HERO (イケメン学園:Short:龍海亮二) | ANOTHER DAYS

ANOTHER DAYS

「orangeeeendays/みかんの日々」復刻版

ボルテージ乙ゲーキャラの二次妄想小説中心です
吉恋一護 誓い大和 怪盗流輝 スイルム英介 お気に入り
日々の出来事など。

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ゆみちゃんのお誕生日!!


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「夏男!料理はこれで全部か?!」

「さっきからうるさいわね…。」

「おい、お前ら、クラッカー持ったか?!」

「ホントウザい…。」

夏男とこいつらにため息をつかれたのは夕食時食堂でのこと。

「亮が張り切るのがムカつくー。」

祐は椅子の背もたれに体重をかけ まるで船でも漕いでいるかのようにユラユラと揺れる。

「し切られるのが腹が立つ。」

零こそじっとしていたが腕を組み俺を睨んだ。

「さも一人で全部やったみたいな顔して偉そうに…。」

啓一郎までも小声でブツブツと言っていた。

「なんだよ、なんか文句あんのかよ!」

腕を組み仁王立ちにしてこいつらを睨む。


だってゆみの誕生日会。誰が仕切るってそりゃ俺だろ。

「べっつにぃ~。まぁ良いけどねぇ。」

晃こそそんなことを言ったが ニヤニヤとするその横顔は俺を冷やかしているようにしか見えなくて。

「フン。」

だけどブツブツ言いながらもこいつら全員何日も前から随分と協力してくれた。

夏男が腕によりをかけテーブルに所狭しと並べられた料理は それこそ見事の一言に尽きたし

飾りっ気のない壁もガキのクリスマス会か、折り紙で作ったリースが飾られ

真っ白い紙にデカデカと筆を使ってゆみちゃんお誕生日おめでとうなんて幕まで用意して…

洒落たことはできない。

けれど俺はもちろんこいつらの心のこもった誕生日会は ゆみを最高に喜ばせるんじゃないかって…

「あとは由紀を待つだけだな。」

由紀には注文したケーキを取りに行って貰っている。

吉祥寺は少し遠いが仕方がない、あいつがその商店街のケーキを食ってみたいっていうんだから。

・・・・

本当はゆみと二人で過ごしたかった。

だって俺と付き合い始めて初めてのビックなイベント あいつが生まれた日っつー最高の日なんだから。

だけどゆみを祝いたいっていうこいつらの気持ちも無駄にはしたくなかった。

随分前から料理だ演出だってこいつらギャァギャァ話してたし…

ゆみが喜んでくれたらそれで良い。 ゆみが笑ってくれたら…それが良い。

「買ってきたぞぉ~。」

由紀の声に さぁ準備が整ったとばかりに 皆が一斉に姿勢を正す。

あいつお目当てのサトウ洋菓子店のケーキをテーブル中央に置いたら

「亮、ゆみ呼んで来いよ。」

誰かの声になんて答えもせずに

「登場したら速攻クラッカーだからな!」


そう言って身を翻し駆け足であいつの部屋に向かった。


絶対びっくりする。マジで腰抜かす…


あいつの目を丸くした表情と零れんばかりの満面の笑み…


「あぁ~早く見てぇ…。」


何日前から想像して一人ニヤけただろう…


「ゆみぃ~。」


緩む頬を叩きながらゆみの部屋をノックした…んだけど。


「ゆみぃ~?もう良いぞ、出て来いよ。」


…あれ?


返事がなかった。学校から帰って押し込むように部屋に閉じ込めたのは二時間前…。


『なになにぃ?』

『分かってるだろ。主役はあとで!』


ワクワクとした笑みを浮かべながら食堂を覗き込もうとするあいつの背中を押して部屋に閉じ込めて…


「ゆみ?」


…ふと嫌な予感がした。


あいつはたとえうっかり寝てしまったとしてもわずかな物音ですぐに目を覚ます。


それは男ばかりの寮での無意識ながらの防御反応なんだろう


もう信頼している仲間だとは言えやっぱ女の子一人だから…


だからノックに答えないこいつってのが初めてで。


「…ゆみ、開けるぞ?」


体調悪くてぶっ倒れてたりなんかして?いやもしかして変な奴が窓から侵入とか…

ザワザワ言い始めた胸音に焦りを感じながらも俺はゆっくりとドアを開ける。

「ゆみ…?」

大事な奴になればなるほど 悪いほうにばかり考えてしまうのはどうしてだろう。


ゆみに何かあったら…ゆみがいなくなったら??…


それはきっとその場面に遭遇した時の自分への保険なのかもしれないと思う。

でも結局そんなもの意味がない。

「…え…。」

…開けた先は真っ暗な闇で。

「ゆみ?!」


ドアが跳ね返るくらいの勢いで開け放ち暗闇へと立ち入る。

開けっ放しの窓から入る風に白いレースのカーテンのゆらりとした揺れを目と肌で感じた時

パパン!パン!!


