当ブログでは、時間外労働に関する裁判例を紹介します(つづき)。
3(一)反面,関西支社で時間外労働(残業)が常態化していたことは,第一審被告の内部資料(〈証拠略〉)や,証人隅崎守臣の証言などから明らかである。他の者と同一の業務に従事し,チームを組んで仕事を行うことも多いのに,上長の立場にあった第一審原告横野,同小倉らのみが時間外業務を行わないとか,第一審原告斉藤,同萩原政彦,同小黒,同久保田についても,タイムカードが提出されている部分では時間外業務が常態化しているのに,タイムカードが提出されていない部分や,その記載が免除されている部分では,これがなされていないなどとは考えられず,いずれについても,正確な労働時間の把握は困難であるものの相当程度時間外労働(残業)がなされていたことが明らかである。
(二)しかも,タイムカードを管理し,かつ,第一審原告横野らにタイムカードを打刻しなくてもよいとの扱いにしたのは第一審被告である。にもかかわらず,時間外労働(残業)がなされたことが確実であるのにタイムカードがなく,その正確な時間を把握できないという理由のみから,全面的に割増賃金(残業代)を否定するのは不公平である。
 なお,関西支社では隅崎守臣の突然の解任をきっかけとして,第一審原告らが一斉に退職して混乱を生じ,行方の分からなくなった書類があること(弁論の全趣旨),さらには,タイムカードの欠けている部分が一部である点等に照らすと,これらのみを故意に提出しないということは通常考えられないから,第一審被告が証明妨害目的でこれらの提出を拒んでいるとはいえず,何らかの原因で紛失したものと認められるが,右紛失の責任を第一審被告のみに帰することはできない。
(三)ところで,時間外労働(残業)時間は変動するものであり,個人差もあるから,その推計は容易ではない。しかし,第一審原告横野及び同小倉が,同人らが主張している労働時間(原判決別冊1参照。)の2分の1の時間外労働(残業)にも従事していないなどということは,原判決別紙4(訂正部分を含む。)に現れた他の第一審原告らの労働状況に照らしても考えられない。また,第一審原告斉藤,同萩原政彦,同小黒,同久保田についても,タイムカードが存在し,かつ,タイムカードを打刻していた当時の状況などと対比すると,その主張している労働時間(原判決別冊1参照。)の2分の1の時間外労働(残業)にも従事していなかったとは考えがたい。
(四)以上に基づき,右の者らの前記四2(六)の期間の労働時間について,これらの者が主張するそれぞれの期間の時間外労働(残業)時間(原判決別冊1参照。)の2分の1について労働したものと推計し(なお,推計の性格上,1時間に満たない部分は切り捨てる。),1989年5月分以降の第一審原告らの時間外労働(残業)時間数を整理し直すと別紙2〈略〉の1ないし16記載のとおりとなる。同別表からも明らか(ママ)とおり,右推計部分は,他の者,あるいは,タイムカードの打刻が行われていた部分との対比から明らかなとおり,極めて控えめになっているので,実労働時間がこれらの部分を下回ることは考えられない。
七 出張日当及び会議手当を控除すべきではないこと
 その理由は以下に付加する外,原判決85頁9行目から87頁3行目(理由七4)記載のとおりであるから,これを引用する。
(一)出張日当について
(1)第一審被告の就務に関する各種規程集(〈証拠略〉)によれば,出張日当は宿泊を伴う場合が原則であるが,日帰りの場合でも片道100キロメートル以上で出張時間が8時間以上の場合には半日当を,10時間以上の場合には全日当を支給していた事実が認められる。しかも,海外出張の場合には国内出張の場合に比べて,2倍を超える日当が支払われることになっている。また,時間外労働(残業)等の規制の対象外の取締役部長等をも支給の対象としている。
(2)右(1)の事実によれば,出張日当は労働時間という観点よりもむしろ遠方に赴くことを重視しているといえるから,時間外労働(残業)に対する割増賃金(残業代)の性格を持つとするには疑問がある。したがって,これを割増賃金(残業代)から控除の対象とすべきではない。
(3)第一審被告は出張日当が出張に伴う長時間拘束の対価もしくは補償の意味を有する旨主張し,八木啓充は陳述書(〈証拠略〉)でこれに沿う陳述をする。しかし,前記(1)でみたとおり,出張日当は時間よりもむしろ距離等を重視して決められているので,時間外労働(残業)に対する割増賃金(残業代)とみることには疑問がある。

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