展開が早いような遅いような。
かと言って…一護ちゃんにとって私が特別というわけではなかった。
「一護、何処行くんだ?」
「中庭。」
お昼休み 教室から出て行く一護ちゃんの背を目で追う。
「お待た。」
廊下には頬を染めた後輩…中庭で二人でランチタイムらしい。
「…。」
まぁモテモテだよね…。
一護ちゃんには彼女がいない。いないというより作らないらしい。特定の彼女がいないんだもの あんなカッコ良かったら言い寄る子は後を立たなくて。
「…なんで誰とも付き合わないんだろ。」
彼女を作らない理由は以前友人から聞いていた。
「遊べないからでしょ。」
「え…」
「相当遊んでるらしいよ。」
「佐東くんだけじゃないよ、あのトリオは皆そう。」
私の幼なじみ達は何気に遊び人らしく
「佐東くんは校内でも人目気にせずに色んな子と居るから目立つけど、湯野くんも街でいつも違う子連れて歩いてるっていうし、」
「種村くんなんてそんな風に見えないけど 女慣れしてるってウワサ。」
「カッコ良いから遊ばれても全然良いけどね。」
「あんなルックス良いんだから経験無いほうがこわいって。」
クスクス笑う友人達に苦笑い。
「揃いに揃って女癖が悪いとか…。」
ただのウワサかもしれない。けど火の無いところに煙は立たない。多少なりともそういう面はあるってことだ。
皆変わってないと思っていたけど10年経つんだもん、皆 男ってことだ…。
「実際好きな子もいないみたい。」
「案外恋人には一途かもね。」
ふーーん。
…こんな話、以前なら聞いてもなんとも思わなかっただろう。今じゃ一護ちゃんのそんなとこ見ると胸が痛い。
チラッと中庭を見下ろすと 芝生の上 数名の生徒がお弁当を広げているのが分かる。
そのなかに…あ、居た。一護ちゃんとさっきの女の子
「…。…」
お弁当作って貰ったんですか。私だって作りますけど。
その距離感どうなんですか?そんなに顔寄せ合ってお弁当の中身確認する必要有りますか…って私、すっごい嫌妬いてるじゃん。
三階からだとしても二人の様子はよく見えた。さすがに話し声まで聞こえないけど楽しそうに笑ってる。
その子のこと好きなの?一護ちゃんは勘違いさせるのが得意だね…。
「…あ…」
不意に教室を見上げた一護ちゃんと目が合う。
ヤバっ
私はすぐに逸らした。そしてまた友人達とランチを楽しむふりを…。
「…ハァ…。」
彼を確実に意識していた。
授業中の消しゴムのやり取りも帰宅途中の寄り道も
今までみたいに普通でいられない 顔が真っ赤になってまともに会話が出来ない。
恋愛下手で経験のない私はまともに彼の魅力にハマってしまって
勝手にその気になって勝手にフラれた気分で
「…バッカみたい。」
意地悪されるのは変わらない その気もないのに…私もあの子と変わらない
「その気にさせないでよ…。」
一護ちゃんにとって私はただの幼なじみなのに。
・・・・
「え?私?」
お?
放課後 ***が下級生の男に下駄箱で呼び止められていた。
「誰だ、あれ。」
剛史が足を止め一護とオレに聞く。知るわけがなく
「さぁ?」
オレは答えたわけだけど、
どうもその男は誰かに頼まれて***を呼び止めたらしかった。校舎内を指差し 来て欲しいと手招きをする。
オレはチラッと一護に目をやる。コイツは
「…。…」
ジーーとその様子を見ていた。
「一護、お前行かなくて良いのか。」
「…は。なんで。」
「なんでって…。」
ここ最近ずっとコイツらは二人で帰っていた。オレと剛史からすれば もしやコイツら?と、幼なじみの色恋にニヤニヤしていたんだけど
どうしたもんか いつからかそれをやめた。やめたというか 当初のようにオレ達と一緒に帰り始めたというか。
「あ。」
男が***の手を掴み 校舎に戻って行く。
訳分からない様子のアイツは引かれるがまま連れて行かれる…。
オレ達はその様子をある意味ぼぅ…と眺めていたんだけど
「お前行っといたほうが良くね。」
剛史が痺れを切らせたか 一護に少し強めに言った。
「***に駆け引きは通用しねーぞ。」
ああ、他の女との仲良しごっこのことを言ってんのかとオレも頷く。 そんなオレ達を
「フン…」
一護は鼻で笑った。
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