サンタマリア:35 (怪盗X:Long:柳瀬流輝) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

このシーンはあと…2話はいるだろ、で、あとがきのまえがきを入れてそれから…4話?追加となると、まぁ大幅にズレたとしても50はいかないな。45…もいかないなぁ。いや待てよ…ブツブツブツ

 

before

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~♪

 

「…ん。」

 

ミッション当日 仕事を終え職場を出ようとした時だった。胸ポケットの携帯が鳴る。

 

「柳瀬、お先。」

 

「お疲れ。…は?」

 

***?

 

同僚達に手を上げ 俺は携帯を手に早々にビルを出た。そして街路樹の傍に寄り

 

「もしもし。どうした。」

 

『あっ、…あの、***です…。』

 

あの夜ぶりに会話を交わす…***からの着信を受けた。

 

「分かってるよ。珍しいなお前が電話してくるの。」

 

雨こそ降ってはいないが そろそろ降り落とすだろう予報の空

 

日暮れでもあり外は随分と薄暗く 街のネオンをやけに眩しく目に映す。

 

今夜の雨雲が通り過ぎればいよいよ梅雨明けだと

 

『突然ごめんなさ…』

 

「どうしたんだよ?」

 

曇り空を見上げ…朝のニュースでの予報士の浮かれた声を思い出した。

 

『…別に用は無いんだけど…』

 

「は?」

 

遠慮がちな あまりにも小さな声に首を傾げたが

 

『…なんとなくだよ。』

 

「え?」

 

『なんとなく…です。』

 

声が時に遠くなる 言葉を選んでいる…そんなコイツのどこかぎこちない様子に

 

「…ははぁ~ん。」

 

『…なに?』

 

「単純に俺の声が聞きたくなったんだろ。」

 

『…あ…。…ダメ、だった?』

 

「当たりかよ。クック…」

 

『ちょ…なんで笑うの?』

 

「笑うだろそりゃ。クック…」

 

『もうっ!認めるんじゃなかった…もぉ~…。』

 

ブツブツ言い返しながらも声のトーンで***も笑顔になったのが伝わる。

 

俺はこの時 茶化しはしたけれど

 

「…面白いよなお前は。」

 

コイツが何度も息を整えているのを受話器越しに感じていた。

 

今日が『花水木』搬入日。搬入時間は20時

 

待ちに待った名画との対面の時間は迫っていた。

 

気が気でないんだろう…理由のない電話の意味 言葉にしなくてもどうしようもない胸の鼓動が原因じゃないのか…。

 

「なんならあのエ ロい声を聞かせろよ。」

 

『~~~ッ!もうバカッ!』

 

「クックック…」

 

早打ちする鼓動は俺も同じで。

 

雲に隠れていようと太陽はまだこの空のどこかに存在する だが間もなく消える…月が昇り俺達が動き出す時間は直ぐにやってくる。

 

朝から落ち着かない 今までのミッションでこんなに時間が気になった事はなかった。

 

『意地悪!切るよっ』

 

「…***。」

 

『もう、なに?』

 

「いつでも電話して来いよ。」

 

『え…』

 

「いつでも良い。…いつでも良いから。」

 

今夜コイツを闇のどん底に落とすというのに…俺こそ名残惜しいなんて

 

『…うん。』

 

「じゃ。」

 

俺は勝手だ…。

 

プツ…

 

「…ふぅ…」

 

高層ビルに挟まれた小さな空に 雨雲が流れていく。

 

「…雨か…。めんどくせぇな…。」

 

ポツリ呟き 携帯を握ったまま帰路へと歩き始めた。

 

・・・・

 

「なぁんか緊張するんだけど。」

 

「分かる。俺もらしくなく…ハァ…ふぅ…ハァ…」

 

ゴロゴロ…ザーッ…

 

予報は当たる。

 

19時。俺達は黒狐に集まり 目ではなく耳で荒れている空の様子を感じていた。

 

宙と健至はやけに多弁で店内をウロウロと落ち着かない。

 

「ジッと座っとけっつの。」

 

カタカタカタ…

 

大口を叩きながらも拓斗はパソコンを前に眉間に皺を寄せ貧乏揺すり…。

 

「クック…。…。」

 

俺は三人の様子を余裕のあるふりをして笑ってはいたが

 

「…最後のミッションだな。」

 

傍に並び置かれている『桜』と『鈴蘭』を呆然と眺め続けて。

 

「たっくん、博物館がどんな様子かハッキングしてよ。」

 

「あのな…何回ミッション経験してんだっつー。ギリギリでないとこっちが逆にハッキングされるし。」

 

「あ、そか…。ねぇじゃぁさっきから何パソコンと睨めっこしてんの?」

 

宙は唇を尖らせながら拓斗の傍に行った。そして覗き込み

 

「これって…」

 

「念の為に展示室の暗号調べてるし。」

 

カタカタカタ…

 

「…。」

 

…***の考えた暗号か…。

 

チラッと拓斗に目を向けると パソコン越しバチッと目が合う。そして

 

「柳瀬。まさかとは思うけどお前の女が担当って事はねーよな。」

 

