こちらも読書の記録として・・
 
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「ルポ 貧困大国アメリカII」 岩波新書 堤未果
 
前作がとても衝撃的な内容だったのでこれも続けて買ってみたのですが
読む機会がないまま3年が過ぎてしまいました((+_+))
前作の感想の記事はこちら。
 
オバマ大統領の一期目の就任まもない2010年1月の発刊なので
一部の情報が古いところがありますが、今回も大変驚くようなことが多く書かれていました。
これがアメリカの現実の一面だとしたら、
それを追うように社会が変化している
日本の将来を危惧せずにはいられないと感じました。
 
前作では戦争請負会社の存在について書かれていました。
まるで工場へ派遣社員を送り込むかのように
戦場へ戦闘員を送りこむ会社があること・・。
日本にいる身では戦争に派遣されることは
あまり現実的ではありませんが、
こちらの本では教育や医療という現場で起こっていることが書かれています。
市場原理がこれらの分野に導入された結果、
多くの人が破産に追い込まれ、人間としての尊厳を奪われ、とても悲惨です。
自分にも起こりうるかも?という、もっとリアルなものがあり 
行きすぎた資本主義の恐ろしさを感じました。
改めて、教育や医療といった分野には
市場原理を導入するべきではないと思いました。
 
学校であれ、病院であれ、資本主義の世界では
営利追求がその第一目的であり、
満足させるべき相手は学生や患者ではなく、
「株主」にほかならないからです。
このロジックの下ではお金がなかったら、
もはや人間として扱ってもらえないのです。
 
そしてこの本の中で一番ショッキングだったのは最後の章にあった
「刑務所」が一大労働市場になっているという事です。
刑務所に業務を委託する企業が結構あるそうなのです。
日本でも刑務所に収容されている人たちが作った家具などが
売られているのをみたことがありますが、
ここの国では電話交換手などのような
サービスまで刑務所に委託されているとか。
 
インドなど第3世界に委託するよりもコストが安く済むし(時給40セントくらい)
なんといってもネイティブだから訛りもない。
刑務所の中では一番楽なデスクワークになるので、
他の作業に回されないよう、この受け持ちの人たちは
すごく一生懸命仕事をするそうです。
そして彼らは雇用保険も不要だし、組合も作らないからストもしない。
 
それから、この上なく非情なのは、時給10セント~40セントしか稼げない囚人に
刑務所は毎日10ドルくらいを宿泊や食事の費用として請求するそうです。
だから刑期を終えた人は出所する時に莫大な借金を背負ってしまうという。
 
そしてこの刑務所ビジネスは利益率が非常に高く「人気急上昇の投資先」として
投資家たちの注目を集めているということが書かれていました。
もはやブラックユーモアとしか思えません。(*_*;
節操も何もないですね。
 
この本を読んでいて大変印象に残ったのは医療破産した女性の言葉です。
「一番怖いものはテロリストでも大不況でもなく、
いつの間にかいろいろなことに疑問を持つのをやめ、
気づいたときには声すら自由に出せない社会が作られていった」という部分です。
我々日本人はこれを本当に他人ごとと思えるかどうか・・・(><)。
 
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「チーズはどこへ消えた?」 扶桑社 スペンサー・ジョンソン

先日ブックオフへ本を売りに行った時に買ってきた一冊です。
「チーズ」とは私たちが人生で求めるもの
(仕事、家族、財産、健康、精神的な安定などの象徴)。
「迷路」とはチーズを追い求める場所のこと(会社、地域社会、家庭)
1時間もあれば余裕で読めるわかりやすい物語ですが
少し前に読んだ「失敗の本質」にも通じる、
考え出すと大変深くなるテーマでした。
チーズを見つけたからといって、そこで満足して、怠慢を起こしてしまったらいけないのです。
傲慢な気持ちが、起こり始めている変化の兆しを見逃すことにつながってしまいます。
変化が起こった時にどのような対応をとるべきか、いろいろ考えさせられます。
普段の心の持ちようについて、心を引き締めてくれるような内容でした。
変化と遭遇した時にそれを恐れないことも大切ですね。
 
 
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「ヨーロッパ陶磁器の旅 イギリス編」 中公文庫 浅岡敬史
 
2週間ほど前に久しぶりに美術館にいって
たくさんの美しいものを鑑賞してきました。
普段、グレーの殺風景なオフィスに身をおいているせいか
展示されている美術品の明るい色彩がとても新鮮に思え、
心も豊かになるような気がしました。
 
それで今回はきれいな写真の多い本を・・と
本棚を探していたらこの本がまだ未読のままだったので取り出してみました。
ヨーロッパ各地の陶磁器を紹介した内容で、今回読んだのは「イギリス編」。

ウエッジウッド、スポード、エインズレイ、ロイヤル・ドルトン、バーナード・リーチなど
イギリスだけでも名窯がたくさんあります。
ローラ・アシュレイは私はファブリックしか知らなかったのですが
お皿などの陶磁器もあると知って意外でした。
 
これら陶磁器窯の多くは良質の土が採れるストーク・オン・トレントにあるそうです。
ビクトリア朝の繁栄を支えたこの街の隆盛の裏では
過酷な労働条件の中で煤煙の中で苦しむ人々の姿が
あったことも改めて知ることができました。
 
興味深い雑学もいろいろ書かれていました。
例えば「ウィスキー」はスコットランドの先住民「ケルト人」が使っていた
ゲール語の「ウスケボー」に語源があり、
「生命の水」という意味を持っているそうです。
生命の水・・とても良い響きですね(*^_^*)
 
またあの進化論のダーウィンはウェッジウッドの創業者ジョサイア・ウェッジウッドの
孫だったということもこの本で初めて知りました。
 
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きれいなものは心を癒してくれるように思います。(*^_^*)
美しい写真と共に楽しんで読める内容でした。
 
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「人生心得帖」 PHP文庫 松下幸之助

経営の神様松下幸之助さんが90歳を前にして書かれた一冊です。
「人生の航海術」、「磨けば光る人間の本質」、
「まず信頼すること」、「感謝する心」、「怖さを知る」
「人情の機微」・・・どの章も短く簡潔に書かれていますが
とても深い含蓄のある内容だと思いました。
90歳を前にしてなお「人生修業の途中」と語れるなんて
やはりそこが凄いと思いました。
 
印象的だったのは「人間としての成功は自分に与えられた天分を完全に生かしきる」、
という箇所でした。 自らに与えられた天分を完全に活かし切り、使命を遂行すること、
これが成功だという考え方には大変共感するところがありました。
自分の天分が何かを知り、それを生かし、社会に還元するところに
本当の喜びがあるのではないでしょうか。
日本の教育も本来はここに焦点を当てるべきではないかと思います。
 
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