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先月に続き、今月も佐藤優さんの本を多く読みました。
気になる作家に出会うと、暫くはその著者の本ばかり読んでしまう癖があって・・ (^-^;
地元の本屋さんやアマゾンでいっぱい買ってしまい、
現在佐藤さんの著作だけで20冊くらい積みあがっています。

苦手な政治や外交分野のことについて勉強になる一冊でした。
「国策捜査」というものについて知ることができたように思います。
当時、マスコミで扇情的に報道された鈴木宗男事件というのは
その国策捜査であったこと。
それは佐藤さんの取り調べを担当した検事の西村氏がいう
「国策捜査とは時代のけじめをつけるために必要なんです。
時代を転換するために何か象徴的な事件を作り出して断罪するのです」
という言葉で説明されています。

「けじめ」とは何なのか。小泉政権になってから国家方針が転換されました。
内政的には「ケインズ型公平分配路線」から「ハイエク型傾斜配分路線」への転換です。
つまり国の方針が「公共工事や福祉を重視する政策」から
「格差拡大を促す新自由主義」へ転換されたのです。
そして外交においては「地政学的国際協調主義」から
「拝外主義的ナショナリズム」への転換。
つまりナショナリズムの強化です。

でも大っぴらに「日本経済を強化するために地方を切り捨てます」とか、
「公平に分配することをやめますが、貧困層に転落する人は運が悪かったと諦めてください」
とはいえないので地方を大事にする政策を進める鈴木氏を腐敗した悪の権化のように
つくりあげて、弾劾することで国民からもそれを受け入れられるようにしたという。
鈴木氏は地方の声を自らの政治力で中央に反映させたいと考える政治家であり、
また日本人が排外的なナショナリズムに走ることは却って国益を毀損すると
考える国際協調主義的な立場をとっていたそうです。
そこで鈴木氏という政治家を断罪することで、日本は新自由主義と排外的ナショナリズム
への転換を行っていきました。そして佐藤さんもそれに巻き込まれてしまった。

「一般国民の目線で判断するならばそれは結局、ワイドショーと週刊誌の
論調で事件ができていくことになるよ」という言葉も印象的です。
過去では田中角栄氏のロッキード事件とか、そういうのも国策捜査だったのですね。
しかし、佐藤さんは国策捜査自体が「悪」という考え方もされていません。
他の著書を読むとソ連が崩壊して世界の冷戦構造が崩れた中では
国家としてはこうした政策転換が必然であったと書かれています。

個人的には現在の格差問題、それは雇用の問題についても、地方と都会の間の
差を考えても、確かに社会的弱者は冷遇されているように感じます。
これが本当に最善の策だったのか、国家のためにはこれしか方法がなかったのかとか
いろいろ考えてしまいますが・・。まだまだ私の知識不足によるところもあると思うので
もうちょっとこの辺、いろいろ読んで考えてみたいと思います。

佐藤さんの目を通して外務省の人間関係や、検事、弁護士の方々の姿がみえてきますが
私は彼らの人物像の描き方を通して佐藤さんご本人の誠実さや品格の高さを感じました。
違う人が佐藤さんの立場に置かれてしまったら、その人の目に映る人々は
全く違う人物として描かれていたかもしれないなと思いました。

最後に戦時中に命のビザを発給して6000人のユダヤ人の命を救った
杉原千畝氏の名誉回復が成し遂げられたことについては
鈴木宗男氏の努力によるところが大きかったことも
忘れずに記しておきたいと思いました。

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著者が外務省入省2年目に留学したイギリスで出会った
12歳の少年との交流を描いた一冊です。
先月と今月の2か月で佐藤さんの著作を10冊ほど読みましたが
その中でもとても心に残る一冊でした。
小難しいことを多く書かれている他の著作に比べると
大変読みやすくて、一気に読了しまいました。(^-^;

著者は留学時、一般庶民家庭にホームステイします。
そこでグレンという大変聡明な少年と出会います。
外交官を父に持ち少年時代をイギリスで過ごしていた
佐藤さんの同僚(キャリア官僚)は
そこの家が購読している新聞を聞いただけで、その少年の家族が
労働者階級~中産階級の下のほうに位置することを
見抜いてしまいます。そして、その少年が抱えているだろう孤独感や悩みまで。

佐藤さんがイギリスに滞在していた期間、
少年と佐藤さんは二人でいろいろなことを話します。
その語らいの内容は互いの家族のことや学校のこと、友人のこと
恋の悩みや将来のこと・・・。
グレンはとても賢くて、小学生とは思えないほど深く物事を考え、大人びています。
日本であったらこんなに優秀な子ならきっと一流大学に進み、
将来は国を担う人材になっていただろうと思います。
でも、少年の姿を通して英国の厳然たる階級社会の壁がみえます。
そしてそれがその少年の将来を制限していることも。

二人で映画「戦場のメリークリスマス」をビデオで観て、
話し合うシーンがあるのですが、二人のその映画についての
深い解釈と会話がとても印象的です。
私も大学生の頃、ビデオで同映画を観ましたが、グレンのように
深く理解して受け止められていませんでした。
この映画を久し振りに観てみたくなりました。

ここでも佐藤さんの誠実で優しい人間性が透けてみえました。
そしてそれが故に「佐藤くんのそういうところが禍根をもたらす」と
予言する(というか忠告する)前述のキャリアの同僚。
今、グレン君は40歳くらいになっていると思います。
彼はどうしているのだろう・・とふと考えてしまいました。

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これも感想文を書こうと思ったのですが上記2冊の文章が長くなってしまったので
こちらは省略します。(^-^; 現在のように変化のスピードがとても速くて、
混乱していて先行き不透明な世界に生きている中では
著者の本は「今」という時代を読み解くのに大変役に立つような気がします。

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萩本欽一さんは現在73歳。
この4月から駒沢大学に入学して勉強されるのだそうです。
いつまでもチャレンジする気持ちを忘れない姿、とても素晴らしいことだと思いました。
いろいろな人の伝記やエッセイ等を読むと共通していることがあります。
伝記に残るような業績を残す人、あるいはそんなにすごい偉い人物ではなくても
自身が幸せと感じ、自分の人生に満足感を覚えて生きている人は
たとえ生まれた境遇に大きなハンデがあっても、
その人の「お母さん」がとても立派な考え、価値観を持った方なのです。
萩本さんの母親しかり。それを思うと母親の存在&役割は子供の人生に
計り知れない影響を与えているのじゃないかと感じました。