【映画】ウィ、シェフ!~移民との融合の可能性をユーモアを交えて語る作品 | 鶏のブログ

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【監督】ルイ=ジュリアン・プティ

【原題】LA BRIGADE/KITCHEN BRIGADE

【製作国】フランス

【上映時間】97分

【出演】オドレイ・ラミー(カティ・マリー)

【公式サイト】

 

親元を離れた未成年の移民に教育を受けさせ、フランスに定住させることを目的とした自立支援施設で働くことになったオドレイ・ラミー演じる女性料理人・カティの奮闘を描いたお話でした。彼女の頑固で一徹で、そして愛すべき生き方もさることながら、社会としていかに移民と暮らしていくのかというテーマを主題としつつ、フランス映画らしいユーモアを交えた良作でした。

 

ストーリーはと言えば、一流レストランでスーシェフとして働いていたカティが、同じく女性シェフと喧嘩別れして辞めてしまうところから始まります。最初は同業他社に売り込むものの、中々再就職の口がなく、仕方なく自立支援施設の食堂で働くことに。はじめは単に食堂で料理を作って生徒たちに食べさせるという仕事でしたが、料理へのこだわりがあるカティは、レストランさながらに手を掛けて料理をします。そのためやたらと時間が掛かってしまい、ランチが出るのも2時過ぎ。それでは困るというので、有志の生徒に料理を手伝って貰うことになりますが、やがて彼らに料理を教えることに。さらには、料理の技を身に着けることが職業訓練にもなることから、本格的な料理教室へと変わっていくことになります。

中にはカティに従わない生徒もいましたが、徐々に距離を縮め、またカティが生徒の性格や技量を把握して適材適所で人員を配置していくことで、チームワークが高まっていく様子に、こちらの高揚感も高まって行きました。そしてこの様子こそが、この映画のテーマでもある移民との融合ということであり、それを象徴的に描いた展開だったのかと思います。

 

因みに邦題では「ウィ、シェフ!」となっていますが、フランス語の原題は「LA BRIGADE」、英語の題名は「KITCHEN BRIGADE」となっています。「BRIGADE」とは軍隊用語で「旅団」という意味だそうで、フランスのレストラン業界では、自分たちの業務を軍隊に準えて使われる言葉のようです。日本語に直訳すると、「キッチン旅団」とか「厨房旅団」ということになりますかね。邦題も「キッチン旅団」で良かったんじゃないかと思いもしましたが、軍隊でいうところの「Yes Sir!」をレストランの厨房に当てはめると「ウィ、シェフ!」になるので、中々考えられた題名だなと感じないでもありませんでした。

 

話は映画から離れて我が日本の現実社会に目を向けると、先ごろ入管法の改正案が衆議院を通過したという報道がありました。これは移民というよりも難民の話がメインのようでした。法案の詳細は他に譲りますが、そもそも日本の難民認定率は従来1%にも満たず、他のG7参加国が二桁台なのと比較すると、非常に低い数字です。しかも難民認定されるまでは不法入国者として長期間拘留されることも多いようで、しかもその扱いも酷く、2021年には入管施設に収容中のスリランカ人女性のウィシュマさんが死亡するという事件も発生しました。

本作のような移民との融合という姿勢がフランスの全てだとは思いませんが、こういう姿勢が少しでも日本政府にもあれば、ウィシュマさんのような悲劇は起こらなかったんじゃないかと思います。

まあ「日本は外国とは違うんだ」という意見もあり、それはそれで一理あるとは思いますが、普段は「民主主義、法の支配、基本的人権を尊重する」とか言ってるのに、やってることはどこかの全体主義国家と大差ないという矛盾した状態は解消されるべきではないでしょうかね。

 

話が随分とずれてしまいましたが、移民問題というどちらかと言えば重い話を主題にしつつも、明るさや軽妙さ、ユーモアを交えた作品になっていたのは非常に良かったと思います。

 

そんな訳で評価は★4とします。

 

評価:★★★★