【コラム】ビットコインが法定通貨になっていた件 | 鶏のブログ

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久々の時事ネタ。

中央アフリカ共和国が、ビットコインを法定通貨にするという報道についてです。

 

=============(以下、記事を引用)=============

中央アフリカがビットコインを法定通貨に採用、2カ国目

配信)

 

 

 

中央アフリカ共和国が27日、暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨に採用したと発表した。世界で2カ国目となる。

 

中米エルサルヴァドルが昨年9月、世界で初めてビットコインを法定通貨にした。国際通貨基金(IMF)関係者を含む多くのエコノミストが、金融不安のリスクを高めるとして、この動きを批判した。

 

中央アフリカは世界最貧国の1つ。ただ、ダイヤモンドや金、ウランといった資源が豊富にある。

 

クリックして以下を参照

一方で、数十年にわたって紛争が続いており、国内は荒廃している。ロシアの密接な同盟国であり、ロシアのワグネル・グループの傭兵が反政府勢力との戦いに加わっている。

 

中央アフリカ大統領府の声明によると、ビットコインの法定通貨採用は、議会で全会一致で決まったという。

声明ではまた、今回の決定で同国は、「世界で最も大胆で先見性がある国の地図に載る」と述べている。

 

■現行通貨の弱体化を狙う? 

ビットコインなどの暗号通貨に関しては、マネーロンダリング(資金洗浄)を容易にするといった懸念や、生成に多くの電力を使用するため環境破壊につながるとの指摘が出ている。

 

どの種類の暗号通貨を使うにもインターネットが必要だが、ウェブサイト「ワールドデータ」によると、中央アフリカでインターネットにアクセスできるのは、2019年時点で人口のわずか4%だった。

 

同国は現在、フランスが支援するCFAフランを通貨にしている。これは、アフリカのほとんどの旧フランス植民地でも同じだ。

 

今回のビットコインの採用を、CFAを弱体化させる試みだとする見方も出ている。資源豊かな中央アフリカをめぐっては、ロシアとフランスが影響力を争っている。

フランスのアナリスト、ティエリ・ヴィルクロン氏はAFP通信に対し、「腐敗がはびこっていることや、国際的な制裁が科されているロシアのパートナーであることを考えると、疑念が生じる」と話した。

 

■賛否の声

首都バンギでの反応はさまざまだった。

エコノミストのヤン・ダウォロ氏は、ビットコインはスマートフォンで取引ができ、他の通貨への両替も簡単なことから、暮らしが便利になるとBBCアフリカに語った。

「ビジネスマンは、海外で物を買う際にドルや他の通貨への両替が必要なCFAフランを、スーツケースに詰めて持ち歩かなくてよくなる」

同氏はまた、CFAについて、「アフリカのために」使われていないと主張した。いくつかの国では、CFAは植民地時代の遺物であり、フランスの経済的支配を続けさせるものだとして、廃止を求める声が高まっている。

 

一方、コンピュータ科学者のシドニー・ティカヤ氏は、暗号通貨の採用を「時期尚早」で「無責任」だと考えていると述べた。

同氏は、「ビットコインがインターネットに全面依存している中で、中央アフリカのネットアクセスはまだ未発達だ」と指摘。同国には、治安、教育、飲み水へのアクセスなど、より差し迫った問題があると付け加えた。

 

中央アフリカは、1960年の独立以来、紛争が継続している。

2013年には、キリスト教徒が多いこの国を、イスラム教徒が主体の反政府勢力が掌握した。抗戦のために自衛の民兵隊が作られ、各地で宗教の違いに沿った虐殺が起きた。

2016年に就任したフォースタン=アーシャンジュ・トゥアデラ大統領は、戦略的同盟の相手をフランスからロシアにシフトするようになった。

(英語記事 Bitcoin becomes official currency in CAR)

=============(記事引用ここまで)=============

 

以上の記事を読み、2つのことにビックリしました。

 