「ゆみちゃん、おめでとぉ~!!」

「え。」

…背後から…食堂からめちゃ賑やかな声と拍手が聞こえて。

「さぁさぁ食べて!!ゆみちゃんの大好きなものばかり作ったのよ!!」

「その前に梅、乾杯だろ!」

「ああ、そうね、かんぱぁ~い!!」

「かんぱぁ~い!!」


・・・・

偉そうにし切りすぎたか。仲間たちのこの最悪な悪戯に暗闇の中呆然と立ち尽くす俺って…


…クッソォ~…!!!

「…お前らぁ~!!!」


・・・・


由紀は到着してすぐにあいつの部屋の窓をノックしたらしい。

『先生?』

『黙れ。龍海にバレたらマズい。何も言わずここから出ろ。』

ゆみはわけが分からなかったらしいが由紀のやけに優しい笑みと


手に持ったずっと食べたかったサトウ洋菓子店のケーキを見て ほいほいと窓からでたらしく…

気付かなかった…ゆみが玄関で身を隠していたこと…気づかなかったぁ…!!

「あれ?亮どこ行ってたの?」

「うるせぇよ!ってお前らどういうつもりだよ!!」


「だって亮が偉そうに俺らをし切るからさ。」


「そそ、指図しすぎ。」

ゲラゲラ笑うこいつらに 顔真っ赤にして怒鳴ったのはまさに乾杯直後の話。

「お前もヘラヘラしてんじゃねぇよ!!」

「いったぁ~い!!」

軽くゆみをドツいたのは俺の特等席 こいつの隣に座った時の話。


目を丸くしたゆみもしょっぱなの笑顔も見れなかった俺ってどうなんだよぉ~…。


・・・・


宴も終わり皆が寝静まった頃 こっそりと外へと廻りゆみの窓をノックした。


「亮!」


「おう。出て来いよ。」


待ってましたとばかりに微笑み窓から飛び降りるゆみは もう慣れたもの。


満天の星の下 二人で庭の片隅で肩を並べ その日のことを話す…


それは俺たちだけの秘密の時間だった。


俺はこの時間がとてつもなく好きだ。だって俺が唯一ゆみを独り占めできるから。

「楽しかったぁ~。」

「そうかぁ?あいつら俺に対して妬いてんだぜ、絶対。」

「なんでよぉ?あぁ~でもすっごく楽しくて嬉しかった!」

今日はもっぱらこの話題。さっきまでの騒ぎまくった夜の話。


「ありがとう、亮。最高な誕生日会だった。」

「…ああ。」

星空を見上げるゆみの横顔はいつも可愛くて。


できることならいっそこのまま胸に閉じ込めたいって思う。

けど まだ付き合い始めたばかり…そんなことができるほどの勇気も度胸もなくて。

「…え、亮、」

「い、いいだろ、これくらい。」

そっと手を握るのがせぇいっぱい。


こんなことにさえも顔を真っ赤にするこいつを抱きしめるなんてまだできなくて。

「付き合ってるんだから…良いだろ。」

俺まで真っ赤になる…そんな俺たちはまだまだこれからだから…。

「…な、なぁ、ゆみ。」

「え?」

「…来年も一緒に祝おうな?」

この一言が俺のせぇいっぱい。

「…できたら二人で…。」

絞り出した…かなりの勇気は彼女に届いたろうか。

顔真っ赤で まともにゆみの顔を見ることが出来なかった。

きっとこいつも真っ赤なんだろうなって思いつつ ギュッと握る手に力を込めたら ゆみがクスッと笑った気がした。

「…来年も再来年も…その次の年も?」


「あ?…あ、ああ、当たり前だろ。」


「それって…ずっと一緒ってこと?」


「バ、バカ!!何言ってんだよ!」


「え…違うの?」


「いや、違わないけど!…バカ!それ以上言わせんなよ!」


付き合い始めて大して日は経っていないのに 何年後もずっと一緒にいたいって思える。


それってゆみを好きな気持ちに終わりはないんだって


初めてこいつに出会った時のあのときめきは本物だったんだってそう自覚して…


「…あのさ、ゆみ。」

「ん?」

二人で過ごす時間はゆっくりと流れる。手のぬくもりを感じながらただゆっくりと…。


やわかな笑みを浮かべる彼女に見つめられたら敵わない。見つめ合う俺たちに言葉はいらない?


…でも今日だけはちゃんと伝えておきたいから。


「…ずっと…、俺の隣にいろよな。」


・・・・


「…よそ見なんか、するんじゃねぇぞ…?!お前の隣は俺だって決まってんだから!!」


来年も再来年も…一緒にいたい。隣でこいつを祝ってやりたい。


「…うん!」


ゆみが隣にいてくれるなら なんでもできる気がした。


「好き!亮!」


「バ、バカ!声がでけぇよ!!」


「亮も言ってよ。」


「ハァ?!」


「誕生日なんだから!亮も言って!」


「…す、好きだよ。」


「…もう一回。」


「何回も言わせんなよ!」


「言って!」


「あ~、もう!!」


どんなにかっこ悪くっても…お前のためだったらなんだって…


「これからも何があっても…ずっとずっと好きだ!!」


ゆみを好きな気持ちに終わりはない。


「…もう一回。」


「おい!!」


・・・・


ゆみが笑ってくれるなら 俺はなんだってできるよ。



★END★

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