誓いのキスは吉祥寺で:7 (誓いのキス:Short:鴻上大和) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
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日々の出来事など。

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「晴れて良かったよねぇ。」


雲ひとつない青空の下 オレとぶう子は真っ白い衣装に着替え 友人たちに囲まれていた。


「綺麗ぃ~!!」


教会では涙を落としていた彼女も 今では眩しいくらいの笑顔をオレに…皆に振りまいている。


オレとぶう子の記念日。彼女の誕生日はオレ達の結婚記念日にもなった。


「大和ぉ~!!ケーキ入刀~!!」


「おお。」


初めての夫婦での作業…ではないけれど、賑わう笑顔に囲まれながら オレとぶう子はケーキの乗ったカートを待っていた。


「どんなケーキだろ?楽しみだね。」


ぶう子は笑顔を絶やすことはなく そっと耳元で囁く。


「ああ。」


サトウ洋菓子店のケーキだ。オレの教え子のケーキ。


・・・・


あれから佐東とは連絡を取っていない。


あいつがどんな選択をしたのか気にはなっていたが わざわざ連絡をするつもりはなかった。


あいつもしてくるような奴でもなく…。けれど○○からは連絡があった。


『いっちゃんね…留学するって。』


電話越しの声は少しだけ鼻にかかっている。


きっとすぐに連絡をしてくれたのだろう、 何度も鼻をすする○○に辛かっただろうなとオレは何も言えなくなる。


『待とうって…。いっちゃん帰って来るまで待とうって決めた。』


○○は佐東の夢を応援すると決めたらしい。


『…そうか。』


たとえ離れていても…あいつの夢が近づくならと決めたらしい。


・・・・


偶然にも結婚式と佐東が旅立つ日は同じ日で。


朝、ウエディングケーキを仕上げてから空港へ向かうと聞いたのは三日前だったか…それもやっぱり佐東からではなく ○○からだった。


『すっごいデザイン考えてたよぉ~。いっちゃんの自信作だからね!』


三日前に聞いた○○の声は 随分と落ち着いていた。


離れ離れになるということ けれど気持ちは一つだということを 二人で確認し合ったんだと思う。


『そか。楽しみだな。』


この二人は大丈夫だと確信し ホッと息を吐いた教え子の恋だ。


「鴻上さん。」


ケーキの乗ったカートを入口近くに放置したまま 会場の担当者が血相を変えて走ってきた。


「ケーキなんですが…。届いたんですが、少々問題が…。」


「え?」


オレとぶう子は顔を見合わせ首を傾げる。


「なんですか?」


歩けばすぐにカメラの的にされる彼女はその場に残し オレだけ担当者の後を早足でついて行き…


「これなんですが…。」


眉間に眉を寄せた担当者の苦笑い。


「え?」


目の前に現れた真っ白く かといって色とりどりのフルーツで飾られたケーキに思わず目を見開いた。


「すげ…。」


その大きさもだが 設定金額なんてきっとオーバーしているだろうそのデザインの見事さに息さえも飲みこむ。


真四角のデコレーションケーキ。繊細な飴細工でところどころ飾られた輝きに佐東の指先の器用さまでも感じ…


「…っ…」


すげーな…。


その美しさに感動さえしてしまったオレ。


「問題って…何が?」


声さえも震えていたかもしれない。けれど担当者は首を横に振り 指を指す。


「文字ですよ。」


「え?」


「文字です…。」


え??


・・・・


「クッソ、佐東ぉ~~~~!!!!」


真っ青な空に真っ白い飛行機雲が線を引く。


あいつがあれに乗っているとは限らないがオレはその飛行機に向かって叫んだ。


だってこともあろうに チョコで書かれた筆記体は


「ハッピーバースディ?!?!?!」


佐東の口角を上げた してやったりの嫌味な笑顔が目の奥に浮かんだ瞬間だ。


「まぁまぁ大和…。」


「アノヤロ、マジで帰国したら説教しに行ってやる!」


ぶう子に宥められながらオレは当分ブツブツと言っていたわけだけど。


けれど佐東の悪戯はさらに笑いを呼び ケーキ入刀の時には会場のテンションは最高潮だった。


「誓いのチューとかしとく?」


ハッピーバースディと書かれたケーキの食べさせ合いっこの後はそれ。勇太が先頭きって囃し立てる。


「さっきしたろ。」


そう突き放すも次第に拍手と歓声にオレ達はまた包まれ 何度となくぶう子と唇を合わせ…


「素敵な結婚式をありがと。大和。」


佐東の悪戯もチャラになった気がして。


・・・・


ケーキが配られる様子を見ながら 佐東と○○を思っていた。


きっとあいつらも今日は忘れられない日になったろうと思う。旅立ちの日…新しい門出の日。


二人の恋がこれからどう動くかは分からない。


けれどどういうわけかあの二人なら大丈夫だろうと思った。


「なぁ、ぶう子。」


「ん?」


耳元でそっと囁く言葉


「愛してる。ずっと。」


たぶん、佐東もオレと同じように彼女に告げただろう言葉を告げ 抱きしめた。




★END★

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