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『***…』
もっと戸惑えば良いのに もっと嫌がれば良いのに
そうしたらオレ 我に返って どさくさに紛れたキスを冗談にした。
押し付ける唇に驚き 胸に手を当て押し返そうとしたって
大して力入ってなかっただろ 絡まろうとする熱を拒みもしなかったろ
だから…もう止められなくて
揺れる瞳が時にぶつかり合う けれど抵抗はしない***を無我夢中で抱いた。
『ハァ…』
こんな始まりあるかって思いながら
『…ハァ。』
こんな始まりでも良いって思いながら…
・・・・
『オレ達 付き合わないか。』
翌朝 オレの腕枕で眠った***にそう告げた。
オレからすれば積もり積もった想いを口にするやっときたタイミング
鼻先当たる距離で見つめる事ができるこいつに愛おしさを込めて告げたけれど
『…ん…』
***は良いとも嫌とも受け取れない曖昧な返事をし 目を反らした。
そして聞き返そうとするオレから逃れるように肩先に顔を埋め
『…また…来て欲しい。』
そう言ってソッとオレに抱きついた。
『…ああ。』
…返事になってない。結局 オレ達は一線を超えたとしてもあやふやなまま。
・・・・
それから 何度***の部屋に足を運び夜を共にしただろう
「ねぇ 久仁彦おじさんさ、どうして急にモーニング始めるなんて言い出したんだろ。」
オレの作ったミネストローネ 美味しいと完食するこいつ
「あの通りにサラリーマンが多いって今更気づいたんじゃねーの。」
「まぁ確かに多いけど…もう少し眠っていたい 睡眠時間が短いよ。」
「寝過ぎなんだっつの。お前放っておいたら昼まで寝てそーだよな。」
ふわぁ…と小さなあくびをし拗ねた顔をしてオレを笑わせる。
向かい合わせに座る食卓は…まぁ 会話は途切れず
「あー、もう行かなきゃ。食器このままで良いよ。大和も遅れないようにね。」
「ああ。気をつけてな。」
朝の慌ただしさは…それなりに笑顔で溢れていた。
「今日は帰りLIに来る?」
玄関でヒールを履きながら***が振り返る
「ああ。」
「分かった。じゃ行ってきます。」
眩しい朝日のなか向かう笑顔に手を振る…だけど
パタン
ドアが閉まっても
「…。」
送り出すために振った手は降ろせないまま固まって。
「…いつまでこんな関係だよ…」
・・・・
「…付き合おうっつってんのに…」
何度そう言っただろう 昨夜も言った。
『オレ達つきあわねーの?』
最近じゃどこか冗談のようにも受け取られている。
食器を片付けながら苛立たしくなる
惚れてる女を求めるまま存分に抱き 心地良い疲れに瞼を閉じたとしても その一瞬が終われば虚しさが胸に拡がっていた。
かと言ってこの関係を失う勇気はオレには無くて
日に日にこの部屋に増えるオレの荷物は あいつへの想いに比例しているようで
「ハァ…」
オレ どうしたら良いんだろうって…。
身体から始まったオレ達は なにか名を付けないとあやふやなままだった。
っつーか 名が付いているのだとしたら
「カラダだけの関係 」
…それがオレ達を表す名称。
・・・・
「いらっしゃいませ。…あ、大和さん。」
人前では「さん付」二人きりの時だけ呼び捨て…やっぱ大っぴらに出来ないオレ達の関係
「ビールな。」
今夜もLIは賑やかな笑い声で溢れている。
「おーい 大和ぉ!」
仲間達の出来上がっている笑顔の輪に向かいながらも
「お姉さん〜こっちビール追加〜」
「あ、はーい!」
「…。」
男に絡まれやしないか 気になって***を目で追っていた。
「大和、今日は早いじゃん。」
「そうか?」
オレはあいつの男、でもないのに。
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