
40代の男女の恋愛をテーマにした小説です。
今まで芥川賞をとる人の小説を読んでもあまり理解/共感できないことが
多かったのに、この作品はすごくはまりました。
著者は三島由紀夫の再来といわれているそうで三島文学ぽい美文です。
三島作品と違うのは現在自分が著者と同じ時代を生きていること。
小説の中に書かれた「今」の時代の空気をそのまま感じることができ、
より物語の内容を身近に感じ、登場人物に感情移入できる気がしました。
「人は変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。
だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。
変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。
過去は、それほど繊細で、感じやすいものじゃないですか」
というセリフが心に残りました。
今の生き方、考え方次第で過去の事実への解釈は変わるのですね。
もうひとつ、311の震災/原発事故の後、
日本国内で頻繁に目にした「絆」という言葉。
なぜか当時、私はこの言葉、言い回しに触れるたびに
心の中でとても大きな違和感を覚え、ざわつきを感じていました。
物語の中で主人公が
「絆」という言葉に縛(いまし)められた
殺伐とした躁(そう)状態には彼自身も疲弊した。
と感じている場面が書かれており、なんだか当時の自分の気持ちを
追体験するようでした。あの空気感をこうした言葉で的確に表現できるところが
やはり天才のなせるわざなのでしょうね。

新書なので一日でさらっと読んでしまえる長さだったのですが
内容をあとで思い返してみるととてもさらっとやり過ごせるものではないのでは、と思います。
先日の選挙の投票率の低さでも改めて感じましたが、
政治への無関心は知らないうちに国家が我々の生活から自由を奪うことに資するものではないかと。
その変化はすぐには感じられないから、
私たちは世の中の喧騒にその日その日の心を移し、委ねています。
この流れを仕方のないこと・・・とやり過ごしていると
世界はそのうちジョージ・オーウエルの描く 「1984」みたいな
超監視社会になってしまうのではないかと。
自由を享受できる社会は市民が主役になって初めて実現されます。
常に目を光らせて、民主主義に関わり続ける必要があります。
沈黙は圧政者や独裁者に力を与え、
市民が主役にならない世界では権力が濫用され、社会の大半を占める
弱者にはとても生きにくい世界となりそうです。

最近・・・
時間ができたのをいいことに、気学、方位学にハマっています。
何か興味をもつとのめり込む性格でもあるのですが
毎日4-5時間は気学のことを調べたり勉強したりしています。
なのでここにあげた本は最初のとっかかり。
世の中や人生をみる視点のひとつ、というスタンスで
学んでいるのですが、
この学問自体、気が遠くなるほどの時間をかけて
発展してきたものなので、たかが数週間、勉強した程度では
表面的なことしか習得できない気もします。
こういうのは知れば知るほど奥が深い、面白い、そして怖い。( ˘•ω•˘ )
