
前回の「Justice]が面白かったので、こちらも読んでみることにしました。日本語版では「それをお金で買いますか」というタイトルが付けられています。今回は英語の勉強も兼ねて原書で。
ここ10年~20年の急速なグローバル化の進展と共に資本主義はますます先鋭的なものになってきています。
そんな中ではこれまで考えられなかったものが売買の対象にされるようになってきました。たとえば臓器とか代理妊娠とか。
臓器の移植で助かる命はありますが、
お金が介在することでモラルの腐敗という代償が発生します。
つまり利益のために臓器を売ってしまったり、弱い立場の人間が売らされるような
状況に追い込まれたりするという。
資本主義が行き過ぎると人間の善の部分、道徳心、倫理観がどんどん失われてしまう。
それに対して警告を発する内容でした。
驚いたのはアメリカでは個人の生命保険さえ売買されている例があることでした。
自分が死んだ時の保険金を受け取る権利を売ることで
全く知らない第三者がその保険金を受け取ることになるというものです。
あと「今年はどの有名人が死ぬか」をオンライン上で賭けをするサイトがあることとか。( ;∀;)
死亡保険金の受取権利を「買う人」や「賭け金を払う人」は
対象となる人が死ねば利益を得るわけです。
人間の存在そのものに値段をつけて、
で、こういう人たちは自分の投資利益のために
その人の死を願うことになってしまうわけで。
現在、複数の生命保険を束ねて債券化して投資家に売るという
仕組みが検討されているらしいです。
金融工学を駆使してとても頭のいい人たちが
こういう金融商品を作り出すのです。
金融市場では2000年頃、複数の住宅ローンを束ねて債券化して販売する
手法が生み出されました。その後、より高い利益を求めて高金利の住宅ローンを
組み合わせた債券が販売されるようになりましたが
これが世界の金融市場を大混乱に陥れたサブプライムローンでした。
あの大混乱からまだ何年も経ってないのに、今度はこれで来ましたか?という感じで
なんだか言葉にできない不快感が。あー。(´・ω・`)
ちょうどこの本を読んでいた時に岐阜県の杉原千畝資料館を訪れました。
自分の生命の危険を冒してまで人々の命を救った杉原さんと
人の死を売買して多額の利益を生み出すようなシステムを作ってしまう人たち。
同じ時期に人間の両極端を見てしまった気がしました。
この2つのタイプの人間を分けるのは何なのかしら、と考えずにはいられませんでした。

300万部くらい売れているそうですから、既にお読みになった方も多いと思います。私もブログ友さんを始め、いろいろな方から薦められたのが、この作品を読むことになったきっかけです。
特攻隊員として戦死した祖父の生涯を調べるため
祖父のことを知る人々を追いかける姉と弟が、
その実像に迫っていくという物語です。
姉と弟が生きるのは平成、戦争が終わって60年目の夏です。
とても心が揺さぶられました。600ページ近い本でしたが週末の2日間で
読み切ってしまいました。そして読み終えてから数日間、余韻みたいなものが
ずっと心の中に残りました。
本書のあとがきにもそんなことが書いてあったように思いますが、
主人公の宮部さんの生き方には、他者への思いやり、というか
もっと大きな意味での「愛」を見出すことができるように感じました。
「自分さえよければそれでいい」と考える人が増えている昨今、
人間とは本来、そうあってはいけないもの、という大切なメッセージが
伝わってきました。心が乾きがちな今の世の中で本書がこれほど
人気がある理由がわかる気がします。
太平洋戦争について戦場に赴いた人物の視点で描かれています。
この本を一読することで戦争の流れについて知ることもできると思います。
ショックだったのは特攻隊員として亡くなった方々が
戦時中は軍神と崇められていたのに戦後になったとたん、
戦犯扱いされ、遺族も大変な誹謗中傷を受けたという話。
大衆心理の愚かさ、怖さを感じました。

作者は「永遠の0」と同じ百田尚樹さん。
2013年本屋大賞を受賞した作品ということで
書店では一番目立つところにおいてあります。
本屋大賞というのは書店員が一番売りたい本として選ばれる賞のようです。
この作品についても周りの評判がとても良かったのでハードカバーだけど、買って読んでみました。
出光興産創業者の出光佐三をモデルに、「日章丸事件」に材を取った歴史経済小説です。
読みだしたら止まらなくて、本当に毎晩、「今日はここまで」と区切るのが大変でした (>_<)
こちらも数日で読了。 なんだかリアリティいっぱいで、かつ爽快で感動の大きい小説でした。
主人公の国岡鐵造、つまり出光佐三さんの経営者としての仕事人生には大変感銘を
受けました。こんな立派な経営者のことを今まで知らなかったことを本当に惜しかったと思いました。
人間尊重の経営の在り方には学ぶべきことがたくさん詰まっているように思いました。
この会社はタイムカードも、定年もない会社だったそうです。
社員を家族のように大切にし、信頼しているからそういうのは必要ない、という方針で。
鐵造の視線の先は自社の利益を遥かに越え、世のため人のため、
というとても遠いところにありました。
社員たちも経営者の考え方、生き方に感化されて、一人ひとりが
とても立派な社員に成長していくところなど、心に響く場面がたくさんあります。
晩年に過去を振り返って
「苦しくて苦しくて、この苦しみから逃れるには死ぬしかないと思っていた」
という鐵造の言葉から栄光の裏にある数えつくせない
経営者としての苦労ががあったのだとも思いました。
あと若き日の主人公に自宅を売ってまで資金を提供した日田重太郎さん。
彼にお金を貸したのではなくあげたのです。
事業に失敗したら一緒に乞食をしようや、と言って。
「永遠の0」から続けて読みましたが、両作品は
「人間にはこんな美しい部分がたくさんある」ということを教えてくれるものでした。
またこの作品は「働くことの尊さ」を改めて気づかせてくれるものでもありました。
それから「海賊と呼ばれた男」の一場面で、ほんの一瞬、
鐵造さんが「永遠の0」の宮部さんと同じ空間を共有する場面がありました。
読まれた方も覚えてらっしゃるかもしれませんが
ここ、なんだか印象に残りますね。(#^^#)