
「源氏物語」の現代語訳を読んでいます。(寂聴さんバージョン)
全部で10巻あり、毎月1冊づつ読もうかと思っていたのですが
読みだしたらこれが意外にも面白くて、
ついつい・・次の巻へ手が出てしまいました。
匂い立つような平安貴族の恋物語。
現代語訳でも日本語がとても美しくて、
淡々と流れるような文章が続きます。
ページを繰りながら現実逃避するような感覚を味わっています。
4巻まとめての印象になってしまいますが、
平家物語の小説を読んだ時以上に「諸行無常」を強く感じます。
光源氏と数多の女性たちとのかかわりは
女性としての視点からは共感しづらいです。
一夫多妻が当たり前だった当時の価値観を
十分に理解できていないこともあると思いますが、
なんともやるせない気持ちになることも多々。
でも昨年読んだ林真理子さんの入門書に書かれていたように
「恋をした女性の心はこんなふうに動く・・」という視点で読むと
ああなるほど、わかるかも、と思う箇所が多いです。
意外だったのは、夕顔の君や源氏の正妻だった葵上に生霊となって
祟った六条の御息所は奥ゆかしく、優雅でセンスの良い女性だったということ。
生霊になるくらいだからもっとヒステリックな女の人かと思っていました。
多分教養も十分にあった女性だから、嫉妬で取り乱したりするのは
いけないことと理性で抑え込んでいたのだと思います。
でも抑え込まれた妬みの気持ちがコントロールできない状態になり
身体から抜け出して他の女性に祟ってしまったんですね。(~_~;)
あと光源氏と禁断の仲になってしまった藤壺の女御。
この人は源氏の父親、桐壺帝の寵愛を受けていた女性です。
源氏は義理の母と関係を結んでしまい、子供ができてしまう。
とてもたおやかで優しい女性のイメージだった藤壺の女御ですが
桐壺帝の息子として生んだ子(本当は源氏との子)を守り、
そして次の天皇にするためいつの間にか非常にたくましく、
したたかな女性になっていくんですね。
女は母になるとやっぱり強いなと改めて思った下りです。
あと、恋愛物語だけにとどまらず政治的な話、
貴族の間での権力争いの構図が各所にみられます。
こういうのも昔、古典の授業で読んだ時はあまり気がつかなかったところです。
各帖に付けられた帖名も趣深いです。
日本語の意味も都度調べながら読んでいますが
たとえば「雨夜の品定め」が収められている「帚木」。
「遠くから見れば箒を立てたように見えるが、
近寄ると見えなくなるという伝説の木」のことなのだそう。
「帚木」は「空蝉」の前の名前。
彼女は身分は低いのに最後まで源氏のアプローチに落ちず、
源氏を拒み通しました。源氏にとっては最後までものにできず
未練の残る女性です。
雨夜の品定めの頃、近づいてはいけない女性、
藤壺への想いが募るばかりの源氏。
このタイトルに込められた意味を想いながら読んでいます。

源氏物語の続刊を書店に買いにいったら書棚にあったので
買って読んでみました。源氏物語が書かれた背景が説明されています。
平安時代は自分の意志を持たず、自己主張せず、周囲の言う通りになることが
上品な姫君の美徳と教育されていた時代でした。
一見、矛盾するようですが、その時代にあって源氏とかかわった
女性たちのもつプライドをテーマにした一冊です。
こんな読み方があったのかと新鮮ではありましたが
私はどちらかというと、時代背景の説明とか紫式部がこの長編小説を
書くに至った経緯などのほうが興味深く感じました。
当時、貴族の間では男の子より女の子が生まれるほうが喜ばれたそうです。
なぜかというとその子に教養を付けさせ美しく育て
入内させることができれば、そしてもし娘が今度は男の子を生んで
将来、天皇の位につけば、娘の父親は天皇の外戚として
非常に強い権力を得ることができたからです。
貴族に生まれた女の子は完全に政治の道具でなんだか可愛そう。
逆に紫式部の父親みたいに受領階級といういわゆる
地方知事の娘だったりすると、もっと自由があるんですね。
宮廷では貴族の人たちから身分が低いとみくびられることはあるものの、
受領は地方でいっぱい賄賂をもらうから、経済的にも豊か。
おかげで娘は存分に勉強もできるし、貴族のお姫様のように御簾の中に
閉じこもりきりというわけでもなく、割と自由に動き回れる。
彼女も父親の赴任地に一緒についていって
見聞を広める機会があったようです。
紫式部がこうしたバックグラウンドに育っていたことも
物語にいろいろ影響しているような気がします。
それから寂聴さんは紫式部はあまり美人ではなくて
自身の外見にコンプレックスを持っていたのでは?と書いてました。
紫式部は小説の中で不美人について描写するところは
非常に残酷でリアルに描いているけど、美人の描写はあまり丁寧にしない。
プライドが高くて美人が許せなかったのだと思う、という寂聴さんの
指摘は鋭いなあと思ってしまいました。
1月はあとこれだけ読みました。
大方、斜め読みですが・・・(~_~;)
