間隔開くと展開まで変わるんだよな…。
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「呼び出してごめんね。眠くない?」
「全然。」
物件チェックに気が済んだのか いっちゃんはやっと腰を下ろす。
「まだ寝るつもりなかったし。」
あれ…。
言葉とは裏腹にふと気だるそうな表情を見せた。やっぱり疲れてたかな…。
「…いっちゃん?」
「え?…なに。なんか顔についてるか?」
様子を伺う私に首を傾げる。その時には口角を上げていたから、
「…ううん。」
…気のせいかな。
そう思い直した。
グラスを手に取りお茶を飲む彼にチラチラと目を向ける。
なんか緊張する…まるで告白でもするみたい…。
これからのことを私は話すつもりでいた。離れるわけだし、気持ちの確認を…というか、
「…あのね、」
私の気持ちを伝えておきたかったんだ。
「夏が…終わるじゃない…?これからのことを話しておきたくて。」
私の発言にいっちゃんは一瞬押し黙る。だけどすぐに
「ああ…マジな話ね。」
小さく息を吐きクスッと笑った。
「お前はどうしたいの。」
「えっ、あ…私は…その…」
夏が終わってもいっちゃんと…。
私の出した結論への反応よりも 好きだと伝える恥ずかしさに襲われてしまう。
…私は思い込んでいたんだよね、いっちゃんも同じ気持ちでいてくれてるって。
「俺と付き合ってどうなった?」
「…え?」
…勝手に自惚れていたんだよね。
彼の発言に首を傾げた。聞き間違いだろうか。『どうなった?』って言った??
彼の眼差しにも声にも僅かに意地悪な響きが混じっている。私はてっきり聞き違いかなって、
「担任と。別れる決意ついた?」
え…
…思っていたのに。
・・・・
「その反応。やっぱりな。」
ウソ…え、なんで…?
心臓がバクバクと音を立て始める。血の気が引いたような気もする。
どうして?…どうして知って…
頭の中は真っ白になった。
「違和感あったんだよな。」
思い切り顔に驚きと焦りが出ていたんだろう いっちゃんはフッと笑う。冷やかしの雰囲気と意地悪な冗談の空気をまとったまま…だとしても私は呼吸することさえ忘れ、
「既婚者だろうと教師だろうと、ただ惚れただけなのに、」
彼の顔から少しずつ冗談の色が消えていく…その様を見つめる羽目になって。
「なんで姉ちゃんはここまでお前と担任を離そうとするのかって。」
…あ…。
先生とのことを言うつもりはなかった。話すつもりは…それなのに、
「付き合ってんなら納得。そりゃ姉ちゃんも焦るよな。バレたら担任もお前もお先真っ暗だから。」
…気づかれていたなんて。
戸惑いながら頭のなかで必死で否定していた。なにをだろう 全部…いっちゃんが思っていること全部否定したかった。
「…それは…」
だけど出来ない…私は、
「お前まだ惚れてんだろ。だから担任と別れるのを渋ってんだよな。」
…否定出来ないんだ。
「その状況で俺と付き合ったのはなんで。」
苛立ちと切なさと混ざった声が 心に重く響く。
「担任と別れてもねーのに、俺と付き合ったのはなんでだよ。」
面談の日 別れを切り出した先生に、私は何度も首を横に振って、先生は何度もため息をついた。
『結婚してるんだ。』
…全生徒に広めようとしていたよね そんな嘘まで用意された。それくらい先生にとって私は重荷だった。
分かっていたのに、
「なんとか言えば?」
…どうして別れを受け入れられなかったんだろう。
・・・・
最悪じゃねーかよ…。
最悪のシナリオをぶつけたらそれは的を得ていた。
**は許しを乞うようなすがりつくような目で俺を見つめている。涙を静かにポトポト…膝の上に 握った拳の上に落としながら。
ずっとコイツを見つめながら話したつもりだったけど、いつから泣いていたのか分からない。俺も…冷静ではなかったと思う。
「ただフラれたのと、別れを保留にしてるのは全然違うよな。」
なんでこんな展開になったのか。
…それはさ、
ラックに並ぶ置き時計に置き鏡 カレンダー…それらに改めて目を向ける。
一つだけ マスターが用意したものじゃないものが置かれている。それは、
『全部ジョージさんが用意してくれたんだよ。』
『マジ。…?』
…携帯?
それを見つけてしまったからだ。
型の古いピンク色した携帯
傷だらけで 明らかに今使っているやつとは違っていて、
担任に拾われたやつかよ?…
それを目にした時 なにかが俺の中で砕ける。そうしたら、不思議に思っていたことがパズルみたいに合い始めた。
姉ちゃんは担任とコイツを引き離さなきゃならないと思った。それは付き合っているから。
引き離すまでしなくてもと、マスターは言った。それは本当のことを聞いていないから。
担任は独身なのに、既婚者だと嘘をついている…それは周りを巻き込んでまでしなきゃコイツが別れに納得しないから。
コイツだけが独身だと信じていた…それは、自分と付き合っているから。
「担任独身だろ。卒業したらどーにかなるかもとか?ひとまず夏のあいだは俺の相手でもするかって感じ?」
皮肉を込めて攻め続ける俺は***に相当冷めた目を向けていた。
「お前ナメてんな。」
黙ったままこのまま付き合っていても 多分いつか問い詰めたと思う。離れることで俺はきっと相当な不安に駆られるのが目に見えるからだ。
でも…できる限りこの嫌な予感をかき消そうとしていた。誤魔化し誤魔化しで…気づかないふりをしていた。それなのに、
意地なのかプライドなのか もしくは嫉妬か
「…話さなくて…黙っていてごめんなさい。」
「…。」
ダルい。マジでダルい。
「でも…でもね、」
「ハァ…もういい。」
「フラれたからいっちゃんと付き合ったんじゃないよ。」
ハァ…。
「忘れたかったから付き合ったんじゃないよ?」
…言わなきゃ良かった。そうしたらさ、
「私…夏が終わってもいっちゃんの彼女でいたいよ。」
この言葉がどれだけ嬉しいか 言葉にできたのに。
震えている声も肩先も抱きしめたい衝動に駆られる。だけど、
「…俺はさ、」
伸ばしかけた手で髪をかき上げた。俺は顔を背けた。
「そいつのことを忘れて欲しくて付き合ったんじゃねーんだよ。」
俺らには夏の続きがあったのに。
「俺のことだけを好きになって欲しくて付き合ったんだよ…!」
・・・・
花火の下キスをしたのも、甘い予感に走った夜も、
「ハァ…お前ダルいわ。別れようぜ。」
…別れたのも同じ夜。
「…。」
帰り道 星を見上げる気にもならなかった。
next
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