
山崎豊子先生作品。大阪船場を舞台にした作品群のひとつで
著者が「白い巨塔」など社会派小説に転向する前のものです。
船場独特の言葉遣いや習慣など非常に細部まで描かれていて興味深いです。
緻密な取材もさることながら
自身が船場に生まれ育ったという背景があるからこそ
ここまで詳しく書けるのかなと思いました。
約900頁、最初から最後まで延々と遺産相続のもめごとです。
人間の浅ましいところとか、えぐいところとかいっぱい書かれていて
人間観察の凄さになんだか感銘・・・(笑)
著者の筆力ゆえか、最後まで全く気を逸らさせません。
やっぱり睡眠不足になりながら二日間で読み切りました。(^-^;
最後は思わぬ大どんでん返しでスカッとします。
調べてみたら過去に何度か映像化されているようですね。

初宮部作品です。
借金、自己破産をテーマにしたミステリーです。
これも面白くて一晩で読んでしまいました。この日も睡眠不足に。(/ω\)
1990年代という時代設定、
この頃の消費者金融にはまる人々のことが描かれていました。
読みながら思ったのはどんな人でも何かのきっかけで足を滑らせたら
借金の世界に転落してしまう可能性って十分あるのじゃないかということ。
とても彼岸の火事、他人ごとと思えない。だからとても怖いと感じました。
あとこの小説は平成一桁が時代設定になっていますが
この頃の個人情報のダダ洩れ加減には驚きました。
役所にいって赤の他人が戸籍謄本をとれたり、
誰かもわからない相手に社員の個人情報を教えたりとかしていて。
それだけ悪さをする人も少なかったのかもしれないですし、
当時はこんなもの、という認識だったのかもしれませんが
今の感覚からすると随分杜撰で、これも怖いなと感じました。
借金のテーマそのものだけでなく僅か20年+α前の日本に
随分隔世の感を覚えました。"(-""-)"

書店に行くと健康本が山と積まれていますが、
ある本で良いと書いてあることが他の本では完全に否定されていたり、
お医者様の意見も本の数だけという感じ。
素人はいったい何を信じたら良いのやらと思わされます。
この本は腸内細菌について書かれているのですが
人の腸内環境(細菌)というのは数にして人間の細胞の数の何倍もあり、
その叢は人の指紋と同じくらい変化に富んでいるのだそうです。
腸内細菌の構成が違うと、体質もそれぞれ違ったりして
Aさんに効果がある食事法がBさんには全く役立たない
ということが往々にしてあるということになります。
生まれる時に母親から受け継ぐ腸内細菌も
その後の体質に結構影響を与えるとか
腸と脳の関連とか、いろいろ興味深かったです。

文芸春秋に掲載されたコラムをまとめた一冊。
大変読みごたえがあり、知的好奇心を刺激されました。
またいずれ読み返したいと思いますが印象的だったのは
キリスト教というものが人々に救いをもたらすほど素晴らしいものならば
どうしてこの宗教がローマ帝国に広がるまで
イエスの死から300年も要したのか?という著者の問いです。
ローマ皇帝たちの迫害かというと、実際、徹底した迫害が行われたのは
イエスの死後300年近くが経ってからのことだそうです。
著者はこれに対し、300年の間、ローマ人にはキリスト教が
必要なかったからといいます。
この期間、ローマ帝国は政治、軍事、経済全ての面で
うまく機能していたので
唯一無二の強力な最高神を欲するような状況ではなかったのだと。
そうしたものが失われた時に初めて人間は絶対的な強力な存在にすがりたいと
考えるようになった、、というのです。この意見には思わず膝を打ちました。
その見方を現在の世界に敷衍してみるとどうでしょう。
唯一絶対神を仰ぐ宗教が大変存在感を増して激突している状況です。
人類が大きな不安を抱えており、
絶対的な存在を求めている姿ではないかと思いました。
「宗教は人間が自信を失った時代に肥大化する。
宗教が人々を助け救うという本来の姿でありつづけるべきと思うならば
政治でも経済でも機能していなければならないから
これらの俗事を馬鹿にしてはならない」と。
大変考えさせられました。

東京大学の先生が中高生を相手に明治以来の4つの対外戦争について
質疑応答を行った記録。中高生といっても栄光学園。それも歴史研究会の生徒たちなので
非常に鋭い意見が出てきます。どんな経緯で日本が戦争を選んできたのか改めて
学び直すきっかけになる一冊でした。
読み終えて私自身が感じたのは、いま現在のように世界の経済がそこそこ
いいように周っている間は世界はなんとか平和をたもつだろうけれど
一端、このサイクルが破綻した時が本当に恐ろしく、
戦争もいよいよ現実的なものになるのではないかということです。
戦争というのは一部のひとが引き起こす事象というよりは
それを求める庶民の声というのが
地熱のようにどんどん広がり、突き進んでしまった結果ではないかと思うのです。

今月読んだ本は12冊でした。