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・過去記事
ソーシャル総選挙五位は創ちゃんでとの思いを込めて。
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「ふぅ…。」
持ち帰った仕事が一段落し デスクの前で大きく背を伸ばす。
チラッと時計に目をやると製図を引き始めて三時間が過ぎている事に気づいた。
ボキボキと首を鳴らしながらソファーに放り投げていた携帯を手に取り
「『ビール持って来て』…と。」
隣の部屋の***にメールを送る俺って自分の彼女をなんだと思ってんだっつー。
・・・・
いくら付き合っていると言ったって 相手の部屋に入り浸る性じゃないのはあいつも一緒だった。
好き合ってんだから 長く寒い夜をお互いのぬくもりに包まれて過ごしたって誰にも何も言われないだろうけれど
「疲れた…。」
俺もあいつもお互いのそれぞれの時間ってのを大事にしたかったし
大事なプロジェクトの最中なんて 悪いけど恋だ愛だ言ってらんねぇ 相手に出来ねぇし…
「あ~疲れた…。」
けれど 一息付きたい時 決まってあいつの笑顔が浮かんでくるのは俺にとって癒しだったりすんだろうなって思う。
ソファーに深く腰掛けながら バタン!と激しく開け放たれるだろうドアを今か今かとジッと見ていた。
『ちょっと創一!このメールどういう事?!』
だなんてお手伝いさん扱いした事を怒って入ってくるだろう ***。
その拗ねた顔を想像し 一人笑う。だけど五分たっても
「…何してんだよあいつ…。」
10分経ってもドアは開かなくて。
「…ったく。」
もしかして寝てる?なわけない、休みだったあいつ 昼寝して目が冴えてるって飯食ってる時言ってたし…。
けれど耳を澄ませても隣の部屋から物音ひとつしなかった。
「コホッ…。」
俺は咳払いをしながら立ち上がり 部屋を出る。そして
コンコン
「***?寝てんの?」
隣の部屋…あいつの部屋をノックした。
部屋の中とは違い 中庭に沿った廊下に寒々とした冷気を感じる。
思わず身震いして眉を潜めた時
「おやすみなさい。」
あ?
背後に聞こえた***の声…
曲がり角が死角になってハッキリとあいつの姿は見えない。
けれどガラス越し 中庭の向こうに見える裕介さんの部屋の前であいつの姿を視界に入れたら
「…は?」
俺はどういうわけか隠れるようにして自分の部屋へと逃げ込んで。
バタン…
「…は?」
何度も瞬きを繰り返し目に映った情景を再確認する。そして
「…ふぅ…。」
俺が隠れることねぇだろって っつかあいつ何してんだって
「ったく…!」
ガチャッ!!
今の今閉めたドアを勢い良く開けた時だった。
「わ!」
目の前に***が…まさに自分の部屋に入ろうとしているあいつと鉢合わせて。
「びっくりした…。仕事終わったの?」
こいつの手にビールはない。携帯も持っていない。
っつかなんだよ、その恰好?
フリフリ部屋着にカーディガン 風呂上りの無防備な姿でシャンプーの香りを振り撒いて…
「…お前こそ何してんだよ。」
「え?私?」
俺の不機嫌な様子に気づきもしない。逆に機嫌の良さそうな***はニコッと笑って
「裕介さんとこで皆でトランプしてた。」
全然…悪びれる様子無くって…。
たぶん風呂上りに声を掛けられたんだろう。部屋にはまだ文太が居るようだった。
いや、二人きりじゃないなら、ってわけじゃなくて…そうじゃなくて…
「喉乾いちゃった。あ、創一ビール飲む?持ってこようか?」
キッチンの方向を指差し矛先をクルッと変える。
ヘラヘラ笑いながら『おつまみ何かあるかな』なんて
ドアに手を添え ため息を付く俺なんて目もくれず向かおうとするから
グイッ!
「ちょっと来いよ。」
「え?痛い、創一…。」
手首をギュッと掴んで 部屋へと引っ張り入れた。
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