Continue:9 (吉祥寺デイズ:Long:湯野剛史) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

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「暑…。」


うっすらと汗の光る額 手を伸ばし額にかかる前髪にそっと触れようとすると


「ん…」


伸ばした指先に唇を這わせられた。


「…。」


「…。」


お互いの瞳をただジッと見つめていると


たった今 求め求められた身体の熱さが恥ずかしくもなり


無我夢中すぎる程 一喜一憂した一時に可笑しくもなる。


「なに笑ってんだよ。」


「…剛史こそ。」


鼻先の触れる距離でクスクス笑い合う私たちは 誰にも負けないくらいの恋人になっているよね。


「今日も花マル。」


・・・・


ベッドからやっと身を起こし 脱ぎ捨てたシャツを手に取る。その背を見ながら私も起き上がると


「わ!」


「派手すぎ。」


笑いながら下着を顔にぶつけてきた恋人


「もう!」


頬を膨らませた私なんて気にもせずに


「今度花火観に行かないか。」


「え?」


突然そんな事を言ってきた。


シャツを被りながら言う剛史に 今更のようにシーツにくるまり コソコソと下着をつけながら


「花火大会?」


聞き返す。


「ああ。幼なじみらと行くからお前も来たら。」


「え。」


聞き返すべき事はその言葉だったと思いながら…。


・・・・


「お前を連れて来いって言うから。」


何度か聞いた事のある彼の幼なじみの話 名前だって知ってる、リュウ兄にハルに一護に理人…


「え…良いの?」


会ったことはないけれど…彼の大事な大事な幼なじみだって知ってるから


「私行って良いの?!」


「何度聞き返すんだよ。」


剛史がはにかみ 照れたような顔で


「初めてだよ。自分の女を紹介するの。」


そう言うから…また聞き返したかったけれど


…うっそぉ~…。


この時 どれだけ嬉しかったか分からない。この時の私を表現するなら


「え~と…」


ベットサイドに置いていたカレンダー 手を伸ばす彼を制し思い切り抱きついて


「超~嬉しい!」


「重ッ!」


シーツに押し倒し 降らすキスの大雨


「すっごい嬉しい…!」


「顔がベタベタになる…」


「ねぇ、私もね、会って欲しい友達がいるの!」


「そんな声を大にしなくても聞こえる。」


カレンダーを手に取った剛史の手から奪い取り


「この日!ねぇ良い?」


肩先に顎を乗せ背後から抱きつきながら指差した さっき赤マルした八月の土曜日


「この日?」


「うん!この日!」


「俺もこの日なんだけど。」


「え?花火大会?」


「ああ。…ちょっと待って 俺この日 動けないけど。」


「え?」


「じゃんけんで負けたから。朝から場所取りで動けない。」


・・・・


「なんで負けるのよ…」


「それを言うなら何で夜しかダメなんだよ。」


一気にテンション下がった。だって言う事言われる事 全部都合が合わない。


「夜に会う約束してるの。その子 昼間は親戚の結婚式に出席してて…私も仕事だし」


「じゃそいつも花火連れてくれば?」


「それが…。その子、その日の夜に飛行機でもう帰るのね、だから空港まで送るよって約束して…」


「はぁ?どこの奴?どういう友達?」


「小学校からの友達なの。幼なじみっていうかな 会うのすごい久しぶりなの。だから…」


「会いたいのか?」


「会いたい…」


「だったら花火は無理だな…。」


・・・・


昼間は土手の上 剛史はぼぅと青空を見上げているだろうけれど 親友を連れては行けない。


夜 花火大会に私を皆に紹介したい剛史だけれど 私は親友と会っているから 会えない…


「全然、ダメだろ。」


「…全然、ダメだ。」


同時にため息を漏らす私たちはお互いを紹介したくて堪らないのに。


大事な友人に大事な人を紹介する。それだけできっと二人の仲はもっと深まるのに。


・・・・


「ごめん!!」


『良いよ良いよ。』


結局親友と話合った結果 会うのはまたの機会に…ということになった。


またの機会っていつだろう。もう何年も会っていないのに。


結果 私は親友より彼氏を選んだ事になるのだろうか


でも剛史がまさかあんな拗ねた顔をするなんて思わなくって…


『フフ。どうしても自分の友達に紹介したかったんだね、彼。』


それでも彼女は私を責めなかった。逆に笑っていた。それでも謝り続ける私に


『…前付き合ってた人が…』


「ん?」


『…前の彼。友達より自分を優先しろっていう人だったの。そういうの嬉しくない?女友達にまでヤキモチ妬いてくれてるみたいで。』


…過去の恋を彼女は笑って話す


『たまにケンカになるんだけどね。…でも嬉しかった。』


「…うん。」


そんな笑える恋じゃなかったのに。


・・・・


彼女に少しでも ほんの少しの時間でも会いたくて仕事のシフトを変えようとしたけれど


『ごめん。もう予定入れちゃったの。お世話になっていた人と会う事になって』


「そか…」


…すごく会いたかったけど。


カレンダーの赤マルは当初の意味と変わってしまった。


けれどこの日を心待ちにする気持ちは変わらなかった。


「すっごいドキドキするぅ。ねぇ、浴衣着て行った方が良いかな?」


『そりゃそうでしょ。やっぱり花火大会は浴衣のもんだって。私ね、去年 ワンピース着て行ってなんか冴えない気持ちになったもん。』


一週間後の花火大会


「ドキドキするぅ~。」


剛史の幼なじみ達にどう受け入れられるかによって なんだか私たちの仲も動きそう…。


だって剛史が彼らをどれだけ大事にしているか なんとなく分かっていたから。



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