まず1つ目が、独立国がビットコインを法定通貨に採用したこと、しかも今回が史上初の出来事ではなく、中米エルサルバドルに続いて2か国目であったということ。

2つ目が、ユーロ以外にも、共通通貨が存在していたということ。記事によれば、中央アフリカは、従来中部アフリカ・CFAフランを法定通貨としており、これは中央アフリカを始めとする中部アフリカの5か国で構成される共通通貨とのこと。調べてみると、そのほかにベナンなど西部アフリカ8か国で構成される西部アフリカ・CFAフランや、ドミニカやイギリスの海外領土などの8か国及び地域で構成される東カリブドルが存在している模様。

 

過去にスカンディナヴィア通貨同盟などが存在していたとは聞いたことがありましたが、現在ではユーロが唯一無二の共通通貨だと認識していたため、非常に驚きました。

 

ただユーロとCFAフランなどとは決定的な違いがあって、前者が変動相場制を採用しているのに対して、後者は固定相場制を採用していて、中部及び西部アフリカ・CFAフランはユーロに対して固定、東カリブドルは米ドルに対して固定されているところに、大きな差があるようです。

 

それにしてもビットコインを法定通貨に採用するとは、一体どういう了見なのかと驚きましたが、中央アフリカの場合は、フランスの影響を排除してロシアとの関係を深める現政権が、実質的にフランスの影響下にあるCFAフランに打撃を与えようという意図があるのではないかという記事の説明には納得が行きました。

 

因みに中央アフリカに先んじてビットコインを法定通貨に採用したエルサルバドルの場合は、海外に出稼ぎに行った同国人たちが、ふるさとであるエルサルバドルに送金する際の手数料を軽減できるという理由で採用したらしいです(注1)。なんと実利的な理由かと思いますが、一国の法定通貨に、このような理由でビットコインを採用する政府の軽さには、少々眩暈を覚えないでもありません。

ただエルサルバドルにおいても問題は発生しているようで、価格変動の大きいビットコイン投資により国が大損を出したこともある上(注2)、格付け機関であるフィッチから格下げされてしまうということにもなっているようです(注3)。

 

また、本記事によれば、中央アフリカのインターネットの普及率が4%で、さらに携帯電話の普及率も20%未満らしい中央アフリカ(注4)において、実質的にビットコインが普及するのはかなり先の話ではないかと予想されます。

インフラ整備を進めるのには、相当な時間を要するでしょうし、またその過程においてロシアによるウクライナ侵攻の趨勢も決している可能性も高く、またそのほかにも世界情勢も大きく変わっているでしょうから、今後方針が変更される可能性もあるのかなとも思うところでした。

 

それにしても、ビットコインの法定通貨化について思うのは、今後仮にこれが主流になっていくのであれば、構造的には金本位制が復活することになるなあ、ということ。

現代の主流である管理通貨制度は、中央銀行が金の保有量とは関係なく通貨を発行するものですが、かつて主流だった金本位制は、金と通貨との兌換を前提としているので、その交換レートに応じた金の保有高が必要であり、世界全体で見ても金の埋蔵量に限界があることから、通貨発行量も理論的に限界がありました。

 

勿論現代においても、CFAフランのように固定相場制を採用する場合は、金の代わりに他の通貨を準備しておく必要がある訳で(CFAフランの場合はユーロ)、構造的には金本位制と相似した部分はありますが、準備が必要な通貨そのものが金本位制ではないので、理屈の上では固定相場制でも通貨発行の上限はなく、金本位制とは異なる性質を有するものと考えられます。

 

しかしながらビットコインは、構造上「埋蔵量」に上限があるので、ビットコインを法定通貨にするということは、理屈の上では通貨発行量の上限を設けることになります。

そして歴史的に見ると、金本位制の持つ通貨発行量の上限という特徴が、1929年の世界大恐慌を悪化させる原因になったこともありました。まあGDPが23億ドル程度(1ドル130円換算で2,990億円)と(注5)、東京都のGDPの1%にも満たない(注6)経済規模の中央アフリカなので、その影響が世界に及ぶことはないと思われますが、昨年世界に先駆けてビットコインを法定通貨にしたエルサルバドル同様、今後両国の経済がビットコインの影響でどのような姿を見せるのか、注目していきたいと思います。

 

(注1)

 

(注2)

 

(注3)

 

(注4)

2014年頃のデータなので、少し古いですが、この資料によると中央アフリカの携帯電話普及率及びインターネット普及率は、いずれも0~19%という状況になっています。

 

(注5)

 

(注6)