生まれつき
左手に難あり
親指第一関節が
自力で伸ばせず
曲がったまま
幼いうちなら治せる
と
気にかけた母親に
揉みながら伸ばす訓練を
促され
痛まぬのを幸い
毎日軽く揉み動かすのが癖であった
かくっと
関節を鳴らしながらも
小学校低学年頃には
自力でまっすぐ
伸ばせるよになる
そののちは
そんなことも忘れ
左手親指は
難なく過ごしてきた
…
近ごろ
件の親指を伸ばすと
ときおり
かくっとなる
親指を使い過ぎたり
気圧が低いとき
指骨が妙に疼き
数十年ぶり
事の起こりを想い出す
いとおかし
若さという飾りが外れ
顔立ちや躰つきが
幼いころに戻ってきたな
とも
感じておったこのごろ
さてさて
還暦
とは
よく云うたものよ
消えゆく支度が
始まるのだな
(  ̄ー ̄)