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***は持ち前の愛嬌の良さから クラスメイトにもすんなりと受け入れられた。
オレ達と同じクラスだって事もあったから まぁたった一人で居させるような事はしなかったし
「一護ちゃん、消しゴム取らないでよ!」
「バッ!…今度学校でそう呼んだら刺す。」
「一護ちゃんってこわいね。ハルくんもタケちゃんも優しいのにね。」
「ホントだねぇ。」
「っるせぇよ!」
オレ達とこんなにも親しい女の子…ハネにされるわけがなかった。
学校への行き帰りもオレ達四人一緒だったから 個々にも仲良くなって
「ねぇハルくん、この前行ったレストランの電話番号分かる?」
だなんて休日には街に繰り出す なんて事もし始める。
そう、10年の空白なんて関係ない。やっぱりオレ達幼なじみ…
「分かるよ。行くの?」
「うん。律子さんと今日行こうかなって。番号メールしてくれる?」
別にオレが特別ってわけじゃなく タイミングが合えばそりゃ遊びに行ったりもしていた。
「律子さん待ってるから先帰るね!」
オレ達に手を振り 帰路を急ぐ***はやっぱり可愛い幼なじみ
「…なに。お前ら二人でどっか行ったの。」
…なんだけど。
・・・・
***の後姿を見ながらポツリと問う一護の声が やけに低くくぐもっている気がして違和感を持つ。
「ああ。雑誌に出てたイタリアンの店。うちが定休日の日に一緒に。」
けれどそこまで深くも考えずオレは何でもない顔をして答えた。
「あいつ、がっつきそうだな。」
可笑しそうに言う剛史に笑いながら頷き
「そそ。結構ボリュームあったんだけどデザートのシフォンケーキもぺろり。オレ半分あげたもん。」
甘い物は別腹だと言って頬張る***を思いだし プッと吹き出したけれど
「…あいつから?」
まるで勘ぐっているかのような一護の視線を感じたら 笑うどころじゃなくなって。
「は?」
「いや…あいつが誘って来たのかって。」
「は…。」
一護のその問いにも首を傾げてしまって。
「誘うっていうか…。」
だって別にそこ気になるとこかって
「雑誌を見ててこの店どこにあるのかって聞くから じゃ行こうかって。」
「…。」
なになになに。
・・・・
オレは***の事も一護や剛史と同じように幼なじみの一人としてしか見ていなかったから
「なに一護?」
「別に。」
「は。」
なんで一護がこんなに拗ねたような顔をするのか分からなかった。しかも
「先 帰る。」
「は。」
一護はオレ達二人を残しスタスタと早足で先を行ってしまったわけで。
「は…。」
オレと剛史は顔を見合わせ首を傾げる。
意味が分からない。だってなんかまるで
「怒られるような事した?オレ。」
舌打ちまでされてしまって なんかすっごい…
「…う~ん。」
剛史は無表情のまま遠くなる一護の背を見つめていたけれど
「…分かんね。」
オレと同じように答えが出なかったようで一人首を横に振った。
「***、彼氏とうまくいってんの。」
そんな話もしたんだろと剛史に聞かれた。
「ああ~…。」
だけどオレはその笑みに頷くことは出来なかった。なぜなら
「…どうかな。」
「え?」
「いや、あんまり話してないけど…なんか…。」
うまくいっていて欲しかった。だって***は彼と遠距離すると発言した時 ホント嬉しそうだったから。
だけど
「男のこと聞くと話逸らすんだよな。」
・・・・
すっかり見えなくなった一護の背中。
面影に視線を向けながらも オレの瞼の裏には
紅茶を飲むのをやめ 俯きため息をつく***の姿が映った。
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