【映画】ハマのドン~令和の任侠物に拍手! | 鶏のブログ

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【監督】松原文枝

【製作国】日本

【上映時間】100分

【出演】藤木幸夫

【公式サイト】

 

横浜のカジノ建設を巡り、地元選出の国会議員で時の首相でもあった菅義偉や林文子横浜市長の向こうを張って、カジノ反対運動を展開した「ハマのドン」こと藤木幸夫に密着したドキュメンタリー映画でした。テレビ朝日の製作で、監督の松原文枝も元々テレビ朝日の政治・経済部の記者(現在はビジネスプロデュース局イベント戦略担当部長)。テレビ局製作のドキュメンタリー映画というと、2月にTBS製作の「日の丸 寺山修司40年目の挑発」を観ましたが、本作の方が遥かに面白かったです。
 
なにゆえに面白かったのかと言えば、一言で言うとドキュメンタリーでありながら内容的には痛快な任侠物だったから。主人公である藤木幸夫は昭和5年生まれで、今年で御年93歳になる、横浜そして全国の港湾労働者を束ねる現役の”大親分”。父親の代から”三代目”こと山口組の田岡一雄組長などとも交流があった人物でしたが、現在はヤクザ社会とは一線を画しているという。
そんな迫力満点の藤木が、時の首相や市長が推進するカジノ構想に真っ向から反旗を翻し、最終的に打ち勝ってしまうと展開は、ドキュメンタリーというよりはまさに任侠映画そのものでした。勿論昭和の任侠物のように、健さんよろしく長ドスを振りかざして殴り込みを掛ける訳ではなく、横浜市長選でカジノ反対派の候補を応援し、勝利を収めるというのだから、令和の任侠物は実に民主的なものでした。
 
藤木があまりに格好良すぎて、逆にリアリティが感じられないというところが玉に瑕でしたが、自公政権や大阪維新が絶賛推進する統合型リゾート(IR)=カジノの内幕を、日米の政財界や行政に丹念に取材して明らかにして、反対派の藤木の正当性が理解できるように構成されていたのは、政治・経済部の記者出身者が監督を務めただけのことはあると思われました。
このカジノ構想、例によってアメリカの圧力がきっかけになったもので、アメリカのカジノ業界の重鎮がトランプ政権に働きかけ、そこから安倍政権に”命令”が下って法案が通されており、いまだに日本が”植民地”であることを感じられる出来事でした。
中盤になり、アメリカのカジノ設計を手掛けているというアメリカ在住の日本人が助っ人として登場し、藤木にカジノの種明かしをするところも見所。カジノ誘致で地元が潤うかのように喧伝されているものの、カジノ側は客の金をカジノで全て吸い上げるので、地元に還元などしたらカジノは負けであると説明。また、カジノ業者も、横浜カジノの売上の半分は日本人から稼ぐと明言しており、結局は富裕な日本人の高齢者が持っている金をアメリカに召し上げてやろうという企みであるという説明に、反米派の私は首肯するばかり。当初カジノで儲けたお金に一律源泉税を課税しようとした日本政府が、アメリカのカジノ業界の抵抗にあい、外国人には源泉課税しないことにしたとのことで、関税自主権どころか国内の徴税権すらも行使できない日本政府の弱腰に唖然とするばかりでした。
惜しむらくは、カジノの皮算用が如何に風呂敷を広げたものであるかなどについて、数字を使って説明して貰っていたらもっと良かったかなと思いましたが、任侠映画に数字が乱舞しては野暮なので、その点は致し方なかったのかも知れません。
 
因みに先月大阪のIRが正式に決定しましたが、鶏が調べたところ年間の入場者数予測は2,000万人なんだそうです。関西地区のNO.1テーマパークのUSJですら、過去最高の入場者が1,460万人だったので、TDL及びTDSの合計の過去最高には及ばないものの、大阪IRの計画がいかにデカい風呂敷であるかお分かりいただけるかと思います。また、横浜カジノの収益は、国内客・海外客が半々で計算されていましたが、大阪IRの来場者は7割が国内客を見込んでいるので、横浜以上に日本人からボッタくる気満々なようです。
 
(参考)

 

https://www.olc.co.jp/ja/tdr/guest.html

 

 

 

 

以上、ドキュメンタリー映画を観に行って任侠物の風を感じるとは思いも寄りませんでしたが、わざわざ横浜シネマリンまで足を延ばし、地元の人達とともに鑑賞した甲斐がありました。最後は拍手する観客もいたほどの盛り上がりで大満足でした👏
 
そんな訳で評価は★5とします。
 
評価:★★★★★