そう言って…俺を睨んだ。

 

「ご名答。」

 

「マジか。」

 

「うっそ、マジ?」

 

「流輝、それホントかよっ」

 

ガタガタッ

 

「フン…。」

 

身を乗り出すコイツらに鼻で笑い 時計に目をやる。と同時に鼻歌交じりでボスが二階から降りて来る姿を横目に映した。

 

「お前の女の頭の中教えろっつー。」

 

「展示室の暗号を調べる必要はないだろう、その前に頂くんだから。」

 

「念の為だし。」

 

・・・・

 

「閉館後の博物館って気味悪いよね。しかもこの嵐のような夜。ホラーじゃん。」

 

ザーッ…

 

博物館の外観を目にすれば確かに宙の言った通りだった。

 

「じゃ皆気を付けて。」

 

「ああ。」

 

黒い衣装を身に着けた俺達は闇に同化し 雨のお陰で影さえも消す。

 

「流輝、いつもの。」

 

「…ミッションスタートだ。」

 

パチン

 

その雨の中指を鳴らす。ボスと拓斗をバンに残し 俺と宙、健至は飛び出した。

 

・・・・

 

「館内に入ったぞ。」

 

『了解。』

 

予定どおり 俺達は従業員入り口から博物館に潜り込むことに成功する。だが想像とは違う館内の様子に違和感を覚えた。

 

「…静か過ぎねーか?」

 

「…ああ。」

 

健至の言ったとおり 警備員の数が少ない。

 

そして警備員の様子も…やけに落ち着いているような…。

 

ピピ

 

『柳瀬。』

 

「ああ。」

 

その違和感は拓斗からの報告で原因が分かった。

 

インカムを通じて拓斗の声に耳を傾ければ

 

『非常事態。』

 

「どうした。」

 

ため息交じりの声に眉間に皺が寄る。周囲を気にしながらも健至と目を合わせた時 拓斗は言った。

 

『もう搬入されてる。』

 

「え?」

 

『『花水木』がもう展示室に飾ってある。』

 

「は…」

 

なんだって?

 

『警察はもう警備を終わらせて帰ってるし。潜り込んでんだからチャンスっちゃぁそうだけど展示室の暗号が解けてねぇから無理っ。』

 

『流輝、聞こえる~?ミッション中止~。帰ってきてぇ。』

 

ウソだろ…。

 

・・・・

 

***の部屋のカレンダーに書いてあった搬入日と搬入時間

 

それは拓斗も別ルートで確認を取っていたはず…

 

「…搬入時間を変えたのか。」

 

『らしい。…この博物館の従業員、相当なやり手だな。つまりお前の女って意味だけど。…って、おいっ』

 

「ッ?!」

 

「あ、宙が…っ」

 

ニャァ!

 

博物館に子猫を迷い込ませ警備員達を展示室から遠ざけ…ありふれた作戦だが目眩しとしては最適だった。

 

『宙、作戦実行しちゃったぁ?』

 

『タダイマッ。大成功っ!猫ちゃん走り回って警備員達大慌てしてる。え、なに?どうしたの?』

 

『…バカだし。』

 

「…。」

 

インカムを通して聞こえるアイツらの声…その計画にはない会話よりも

 

***…。どうして…。

 

俺は…どうしてアイツがカレンダーを書き直さなかったのかばかり…。

 

「…流輝、どうする。」

 

健至は俺の横顔に問いかける。俺は…

 

「…。」

 

俺は…。

 

・・・・

 

ピッ

 

「拓斗。展示室のカメラとレーザーを切ろ。」

 

『は?柳瀬、暗号解けてねーってっ』

 

「お前の腕の見せ所だろ。頼んだぞ。」

 

『嘘だろっ』

 

ピッ

 

「健至、展示室はすぐそこだ。行こう。」

 

「マジかぁ…」

 

・・・・

 

無謀にもミッションに立ち向かわせたのはなんだったろうと思う。今でも…分からない。

 

ただ、***が俺に電話を寄越した理由がこの時分かった。

 

…***、お前は俺を止めたかった。

 

携帯越し 息を何度も整えていたのは

 

ピッ

 

「着いたぞ。チャンスは二回だったな。拓斗。」

 

『クソッ…』

 

『花水木』を観ることが出来たから…心に響いたか 泣いていたんだな。

 

それを俺に気づいて欲しかった。伝えたかった。

 

敢えて口にしなかったのは カレンダーを書き直さなかったのは…

 

「拓斗、頼む。」

 

俺こそがブラックフォックスだと知ったんだな?

 

・・・・

 

『とりあえず…いちいち変えてはいるけど、ここ何か月かで一番使われている番号言うぞ。』

 

「ああ。」

 

いつ警備員が現れるかもしれない いつ警察が現れるかもしれない

 

とてつもなくマズい現状だというのに

 

***が『花水木』を観る事が出来た…それが分かって

 

「流輝、なに笑ってんだよっ笑いごとじゃねーぞっ」

 

「クック…」

 

…安堵していた。…嬉しかった。

 

 

 

next

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