DVDで観ました。
4人の子供を持つ母親が新しくできた
恋人の元へ走ってしまい、
残された子供達だけで暮らしていくという話です。

主演の男の子がカンヌ映画祭で主演男優賞を
受賞して報道されていたから
映画の題名だけは知っていたのだけど
最後まで観て、「誰も知らない」ことって
ああ、こういうことだったのか・・と思う映画でした。

子供達の父親は皆、違っていて
出生届けも出してないから
学校にも行ってない。
あの子供達は
社会的には存在してないということなのです。

ある日、母親は長男に妹や弟をよろしく、と
現金だけ渡して戻ってこなくなってしまう。
自分の幸せだけのために子育てを放棄してしまう。

「私だって幸せになっちゃいけないの?
悪いのはあんたのお父さんじゃない!?」って
息子に投げつけた母親の言葉が強烈に響きました。
彼女から「母親」の部分は完全に消えて
ただの「女」になってしまってる。

置き去りにされた子供達は自分達で暮らすのだけれど
お金も次第に無くなり、電気も水道も止められて
普通の生活ができなくなってしまう。
淡々とストーリーが進んでいって
最後に一番下の妹が椅子から落ちて
死んでしまう。
兄は「妹に飛行機を見せてあげたいから」と
冷たくなった妹をスーツケースに入れて
友達と電車に乗って空港の近くに運び
そこに穴を掘ってケースごと埋めてしまうのです。
兄と友人の女の子は、その後
ずっと二人で轟音を立てて発着する飛行機を
眺めていて、朝方に土だらけで
汚れた姿で電車に乗って帰る・・

そこで話が終わります。
とても痛ましく哀しい話でした。
本当にそのことを「誰も知らない」。
涙が出るとか、感動するとか、そんな類の感想は
もてませんでした。
心の中にすごく乾いたものを感じたというか。

この作品については先日、友人が教えてくれたのですが
実際にあった話を元にしているそうです。
20年くらい前に起きた子供置き去り事件というやつで
映画では妹が椅子から落ちて事故死してしまったということに
なっているけれど
現実には、買い置きしてあったカップラーメンを
妹が食べてしまったので、兄とその友人達から
暴力を受け、それで亡くなってしまったのだとか。

映画を観て、さほど衝撃を受けなかったのは
最近、日本のあちこちで現実にこの類の事件が多すぎて、
なんだかその中の一例を観ているだけという感じがしたからかも。

好きな人ができると、子供のことを平気で捨てる
母親っていうのもいるのだろうか。
いるんでしょうねぇ。
現実にあったことなんだし。
それぞれの子供達の父親も余りにも無責任。
それに一番怒りを感じます。

お母さんが戻ってこなくなって
それでも一番上のお兄ちゃん以外は
お母さんのことをずっと信じて
待っているのです。
母親の愛情に飢えて飢えて、ずっと
最後まで母親を求めている。
幼稚園や小学生くらいの年齢の子供にとって
親は絶対的な存在なはず。

それなのにこの映画の中に出てくる
母親も父親も無責任な人ばかりで・・。
もう最低 (T.T)

ひとつの命をこの世に生み出すことは
何事にも替え難い重大な責任を伴うものなのだと思うし
子供を守ってあげるのは大人の義務なのに。
じわじわと何日も後をひく映画でした。