*********************
「待ってみっちゃん!」
「ハァッハァッ!」
なんで追いかけて来たりするんだろう、ハルさんて…。
早足で駅に向かっていた私だったけれど そのうち走りださずにはいられなくなっていた。
「みっちゃん!」
「ハァッ!」
振り向くわけにはいかなかった。
だって泣いてるってバレちゃうもの、どうして泣いているんだって聞かれるもの…。
「待ってって!!」
ハルさんの声が段々と近づく。けれど私は駅へと向かう足を速めた。
・・・・
追い駆けて来てくれたこと…嬉しかった。
でも別に何かを期待しているわけじゃない たぶんハルさんの事だ、突然辞めると言った私に一体どうしたんだと聞きたいだけ。
「ハァッ…!」
だっていつもハルさんは優しかった。彼の笑顔にどれだけ勇気づけられ 励まされただろうと思う。
もし彼がクロフネの常連さんではなかったら 私はすぐにバイトを辞めていたかもしれない
夏樹さんと連絡を取っていなかったら…私はきっと未だ失恋の痛手から心塞いでいたかもしれないな
「みっちゃん!」
彼がいてくれたから 前を向いて歩けたのに
「ハァ…」
どうして私は逃げているんだろう…??
・・・・
いい加減走った時 大した交差点ではないのに 赤信号の長い横断歩道に足を止める。
「停まって!」
振り返ればすぐそこにハルさんが居た。私の腕を掴まえようと手を伸ばした。
「…ッ」
赤信号なんて余計だった。わずかな車間距離を走り抜けようと車道に飛び出して
「危ない!!」
一瞬でも怯んだのがいけなかったのか
クラクションに鳴らされ道路の真ん中で思わず足を止めた私は…
「ミカ!!」
・・・・
目をギュッと閉じたと同時に けたたましいクラクションとブレーキ音 そして
「?!」
感じたことのない程の衝撃を身体に受けた。
*********************