Remember:30 (吉祥寺デイズ:Long:種村春樹) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

before

***********************


「あぁ~もう***さんたら…」


パタン


バイトを終え家に着いた頃には雨は上がっていた。


手を洗いうがいをしながらさっき***さんに問い詰められた様子を思い出す。


「…私って顔に出てるのかな…」


それは風邪は大丈夫かと何度もメールをくれた彼女にお礼を言った時だった。


「あ、そういえば***さん、何か話があるって…」


「そうそう!…ねぇ、みっちゃん。ちょっと。」


「はい?」


***さんはソファで寛ぐハルさんと剛史さんをチラチラと見ながら私をカウンターの端へと手招きする。


そして小さな声で


「ねぇ、みっちゃん、もしかしてハルくんの事好き?」


「え…」


だなんてニヤッと笑いながら聞いたりするから。


・・・・


「鋭いな…」


もうここは家で私以外誰もいないというのに 顔がカァっと赤くなり頬を押さえた。


そして深呼吸をし 夕ご飯の準備をし始めたけれど


「ハァ…」


まだ胸はドキドキ…


・・・・


「…え、何言ってるんですか…」


「フフ。隠さなくったって良いよ。なんとなく感じたの、みっちゃんはハルくんを目で追ってるって。」


「そんな…!」


「ハルくん優しいもんね。分かるよぉ~ドキドキしちゃうの分かる!」


もう完璧そうだと決めつけられ肩をポンポンと叩かれる。


「…いえ、そんな…」


私は彼らに聞こえてはいないだろうかと冷や冷やしたけれど


「聞いてみようか、私。」


「え?」


***さんはニコニコと自信満々な顔をして私と交互にハルさんに視線を向け


「みっちゃんのことどう想ってる?って…」


「やめてください~!!」


彼女の口を手で押えてしまう程 私は大慌て。


「違いますから!全然違いますから!」


「うぐぐ…」


私があまりにも大きな声を出すからハルさんと剛史さんはこちらを振り返ったけれど


「仲良いね。」


私たちがじゃれ合ってるとでも思ったか ハルさんはニコッと笑ってまた雑誌に目を戻した。


「…私、好きな人いますから…!」


だから必死で声を殺して彼女にそう告げる。


「え?そうなの?」


「はい…います…」


「だれ?大学の人?」


「いや…えっと…」


・・・・


「ハァ…」


夕ご飯の用意をしながらも上の空 切った野菜もそのままに私はソファに座り携帯を取り出した。


「…夏樹さん…」


…七夕に会おうと言われた。まだその返事をしていない私は


「…どうしよう。」


会いたいのに戸惑っている。


・・・・


怖かった。夏樹さんと会うのが。


外見ではなく心から知る事の出来た出会いにこんなにも胸ときめくなんて思わなかった。


彼との連絡を続けるうちに真っ黒い姿が段々と色を付け始める


イメージと理想が加速して微笑む姿がハルさんになってしまった。


「ハァ…」


夏樹さんを重ねる事でハルさんを目で追っている。彼は夏樹さんじゃないのに…


「どうしよう…」


そしてふいに浮かんだ疑問


私は夏樹さんが好きなのだろうか それともハルさん?


夏樹さんにメールをしながら思い描くハルさんの姿は…


・・・・


『会いたい』と言われたその言葉に戸惑う贅沢な私


「…分からない。」


自分で自分の気持ちが分からなくなっていた。




next

**********************