【映画】異人たちとの夏~秋吉久美子と名取裕子の姿を観るだけでも価値あり | 鶏のブログ

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【監督】大林宣彦

【脚色】市川森一

【原作】山田太一

【英題】The Disincarnates

【制作国】日本

【上映時間】108分

【配給】松竹

【出演】風間杜夫(原田英雄)

    秋吉久美子(原田房子)

    片岡鶴太郎(原田英吉)

    名取裕子(藤野桂)

【公式サイト】

 

今週末4月19日から公開されるアンドリュー・ヘイ監督の「異人たち」。同作は山田太一原作の「異人たちとの夏」を原作にしているものですが、既に1988年に大林宣彦監督が映画化しており、同じ原作を持つ2本の映画の相違点はどのようなものなのか確かめるため、本作をU-NEXTで鑑賞しました。
 
1988年と言えばバブル真っ盛りの時代でしたが、主人公の原田英雄(風間杜夫)は妻と離婚し、子供も妻側が育てることに。30年前、12歳の時に両親を交通事故で亡くした原田は、正真正銘の一人ぼっちになってしまう。さらに仕事でも思い通りに行かなくなり孤独感に苛まれる。そんな中、同じマンションの3階に住む妙齢の女性である藤野桂(名取裕子)が原田の部屋を訪れ、「一緒に飲もう」と誘う。しかし嫌々病に陥った原田は断る。
そんなやり取りがあった後、実家があった浅草に行くと、なんと30年前に亡くなったはずの父親(片岡鶴太郎)に出会う。父親に誘われるままに実家に行ってみると、母親(秋吉久美子)の姿も。あまりの懐かしさに、実家に通い詰める原田。一度は断った桂の誘いにも乗るようになり、2人は男女の関係になっていくが、桂は自分の胸は見ないで欲しいと言う。やがて原田はやつれ始め、周囲の人は心配する。
 
要するに両親も桂もこの世のものではなく、そんな「異人たち」と過ごした「夏の物語」なのですが、実家で両親と団欒するシーンは、中々泣けました。幸いにして私の両親はいまだ健在ですが、原田と同じ境遇であれば、自分の健康を削ってでも両親に会いたいと思うのは自然ですし、しかも両親ともに自分があの世の存在であることを知って息子に会っているというところも切なすぎるお話でした。
桂の方は、原田が誘いを断った日に自殺したことになっていた訳ですが、こちらはちょっと微妙な気も。何せ同じマンションで自殺を図った訳で、そのことを原田が知らないというのは不自然極まりないところ。この辺りはもう一工夫あっても良かったように思いました。
また、終盤になり原田の体調がどんどん悪化していき、顔が怪物のようになってしまいますが、このメイクが安っぽい感じで、こちらももう少し上手にやって欲しかったなと思わないでもありませんでした。
 
とはいえ、主演の風間杜夫以下、30年以上前の若かりし頃の姿を観ることができ、中々感激しました。特に母親役の秋吉久美子と、恋人役の名取裕子は、超絶に美しく、色気溢れる姿で登場し、この2人を観られただけでも本作を観た甲斐がありました。また片岡鶴太郎は、本作での演技が評価されて、それまでのコメディアン路線から役者路線に転換していくきっかけになったそうです。ボクシングからヨガをやるようになった鶴ちゃんですが、昔のふっくらした感じの姿に、懐かしさを覚えました。
 
そんな訳で、「異人たち」の”予習”で鑑賞した本作の評価は、★4とします。
舞台をイギリスに移し、桂役を男性に替えたという同作が楽しみです。
 

総合評価:★★★★