また美和子に離婚してと迫られて喧嘩でもしたのかなぁと思った。

美和子も杉原さんをわかっていないなぁと。


杉原さんは以前に言っていた。

「女って、独占欲が強いから困る」

都合のいい事を言って…とその時私は思った。


そのくせ、私が他のゴルフ友達おじさま達と杉原さん抜きで仲良く話をしたりするだけで「みっともない」と怒った。



ある日、杉原さんのゴルフ&飲み友達の山下さんからゴルフに誘われた。


「他に誰が一緒ですか?」と聞いたら、「池田さんだよ」と言われた。


池田さんは杉原さんとは友達ではないからと私はゴルフに行く事にした。


山下さんは、杉原さんとは違って穏やかな紳士。
奥さんを交通事故で亡くしてからゴルフを控えていたがまた復帰した。


山下さんはゴルフも上手くて物知りで私は父親のように慕っていた。


今まで、杉原さん抜きでゴルフに行く時は必ず杉原さんに相談して了解をもらってから行っていた。


もう、了解を得る必要もない。


当日はゴルフ日より。

新しいゴルフウェアを着て待ち合わせたゴルフ練習場に行った。

山下さんと池田さんはすでに来ていて、軽く練習していた。

まだ時間もあるし、コーヒーを飲んでからゴルフ場に行く事になった。


三人でコーヒーを飲んでいると杉原さんが来た。


まずい。
逢いたくない。
顔を見たくない。
と思ったが、杉原さんが近づいて来る。


軽い感じて「さぁ、久しぶり。元気そうだな。今からゴルフか?」と聞いて来た。


「はい」とだけ答えた。


杉原さんが山下さんに「三人?俺も行っていい?」と言った。


心の中で、
「山下さん、お願い。OKしないで!」と私は叫んだ。


山下さんは、
「いいよ」と答えた。





それでも杉原さんの事を考えない日はなかった。


「さぁ、おまえなら出来る。頑張れ」
仕事が忙しくてめげそうな時の杉原さんの言葉。
今でも思い出す。


見たくないものは見ないようにしよう、とストーカーみたいな行動をするのを止めた。


周りから入って来る余計な話も聞かないようにした。


杉原さんからまた電話があった。
ちょうどメールを入力中に着信し、出てしまう形になった。


久しぶりに聞く杉原さんの声。


「さぁ、やっと電話に出てくれたな」


「出るつもりはなかったけど携帯電話さわっていたから仕方がなかったの。あの時、もう二度と私に電話をしないでって言ったでしょう?」


「俺、どうにかしてたんだ。謝りたいと思ってた」


「今さら…」


「さぁが怒るのも無理ないけど…俺、おまえが好きなのは変わらない」


「また嘘?もう嘘はいいって」


「嘘じやない。今まで付き合った女の中で誰が一番好きかと聞かれたら、迷わずさぁって答えるよ」


「…」


「さぁ…もう一度逢えないか?」


「逢いたくありません。あなたは私が好きだった頃のあなたではなくなっていますから」


「たのむよ。さぁ、また一緒に食事したりゴルフしたり旅行に行ったりしないか?」


「出来ません。私は前を向いて行きたいんです」


「とにかく、もう一度考え直してくれ。また電話するから出てくれよ」



また、美和子と喧嘩したのだろうか…



次の日の朝、杉原さんからメールが来た。
「昨日は電話に出てくれてありがとう。また連絡します。よろしく」






「最近、杉原さん来られないけど、お元気なの?」


「元気みたいよ。やっぱりここには来てないの?」


「最近は全然。さぁちゃんとしか来ない店って言っておられたし」


「そう…」


「何かあったの?」


「うん、ちょっと」


何かを察したのだろう、ママは「今日はもう閉店。カラオケしようか。順番で歌おう」と言った。


普段は誘われた時のカラオケボックス以外では歌わない私。
今日は歌おうか。
私の順番になった。



何を歌おうか…
MISIAのEverythingにした。



また思い出して、あの人と笑い合うあなたを…


愛しき人よ、悲しませないで、泣き疲れて眠る夜もあるから…


優しい嘘ならいらない、欲しいのはあなた…



私にぴったりの曲だった。


「さぁちゃんの歌、初めて聞いた…とっても上手なんだね」ママが言った。

そして「辛いんだね」とも。