。勝つことにこだわる弁護士・重盛は、殺人の前科がある男・三隅の弁護を仕方なく担当することに。解雇された工場の社長を殺害して死体に火をつけた容疑で起訴されている三隅は犯行を自供しており、このままだと死刑は免れない。しかし三隅の動機はいまいち釈然とせず、重盛は面会を重ねるたびに、本当に彼が殺したのか確信が持てなくなっていく。是枝監督作には初参加となる役所広司が殺人犯・三隅役で福山と初共演を果たし、「海街diary」の広瀬すずが物語の鍵を握る被害者の娘役を演じる。第41回日本アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本、助演男優、助演女優、編集の6部門で最優秀賞を受賞した。~映画.com〜
2017年。脚本も担当している是枝監督がこの映画を作ろうと思ったきっかけは「法廷は真実を追求する場所ではないんです」という知り合いの弁護士のひとことだったそうです。
犯人は30年前にも一度殺人を犯していて今回が二度目の殺人。今度はおそらく死刑判決が出るだろうと見込まれ、これが司法による三度目の殺人となる、という意味合いでタイトルが付けられたのか。ストーリー的にこういう手法は多くの映画で採用されているのかもしれないですが、黒澤明の「羅生門」みたいでした。最後まで誰が犯人なのか絶対的確証が得られないんです。それぞれの言っていることが食い違って真実はまさに「藪の中」。そんな中で出される判決は絶対の重みがあるという違和感。
役所広司さんの演技が際立ってました。その存在だけですごくやばい殺人者の雰囲気を出していました。役所さん演じる三隅はある場面までは他人の罪を被ってるんじゃないかな?って思わせるのですが、時に「自分は裁判官の権力に憧れていた。」というようなぞっとすることを言うんです。この役所さんがこの次にみた周防監督の映画では正義感ある有能な弁護士役になっていて、その幅の広さに感服しました。やはりすごい俳優さんなのだなと思いました。それと比べると誰の役をやってもだいたい同じ雰囲気になってしまう福山雅治さんとの差が浮き彫りになってしまう。

吉田鋼太郎さん、橋爪功さんなどベテラン俳優さんも脇を固めて見応えある作品でした。



監督:周防正行
キャスト:加瀬亮、瀬戸朝香、山本耕史、もたいまさこ、田中哲司、役所広司
フリーターの金子徹平(加瀬亮)は通勤ラッシュの電車で女子中学生から「痴漢したでしょ」と訴えられてしまう。まったく見に覚えのない金子は話せばわかってもらえると思い、おとなしく駅の事務室に行った。しかし、「ボクはやってない!」という訴えもむなしく、そのまま警察に連行されてしまう。その日から留置所暮しを余儀なくされた金子の無実を訴える戦いが始まった。~シネマトゥデイ〜
2007年。裁判員制度が導入される直前に制作された作品です。2時間半の間、まったく気を逸らせることなくどっぷりつかってしまう展開でした。随分前ですが冤罪で捕まった人の話を同僚としていたことがありました。その被疑者を100%クロとして扱っていた警察の態度に「もし自分が何かの冤罪で捕まったらどうする?
」と。法を守ってごくごく普通に健全に生きていても何かのきっかけで冤罪に巻き込まれてしまうかもしれない。その時どうやったら自分の身を守れるんだろう?って結構真剣に話をしたことを思い出しました。裁判での有罪率は99.9%。警察が逮捕し、検察が合理的な検証に基づいて出した訴えに対し、裁判官が「無罪」を出すことは滅多にないそうです。それは警察、検察を否定することになり、敵に回すことになる。自身の出世にも響くからという裏事情も描かれてました。私達は法の「権力」に守られていながらも、同時にそれは底知れぬ怖さを持つものだということを感じました。映画の最後のシーンはみていたこちらも全身脱力状態。



監督:遠藤尚太郎
豊洲への移転が予定されている東京都中央卸売市場築地市場を、東京魚市場卸協同組合の全面協力のもと、1年間以上にわたり密着したドキュメンタリー。日本の食文化を80年以上支え続けた築地市場は、仲卸の人々と料理人によるプロ同志の真剣勝負が繰り広げられ、食のプロから世界中の観光客までをも魅了している。本作では、1年を通じ表情を変えていく築地の姿や、四季折々の魚たちなど、これまでカメラが入ることがなかった築地市場のさまざまな顔が描かれる。監督は広告やミュージックビデオなどを幅広く手掛け、本作が劇場用映画初監督作品となる遠藤尚太郎。~映画.com〜
海外にもPRするためか英語でのナレーションでした。築地という世界無二の場所を支える人たちの姿を追ったドキュメンタリーです。かつて地方の有名な漁港近くで魚を食べた時にお店の人が「一番いいモノは全部築地にいっちゃうので・・・」というようなことを話してみえたのを思い出しました。全国から上質の海産物が集まり、それを見極め、それを買いにくるひとたち。そこで真剣勝負するひとたちの姿が活き活きと描かれていました。関西の和食は煮物、揚げ物など総合料理なのでそれを提供する人のことを「料理人」と呼び、東京は天麩羅なら天麩羅、寿司なら寿司、と専門料理を提供するので「職人」というのだそうです。東京はまさに職人文化の街でもあるのですね。