色の無い世界 8


「伝わるかわからないけど・・さっきみたいに感覚で聞いてください。

重いのは色で言うと黒い影のようなんです。

黒いのは発散できないあたしにまとわりつくんです。」


村上先輩は静かに聞いている。


「黒いやつのせいで手も足もうまく動かなくなるんです。

そのうち歩くために踏み出す足が分からなって、息も苦しくなる。

吸っていいのか吐いていいのか・・・普通が普通じゃなくなるんです。」


ふいに泣き出しそうになって隠す為にタバコに火を点ける。

一息吐き出して続けていった。


「怖くなって泣きながら心で叫ぶんです。助けてって何度も。」


「でもね・・最後には消えるんですよ。

もう重くもないし苦しくもない。ホッとするけど、何か変なんです。」


そう。悪夢から覚めたはずなのに、目の前は白黒テレビのように不鮮明な世界だった。

色の無い世界。


色の無い世界 7


村上先輩には少しずつだけど、以前に話をしていたことがあった。

今日はその続きを話せたらと思っていた。


まずはどこまで何を話したのか思い出してみることにした。


自分は苦しかった。

何が苦しいのか分からないことが何より苦しかった。

解決策が思いつかないから・・・。

小さいころは思春期だからと思い込むことにした。

納得はできなかったけど、一人で抱え込むには理由が必要だったから。


言葉にすれば、たったそれだけを言うのに三年もかかってしまった事に気がついた。


「唐突で申し訳ないんですけど、ん~なんて言うか・・村上さんは重いって感じたことはありますか?」


「重い???」


「ニュアンスですけど、何か表現が難しいんですよね。

気持ちが重くて体も頭も鈍いというか重いというか・・・。」


「あぁ~あるよ。普通に。てか、この年になれば無いほうが珍しいでしょ。」


「その感じなんです。でも村上さん。それには続きがあるんですよ。」


「重いの続き?どういう意味??」




色の無い世界 6


「もしもしー晶ちゃん?もしかしてついてる?」


「村上さん。ばっちり着いてますよ。早いですねぇ?」


「仕事が早く終わったからそのまま来たら早く着いちゃった!どこ?」


「え~と・・入って右にある座敷です。ではでは・・・」


入り口から近いので村上先輩はすぐにきた。


ふぃ~。とか言いながら顔を拭く。


村上先輩は村上 守。三つ上の28歳の男性だ。


この顔を拭く行為も普通ならおっさんくさいが、


彼の人目をあまり気にしない性格に合っていて嫌な気はしなかった。


一通り注文を済まし、「で?今日はとことん付き合うから話してよ。」


と、先輩から切り出した。