みんなへつうしん  4月16日(木)

 

今日は,昨日に引き続き,

2.「このウイルスは肺でも増える」ということ

 について紹介していきます。

 

***ここから

 

「新型コロナウイルス」についての基礎知識・シリーズ④
中一夫さん(東京・中学校)の資料より

 

やっかいなことの2番目として、

この新型ウイルスは「肺でも増える」ということがあげられます。

ただし、ここはまだウイルスの性質が十分に判明していないので、

以下の説明にも間違っている部分もあるかもしれません。

 

もともとのコロナウイルスは

ふつうの風邪のウイルスで鼻で増えます。

たいていのみなさんは

一度はコロナウイルスのかぜにかかったことがあるはずです。

 

ところが、今回の〈新型〉コロナウイルスは

もっと奥の気管支や肺というところでも増える場合があります。

軽く済む場合は、肺までいかないで

鼻とかのどあたりで止まっている場合ではないかと思います。

 

肺でウイルスが増えて何が困るかというと、

それは「肺」の働きそのものに関わっています。

肺は酸素と二酸化炭素の交換を行う器官で、

ここで外から取り入れた酸素を血液中に送り、

不要な二酸化炭素を受け取り外に出していきます。

血液に入った酸素は全身に送られ、

全身で取り込んだ栄養分(ブドウ糖)を燃やして

エネルギーを取り出す働きに使われます。

酸素が送られなかったら、

いくら栄養があってもそこからエネルギーが取り出せなくなり、

身体が動かなくなります。

電気のブレーカーが落ちたら、

全ての電気製品が止まり停電で真っ暗になるのと同じように、

酸素が行かなくなったら身体の全ての動きが止まってしまいます。

 

そのような大事な働きをしているのが肺です。

その肺の細胞がウイルスの拡大により

どんどん殺されて行ってしまったら、

身体に酸素が運べなくなります。

だから、呼吸困難などの症状が起きます。

それは酸素を充分に体に送りこめなくなっている状態を示します。

 

インフルエンザなどでも肺炎が起こることはよくありますが、

インフルエンザウイルスは肺にはいかないので、

肺炎の原因はインフルエンザによって

体が弱って抵抗力が低下しているために、

肺に入った細菌が増えやすくなるからです。

そういう肺炎には、

細菌を殺す「抗生物質」が使えますから、

それで回復することが多いです。


けれども、今回のような「ウイルス性肺炎」には、

基本、薬がないのです。

ですから「酸素を送れるようにする」

という対処療法しかなくなります。

それで「酸素吸入」を行ったり、

さらに重い場合は「人工心肺」を使って、

器械で血液に酸素を入れて体に戻してやり、

肺を休ませます。

肺が呼吸の働きをフルにしながら

ウイルスとも戦うというのはたいへんなことですから

少しでもウイルスとの闘いを楽にしてあげるわけです。

 

そういう治療が可能になるには、

酸素吸入がどんどんできなければなりませんし、

特に「人工心肺」が無ければどうにもなりません。

感染爆発でたくさんの死亡者が出ている場所は、

そういう器機が決定的に不足してしまうから、

重症の患者を助けられないのです。

重症であっても、

そういう器機を使って手厚く看護できれば、

回復の可能性が高まります。

その意味で、「医療崩壊」になっては絶対にいけないわけです。

 

ちなみに、基礎疾患がある人や

高齢者などが重症になるというのは、

すでにほかの所で体が戦っていたり、

うまく動かなかったり、

そもそものウイルスと闘う力が弱い状態にいるからです。

そういう人の体が、

新たに爆発的に増えるウイルスと闘うのはたいへんで、

しかもその戦いの場が体全体に関係する「肺」だからです。

 

***ここまで

 

ここが,今回のウイルスの最もおそろしいところですよね。

さすがのインフルエンザでも,肺までは行かないわけです。

ところが,このウイルスは,

肺に入ったら,そこでも増えちゃう実力がある。

 

普通の肺炎だったら,

相手は比較的大きな生物「細菌」なので,

人類が闘いの中で発明してきた「抗生物質」という武器があるけれど,

ウイルスにはそれがない。

しかも,小さいから,

ある程度増えないと「自覚症状もない」のだそうです

(レントゲンでもわからなくて,CTを撮ってみて初めてわかるそうです)。

ところが,増えるときには倍・倍・倍…と増えていく

「指数関数的増加」なわけですから大変です。

症状が出たときには遅くて,

そこからも毎日,倍・倍で悪化するわけですからね。

 

そして,場所が「肺」というのは最悪です。

「薬がないから,休ませて自分で回復するしかないのに,そこが休んだら死んでしまう」

という矛盾の中でのたたかいを強いられます。

 

みんなにたとえるなら,

「熱があって立っているだけでもフラフラなのに,

学校で勉強し続ける中で,なおかつ元気にならなければならない」

という状況です。

まさに,「人工心肺」は,「保健室で休んでていいよ」という状態です。

 

でも,志村けんさんなどは,

その「人工心肺」で肺を休ませてあげても,

回復できずに亡くなってしまいましたね。

それくらい,今回のウイルスは人類にとって強敵なわけです。

 

ひとりひとりが,

「いま,そういうウイルスとの闘いの歴史の中にいるんだ」

と思って行動することができたらいいな,と思っています。

 

明日はいよいよ最終回

3.「そのウイルスが今まで存在しなかった〈新型〉である」

について紹介します。